新しいシャツの喜び


泣いても笑ってもあと一日。
昔の人は、大晦日によくそんなことを言いあっていました。
子どもの頃、それを聞く度に
「たとえ泣こうが笑おうが、年があらたまることを止めることはできない、
年は絶対的に暮れて、そしてお正月がくるのだ」という意味に解釈していました。
でも、今、考えて見ると、別のニュアンスが浮上してきます。
「たとえ泣いていようと笑っていようと、
大晦日が過ぎれば、新しい年になるんだ」的な。
まあ、言葉にしてみると同じような感じですが、
「年が新しくなるのを止めることはできない」というのと、
「たとえ悲しくても楽しくても、年は変わるんだ」というのでは、だいぶ違います。
後者には、歳月の経過がもたらす癒しに、私たちは救われているんだという、
日本人の無常観が現れているのでは?
なんぞと思う、大晦日であります。

お正月といえば、同時に初売セールがスタートします。
ファッションビルやデパートでもいっせいに。
その中で、渋谷の東急百貨店東館の閉店セールの広告が印象的でした。
「さようなら東館 東横店78年分の全館ありがとうセール!」という。
創業78年。渋谷の東急百貨店はこの東館からスタートし、
その後50年代中期と70年代に
西館、南館が増設されました。
高度経済成長の時代、当時、東横の名で知られた東急百貨店は、
建物と建物の間を高架の電車が通過し、
とても近未来的な光景を描いていました。
バスターミナルから見える駅舎も今となってはレトロモダンともいえる、
きわめてモダンなデザインでした。
東急百貨店と向かい合う位置には東急文化会館があり、
館内にあったプラネタリウムの丸いドーム屋根も、
渋谷駅界隈の近未来感を醸し出すのに一役買っていたと思います。
新宿とは違う渋谷の個性は、1950〜60年代に東急グループが描き出した、
このモダン感覚が大きな役割を担っている気がします。
その後、70年代に入って公園通りに西武百貨店やPARCOが登場し、
渋谷を一気に『新し物好きワカモノ向けサブカルタウン』に仕立て上げるまで、
あの街は東急が作り上げた右肩上がりの経済状況を象徴する、
『ファミリー向け明るい近未来タウン』だったのです。
その東急文化会館の跡地に、先頃オープンしたのが、渋谷ヒカリエ。
館内に新設されたシアター・オーブという劇場に行ったのですが、
当然ながら東急文化会館の昭和の香りは一掃され、
同じ場所にあるとは思えない感じでした。
渋谷駅からヒカリエまではガラス張りの渡り廊下を渡ります。
東急文化会館の頃は、ただの通路的渡り廊下だったなあと思いながら、
その橋を渡ると、レトロモダンな渋谷駅の駅舎が見えました。
昭和と平成が一体となっていて不思議な眺めです。
東急百貨店東館も近々に取り壊され、新しいビルがオープンし、
渋谷駅は変わると広告では唱っています。
限りなく昭和臭プンプンだった東横がなくなるのはとても寂しいのですが、
繁華街の景色が新しくなれば世間も勢いづくというもの。
あの頃のような右肩上がりの情熱を、もう一度日本が燃やすことができたら。
今、せつにそう願っています。
やっぱり買い物って楽しいですよね。
気持ちに弾みがついたりします。
新しいシャツに袖を通す時のワクワク感。
それだけで、家を出るときの一歩が昨日よりだいぶ軽く感じられるような。

ともあれ。
今年もどうもありがとうございました。
そして来年もどうぞよろしくお願いいたします。
みなさま、よいお年をお迎えください。

画像は渋谷ヒカリエ内、シアター・オーブのロビーです。

2件のコメント

  1. ホリー、新年おめでとうございます。

    お買い物と言えば、若かった頃はお買い物が結構楽しかったです。が、もう定番ばっかり着ている今となっては、あまりお買い物にも出かけなくなりました。このブログを読んでいて、もう少しお洒落してみようかと思うようになりました。私はストレスがたまると編み物用の糸を買う癖があり、現在かなりの在庫をかかえています(笑)日本の編み物の雑誌でカウチンセーターやフィッシャーマンズセーターが新しい色使いで紹介されていたりするのを見ると懐かしいです。

    今年もホリーの「空飛ぶ魔法のシャツ」楽しみにしています!

  2. みにょんの姉さま

    おめでとうございます!!
    コメントありがとうございました。
    定番ばかり・・・。わかります。
    自分の中の定番というか、私も似たような服ばっかり買ってしまいます。
    でも、ここがほんの少~しだけ違うの、みたいな。笑
    それでも、新しいシャツというだけで、ルンルン(←古)します。
    ではでは、また、ぜひ、遊びに来てくださいね。

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