いつの間にか肌寒いくらいの陽気になってきました。
汗ばむことなくスーツが着られる季節です。
現在、メンズファッションの基本であり王道であるスーツ。
ジャケットにパンツというこのスタイルが生まれたのは、約150年前の英国です。
それまでの英国ではフロックコートと呼ばれる、
今のモーニングのような、ロングジャケットが紳士服の常識でした。
ところが、ラウンジのソファで葉巻などを楽しむときに、
ロングなジャケットでは裾が邪魔。
というわけで裾が短いラウンジスーツが考案されたのです。
このスーツが現在のスーツの原点だとしたら、
原型ともいえるフォルムが確立したのが約100年前、1920年代のことです。
以来、ジャケットやトラウザーズのシルエット、襟の形、ボタンの位置など、
少しずつ変化を遂げて来ました。
原型が生まれた1920年代から、そこに洒落っ気を加味した1930年代、
いきなり肩幅がはって襟幅も広い、アルカポネ風のマッチョ感が印象的な1940年代、
それまでのマスキュリンなラインを踏襲しつつ、
一定の落ち着きや完成度を見せた1950年代、
そしてビートルズ旋風の影響のように細くてタイト、若々しさが感じられる1960年代、
イヴ・サンローランでさえ、ロンドンのストリートファッションを意識して、
派手で遊びゴコロたっぷりなスーツを打ち出した1970年代。
と見てくると、それ以来、画期的な変革は生まれていない気がします。
あとはその繰り返しとなるデザインを、
その時代ならではのテイストと技術でアレンジしている。
それが男女問わず、今のファッションの現状という気がします。
ただし、レディスやカジュアルに関しては、
1980年代のパンクやボロファッション、グランジというのがあり、
これはファッションの進化の中で過去を振り返る「レトロ」同様、
ハイスピードで進化していく過程の、刺激的な副産物だと思っています。
そんなメンズスーツの三大スタイルといえば、
ご存知ブリティッシュとイタリアン、アメリカンです。
スーツ発祥の地である英国調はカッチリしていてベーシック。
階級社会だった英国では、着ているスーツが階級を表す面もあったので、
より立派できちんとしているように見せる必要があったとか。
肩幅や襟は小さめで、絞り気味のウエストの位置は高め。
これは「王冠を賭けた恋」で知られる英国王、ウインザー公が好んだスタイルで、
身長が170cmと英国人にしては低かった公が、ウエスト位置を高めにすることで、
低さを感じさせないシルエットになっていたとか。
ウインザー公は、1930年代当時、世界的に注目されていたファッションリーダー。
今も「ウインザーノット」「ウインザーカラー」に名を残すほどのおしゃれの達人で、
トラウザーズの裾をWにしたのも公の発案だったと言われています。
一方、イギリスで生まれたスーツが、出身を物語るラベルだったのに比べて、
それを迎え入れたイタリアでは、スーツをよりアーティスティックに
自由なものにリノベーションしたといえます。
ちょっと鎧的意味のある英国スーツに比べて、
イタリアのスーツは着ていて快適であったり、
それに何より大陸男の陽気さやセクシーさを感じさせます。
ボディラインを強調するようなシルエットに、
イタリアンの情熱が現れているような。
ナポリ、ミラノ、クラシコイタリアでちょっとずつ異なりますが、
全体的にしなやかで柔らかく、造形美に長けている気がします。
そして、アメリカンといえば、トラッドスーツ。
ブルックス・ブラザースの定番に代表される、ゆとりあるシルエットのものです。
ボックスシルエットで3ボタン、IVYとも呼ばれるスタイルで、
日本のビジネスマンの「スーツ、ジャケット」姿では、
一番ポピュラーなラインかも知れません。
こうしたスーツの仕上げに必須のアイテムといえば、自分にあったドレスシャツです。
オーダーやセミオーダーのドレスシャツを創りたい!
となったらまず、生地について知っておくのもいいかも。
英国の生地はスーツにあわせてしっかり者。厚みがあり、目も詰まっています。
一方、イタリアの生地はソフトでしなやか。色や柄もバリエーションがあります。
現在、すぐれた生地はほぼイタリアで作られ、
「イタリア三大生地メーカー」としてラインナップされているのが以下の会社。
●アルビニ
1876年設立のイタリアの老舗生地メーカー。
世界最高峰の生地メーカーともいわれるゆえんは、
英国の老舗生地メーカーのデヴィッド&ジョン アンダーソンや、
トーマス・メイソンを現在は傘下におさめていること。
老舗メーカーのクラフト的伝統と最新技術を組み合わせて新しい生地を生み出しているのが強みです。
●テッシトゥーラ・モンティ
1900年代初頭に創業された、老舗生地メーカー。
つねに時代の最新鋭の技術を取り入れたものづくりでセールスを拡大してきました。
おもに最高級コットン「エジプト綿」を使い、原綿から仕上げまでを一貫して社内で生産。
豊富なデザインや色彩に高い評価を得ています。
●オルトリーナ
1888年創業の老舗生地メーカー。最新の技術を取り入れ、すべての工程を自社工場内で行う、
徹底した品質管理で知られています。
デザインや色彩、風合いなどが高く評価され、シャツ生地のトレンドセッターともいえる役割を果たし、イタリアのメンズファッションを牽引してきた存在。
ちなみにオルトリーナは現在、ホームページが閉鎖されていることから、業務を行っていないのではないかと見られています。
デザイナーやスタイリストの信頼があつかったメーカーだけに、その進退が気になります。
●カンクリーニ
そして、上記三大メーカーと並ぶ、もうひとつの名門シャツ生地専門メーカーも注目したいところ。
1925年、イタリア、コモで創業されたカンクリーニです。
海外の一流メゾン御用達のハイクラスな素材を生産し、柔らかくて肌触りなめらか、風合いのよさや上品な光沢感が特長です。また、白無地や織柄はもとより、イタリアならではの色使いやファッション性豊かなテキスタイルも魅力。定番のホワイトならとくに、素材でちがいを見せたい、そんなときにおすすめの生地です。
というわけで、イタリアの生地の魅力は総じて、心地よい風合いと上質な質感、色彩、テキスタイルなどにあり、上質なシャツを身にまとうことで、精神的に豊かな気分を味わえそう、という点でしょうか。
そう、気にいったアイテムに巡り合って、それを着ているときの幸福感や満足感。
無敵な気がしてくるではありませんか?
そんなイタリア生地に触れる絶好のチャンス!
現在、阪急メンズ 大阪で『ITALY FEAR 2018』が開催されています(~ 11/13(火)まで)。
それにともない「土井縫工所 Made To Measure Shirts Shop(常設店)」では、
イタリアを代表する生地ということで、カンクリーニ生地フェアを開催中です。
カンクリーニをお選びのお客さまには、有料オプションを最大3つまでプレゼント!
内容としては、ワンポイント刺繍や、ボタンホールの色を変える、イタリアンカラーやダブルカフスも選べるなど、豊富なオプションが用意されています。
もちろんカンクリーニのほかにも、アルビニやモンティなどのイタリア高級生地ブランドも揃っています。
ぜひこの機会に、イタリアの魅力を実感してください。