クリスマスは過ぎたものの、街を彩るイルミネーションは、
まだ燦々と輝いています。
見慣れた景色が別世界に変わるこの時期、
期間限定ならではの儚さが、
輝きをよりいっそう魅力的に見せてくれます。
今年はイブから6日間ほど皇居と二重橋もライトアップされました。
和のたたずまいの建物がブルーグリーンに発光し、
幻想的な雰囲気を醸し出していました。
さて、今年もあと一日。
みなさまにとって2013年はどんな年でしたか?
あんなことやこんなことがあり、
変化したことや変わらないことや。
何があってもなくても、幸せな夜にも嘆きの夜にも
平等に朝は訪れ、四季は巡り、自然はいつも新鮮な瞬間を見せてくれます。
空が青くて夕焼けが美しければ、それだけで心は軽くなります。
いや、雨模様や曇りの日だって、その中に美しい光景が潜んでいます。
そんな自然のチカラや、誰かが生んだ素晴らしい事やモノのチカラに、
励まされたり勇気づけられたりして、
今年も過ごして来ました。
絵や文章、音楽や映画、ファッションや建築物、そしておいしい料理。
誰かが生んだ素晴らしい事やモノは、
自然の産物とは異なるパワー、強い意志の存在があるからこそ、
私たちは心を動かされるのだと思います。
先日、新宿で打ち合わせを終えて小田急百貨店の前を通ったら、
「草間弥生展」のポスターが目に入りました。
草間弥生は長年ニューヨークで活動していたアーティストで、
独特の原色使いの水玉模様が特徴の作品で知られています。
この水玉は持病の神経症からくる幻覚で、
実際にモノの上に細かい水玉模様が見えていた時期があるのだそうです。
花や果物やカボチャ(彼女のお気に入りのモチーフ)といったモチーフには
大小の水玉がびっしり描かれていて、
アウトラインは大胆でパワフルで、どこかユーモラスでかつグラフィカル。
そのユニークさと色使いの美しさから、
コム・デ・ギャルソンやルイ・ヴィトンといったハイブランドとも
コラボアイテムを展開しています。
今やヨーロッパでも回顧展が開催されるなど世界的に大注目のアーティストです。
見れば個展は12/30までとのことで、
さっそく上階の美術館スペースへ行ってみました。
出品作はリトグラフが中心で、展示即売会でもありました。
定価は数十万から数千万円までがほとんどですが、
中には億単位の作品もあり、この部屋には警備員さんも立っていました。
それにしても、草間弥生の描くモノはすべからく野性的。
花は粗暴で、デコレーションケーキは荒々しく、果物は動いているように見えます。
草間弥生はかつて
「庭でパンジーを見ていたら、花が急に恐ろしい形相になって襲いかかってきた」
と語っていたことがありますが、
彼女にとって花や生物は決して優しく静かなものではなく、
ある時は攻撃的でさえあるものなのでしょう。
彼女の描く絵は、「この人には世界が確実にこう見えているんだ」という
迫真に満ちた説得力があります。
「こう描こう」とか「どう描けばいいんだろう」とかの迷いはいっさいなく、
見えているモノを写し取っているというリアルさが、
幻想的な形の奥から滲み出ているのです。
だから、見る者の心臓を鷲づかみにするパワーがあるのだと思います。
しかも全体的に、はからずもスタイリッシュな仕上がりになっていて、
それが今、ファッションという世界でも、
その魅力が評価されているゆえんかと思います。
そして、草間弥生は今年84歳!
いまだに制作意欲は衰えていないといいます。
60歳を過ぎた頃、70歳を過ぎた頃の作品の持つ新鮮なパワーにも驚かされ、
心の底から勇気づけられました。
彼女の赤いおかっぱのかつらに習って、
金髪にしてみようかと正直思ったほど。
年を重ねると、自然に任せたシワを受け入れるのと同じくらい、
何か人工のマークで気合いを入れることも効果的かも知れません。
ところで私は数十年前にとあるパネルディスカッションで
(ケネス・アンガーというアンダーグラウンドな映画監督の作品を上映したあとで、
みなで語り合うという企画でした)
まだ一般には無名だった時代の草間彌生に会ったことがあります。
素朴さとアウトローさがないまぜになっていて、
淡々と言いたいことを言う、言いたいことしか言わない、
人の話は聞いていないか、聞いていても気にしないという感じで、
おもしろい人だなあと思った記憶があります。
あの人が今や世界的アーティスト。
世の中、何があるか、どうなるかわからないものです。
わかっているのは、自分の意志と気持ちを持ち続けることが大事なんだと。
なぜなら、それが多分、幸せというものの正体らしいと最近気づきました。
そんなわけで年の瀬に、
来年もますますモノづくりをがんばるぞと心した一日でした。
さてさて、今年もどうもありがとうございました。
来年もどうぞよろしくお願いいたします。
寒さ厳しき折、お体ご自愛しつつオシャレをお楽しみください。