レトロなラウンジで未来を思う

西新宿の京王プラザホテルで、
取材中、素晴らしいモノを見つけました。
籐のアームチェアです。
丸っこい卵のようなこのデザイン。
これがデザインされたのは1960年。
今から半世紀も前のことです。
デザイナーは剣持 勇。
渡辺力や柳宗理と並ぶ日本を代表するインテリアデザイナーで、
1950年代や60年代初期に、
彼らといっしょにジャパニースモダンの基礎を作った人です。
これはもともと、1960年にオープンした、
ホテルニュージャパンのためにデザインされたラウンジチェアでした。
ちなみに今はなきホテルニュージャパンは、
オリンピックを目前にして建てられた、日本初の都市型多機能ホテルです。
この椅子は日本の伝統的な職人の技を活かして作られたもので、
1脚編むのに10時間もかかるのだそうです。
・・・と、記憶していますが、
逆に、え?10時間でできちゃうの?職人すげー!!!
と思ったものでした。
このラタンチェアは世界の優れたデザインを収蔵している、
ニューヨーク近代美術館(MoMA)の永久保存品なのだそうです。

京王プラザホテルは1971年オープンで、
館内にはいたる所に60年代のモダンデザインの名残が見えます。
71年というと、デザインの最先端はもう少し宇宙的かつ無機質な、
近未来カラーが強かったと思うけれど、
あえて60年代的ナチュラルで有機的なフォルムを採用しています。
そのおかげで、今なお、古くさくなっていないのです。
レトロな香りはしつつ、今、時代は巡って、またコレが新しい。

中でも3階のカクテル&ティーラウンジは、
まさにミッドセンチュリー風な雰囲気です。
今最も注目のレトロテイスト。
まるで近頃オープンしたばかりのデザイナーズホテルかカフェのよう。
しかも椅子もソファも座り心地がよくて、
お気に入りの場所になりました。
過去と現在が混在するラウンジで、未来を思いつつ、
外の並木を眺めながらお茶を飲み本を読み。
しばし、せわしなさから解放されます。
といいつつ、スマホでメールチェックする自分。
さあ、明日から12月。
駆け足で冬がやって来ます。

写真上・籐のアームチェアはホテル2階の「新和食 かがり」という店の、
ラウンジにあります。
下・同じく3階のカクテル&ティーラウンジ。イマドキ最先端カフェ風。
60年代のモダンテイストを受け継いだ71年生まれのインテリア。
カーペットの柄もいい!