リバティの花

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桜前線という言葉があります。
南北に長い日本列島では、南の沖縄からはじまる桜の開花が
次第に北上していきます。
まるで桜の集団が列島をゆっくり静かに移動していくようなイメージがあり、
この時期はなんだかそわそわします。
北国が故郷の友人が、ある年、GWに帰省したらもう1度お花見ができたと聞いて、
すごくうらやましかったことがあります。

花といえば、日本では「桜」を意味することも多く、
それほど、日本人にとって桜は特別な存在です。
大昔は、田の神が桜の木に降臨すると考えられていて、
村人みんなで山に登り、満開の桜にお酒や穀物を供えて、
あとでそれを飲んだり食べたりして豊作を祈ったのだそうです。
桜の開花を合図に、田植えシーズンがはじまったと言われます。
当時のお花見は、より儀式に近いものだったんですね。
江戸時代になって、お花見はイベント色が濃くなったようです。
そして現代に至るまで、桜の時期といえば、花の下には宴あり。

近所の川岸には見事な桜並木が続いています。
平日に行ってみると、宴の人よりは散歩ついでの人が目立ちます。
1人で花の下に座って眺めている人、
気持ちよさそうに寝ている人、
女同士や男同士の2人連れで座り込んで語らっている人。
花を背景に車椅子に座った90歳近いおばあさんを、
息子さんらしき人が写真に撮っていました。
薄桃にけぶる花とおばあさんのくしゃくしゃの笑顔。
すごくきれいな絵でした。
満開の花の前に立って眺めていると、
幸福感でいっぱいになります。
もう、生きているのか、すでに黄泉の国にいるのかさえ、
どうでもよくなってくるほど美しい眺めです。
「願わくば、花の下にて春死なん」と詠ったのは西行。
「さまざまなこと思い出す桜かな」と詠ったのは芭蕉です。
どちらも、桜を眺めていると浮かんでくるもので、
どちらも、その通り!としみじみ思います。

何はともあれ、見慣れた街の景色の中に、
桜が咲いているだけで別世界に見える。
木が丸ごと1本、花で覆われてしまうというのは、
やはり珍しくも神秘的な眺めです。
年に1度の、この季節は、やっぱり特別な数日間です。

そして、花といえば。
土井縫工所についに、リバティプリントのシャツが登場しました!
花を中心に自然の造形をグラフィカルに描いたリバティプリントが、
確かな造りで上質なドレスシャツになりました。
物語の世界に引き込まれるようなテキスタイルの魅力を楽しみながら、
ワンランク上のスタイリングを演出してみてください。