師走のスパイス


いやはや、なんともう大晦日です。
今年は3月のあの震災以来、被災地の方はもちろん、
暮らしへの意識が一変した、という人も多いのでは?
具体的には多分日本中で、防災意識が高まったとは思うけれど、
精神的なことでは、当たり前のことが当たり前ではなくなったような感覚。
だから、毎日を大切にしなくちゃと思いつつ、
結局バタバタと日々は過ぎて行きました。
年末に貰った仕事のメールで笑ったのが、
「昨日はドタバタとしておりまして、返信が遅れ申し訳ありません」
それ、普通は「バタバタ」じゃありません?
それすらビジネスメールで使うのもナンかと思うのに。
もうそのドタバタぶりが如実に伝わって来ますが、大丈夫か?この人、
という師走です。
まったく、カレンダーで12/31が最後の日と決めたからといって、
なんでこんなに忙しい思いをしなくちゃいけないいんでしょう。
大掃除、お正月の食材の買い出し、鏡餅やお花や松飾りの用意。
これを大体2日間くらいでやろうというのですから超ハードです。
じゃあ、もっとはやくからやれという感じですが、
仕事納めが29日、という人も多いはず。
結局、2日間でバタバタするというのが恒例です。
昨日は、玄関やキッチン、バストイレなどの掃除が終わると、
自分の部屋の掃除にかかれたのがもはや夜。
フローリングを拭きながらテレビを付けていたら、
「踊る大捜査線」の劇場版をやっていました。
このドラマ、来年公開の映画で有終の美を飾るそうです。
思えば「青島刑事」ももう40代半ば。
15年続いたという超人気ドラマですが、
「都知事と同じ青島です」というセリフも、今は使えないし。
青島さんが都知事であったことも、すでに遠い遠い過去という気がします。
そんな時代から(すでに連続ドラマではないにしろ)続いているのですから
設定も色々不自然になって来ます。
気になる同僚のすみれさんとの仲も、
もう40代の美男美女というと、両者独身だけに、
人にはいえない特別な事情でもあるのかと思えてしまいます。
そういえば室井警視監も独身だ。なんなのみんな揃って。
そんな「踊る・・・」といえば、織田裕二扮する青島刑事のパーカ。
元々はアーミーコートで、
’50〜60年代にモッズの男の子たちがファッションに取り入れて、
60年代後期にはヒッピーにも人気のあったコートです。
モッズといえば、テーラーメイドのスーツを競って着こなしたことで知られます。
タイトなスーツに小さめの襟のシャツに細身のタイ。
ループタイやアスコットタイなんかもコーディネートされました。
その後、モッズは定番ファッションのひとつとして定着して、
日本でも、一部には根強いファンがいて、
老舗のビスポークテーラーのお得意さんだったりするようです。
モッズを着こなしたバンドといえば、リアルタイムではThe Who。
彼らは60〜70年代に絶大な人気を誇ったロックバンドで、
ロンドンの下町出身。
日本でも上映された「さらば青春の光」というモッズ映画、
というより少年期の切なさや危うさを描いた青春映画の秀作は、
The Whoのリーダーが原作を手がけたものでした。
この映画はポリスの頃のスティングも出ていて、
光り物のモッズスーツを着た彼はスーパーカッコよかったです。
そういえば当時を知るイギリス人評論家が昔書いていたけれど、
「The Whoに比べるとビートルズはいわば田舎から来たバンドで、
なんだかダサかった」んだそうです。
モッズスタイルのミュージシャンとしてほかには、
80年代のUKではスタイル・カウンシル、
日本ならミッシェル・ガン・エレファントなんかが思い浮かびます。
そんなキメキメで、ある種ドレッシーなスーツの上に、
戦闘服たるアーミーパーカを合わせる。
しかもシルエットはダボダボでユルユル。
そんな風に両極端を合わせたアンバランスなコーディネート。
それこそファッションをよりおいしくしてくれる「スパイス」といえます。
70年代初期にイタリアのメンズファッション誌の、
パーティの紹介記事かなんかで、
とあるファッションディレクターがタキシードの上にダッフルコートを合わせていて、
それがめちゃくちゃカッコよかったのを覚えています。
「え、それしかなかったの?」と誤解されず、
「さすが!」と思わせる着こなし的説得力が、この際必要ですが。
あるいは、ジーンズにオペラパンプス(男性の礼装に合わせる靴)を合わせる、
なんていうのも、80年代に流行ったスパイシーなコーディネートです。
ロンドンの地下鉄で見た男の子は、かなり純度の高いカシミアコート、
しかもベージュというオーソドックスなカラーチョイス、
しかもグレーフラノのパンツに、
ダークブラウンのスエードのスリッポン、ラインはセリーヌ風。
そんな正統派かつ優雅ないでたちに、なんと靴下が、
ヴィヴィアン・ウエストウッドでした。
しかも超ど派手な柄、おまけに靴下素材でなく、
一時期作られていたカットソーのもので、
つまりTシャツ素材で平面的に作ってあるから、
履くと普通の靴下みたいに足にフィットしないし、
足のあちこちに不具合が出て、シワ・タルミのオンパレード。
しかも靴の中でよじれるという履き心地最悪のものでした。
(私も3足持ってました)
でもテキスタイルがいかにもヴィヴィアンという柄で、
ファンにはたまらない魅力溢れるアイテム。
それを、オーソドックスなコーディネートに取り入れている。
こういう遊びがファッションの醍醐味かと思います。
とはいえ、履き心地の悪い派手な靴下はあまりおすすめできないし。
ここはひとつ、個性的なカフリンクスでスパイシーなおしゃれを楽しんでは?
小さなアイテムだから、主張し過ぎず、でも自分なりの感覚を伝えるのには、
最適のアイテムかも知れません。

さて、今年も残す所あと数時間。
新しい年が皆様にとって喜びに満ちた、よき年でありますように。
来年も、どうぞよろしくお願いいたします。

*画像は「さらば青春の光」のサントラ盤ジャケット。
自慢のパーカスタイルの主人公。これでベスパに乗って出かけます。