服はどこに行ったの?-Where have all the fashion shops gone?-

日々、着々と日が短くなっています。
暑い中にも、そろそろ秋の兆しが見えるこの頃。
チマタのショップには、もうすっかり秋冬の服が並びました。
今年の秋の傾向が見て取れる時季で、
深いブラウンやワインのウールアイテムが新鮮に見えます。
まだまだ実際には着られない陽気ですが、
新しい季節へのアプローチは毎回ワクワクさせてくれるもの。

そんな中、ふとした異変に気づきました。
これまでデパートやショッピングセンターなどは入口をはいると、
まずアパレルがフロントを守っていたはず。
一階はファッション雑貨やハイブランドの海外コスメというデパートもありますが、
いずれにしろファッション系なおかつお財布に厳しいプライスゾーンというのが、
各施設の顔になっていたはず。
それが最近は、エントランス近くに国内外のプチプラコスメを大々的に置き、
これまでアパレルショップがあった位置に、
国内外のオーガニックや自然由来の食品・雑貨を扱うショップや、
海外の高級紅茶ショップなどを配置し、
コスメと食に賭けるSCが増えました。
服はどこに行ったの?
もちろん、上階に行けばアパレルショップが並ぶフロアもありますが、
入り口を入ってすぐの、その館の顔ともいうべき場所のラインナップが、
最近どんどんファッションから雑貨or食品に変化しているのです。
百貨店で気づくのは、それまで館内に2つ3つしかなかったカフェや和風甘味屋が、
各フロアに増設されていること。
人気の店はスペースが拡張されていたりします。
カフェスペース確保のために、それまであった既存のアパレルのショップが消滅しているのです。
では、どんな店がなくなっているかといえば、そこはやっぱり思い出せないくらいのショップ。
売れ行きで貢献していないショップがカフェに取って代わられる時代です。
では、服全般が売れていないのかというと、そういうことではなく、
人気のショップは人が詰めかけ、人々の服への愛情は変わっていないように見えます。
でも、好みの服やショップは、各自すでに決まっているうえ、
オンラインでいくらでも買い物できる昨今。
時代に乗り切れないアイテムを並べた実店舗は、衰退していくほかない。
これはファッションに限らず、すべてに言えることですが。
興味のない服屋を見るよりは、好きな服屋だけを見て、
あとはおいしいお茶やスイーツでひと息つきたいというのが
公私共に忙しいいまどきの消費者の意識なのでしょう。
となると、「服屋を減らしてでも、カフェをご用意してお待ちしております」
というのがユーザーフレンドリーな百貨店/SCというもの。
ですから、あまりトレンドファッションに強くないタイプの百貨店だと、
ファッションフロアはガラ空きなのに、片隅にあるカフェはもちろん、
各階のカフェはもれなく行列ができているという、
不思議な現象が起きています。

オーガニック食品やこだわりの地方名産品を扱う、
スタイリッシュなショップも増えました。
『きゃらぶき』がおしゃれなパッケージの瓶詰で200g、2000円くらいしたりします。
近所のスーパーなら300円くらいで買えるものです。
そうした店ではキヌアをはじめとするスーパーフードも勢揃い。
オリーブオイルや亜麻仁油をはじめとするオイル類や
塩だって岩塩から海塩まで、白いの茶色いのピンク色だの勢揃い。
野菜はもちろんオーガニックですし、パンは米粉使用のグルテンフリーだったり。
それらは毎朝新聞の折込チラシや、はたまたスマホでデジタルチラシをチェックして、
10円でも安いレタスを求めんとする食生活とは対極にある、
ヘルシーライフを送る人たちのためのものでしょうか?
いや、案外、両者は微妙にクロスしていると思います。
10円でも安い『朝採れレタス』を使ったサラダを『ゲランドの塩』
(フランス・ブルターニュ半島南部のゲランドの塩田で伝統製法で作られる海塩)
で食べたい、という人は結構多いはずです。
というわけで、フロアからファッションが消えている分、
食がファッション化しているのが実情です。
これだけインスタなどで「これ食べました」「うちではこんなん食べてます」発信が
ブームなのですから、今や何を食べているかが、何を着ているかと同等の意味をなすのでしょう。

そんな昨今、ではファッションはどこに行ったかといえば、人気の実店舗以外は、
大部分はオンラインに生存しているのですね、きっと。
好きな時間に好きな服を、ポチッとできる暮らし。
それは自分の好みが確率している時代ならではという気がします。