熟したダッフル

これからが一年で一番寒い時期。
とはいえ、葉の落ちた裸の木々の枝先には、
新芽がぷっくりと膨らんでいて、
開花の日をじっと待っている様子。
冬真っ直中というこの季節に、春の息吹を感じさせてくれます。

景色に色がないせいか、鮮やかな色目の服や小物が恋しくなります。
そうでなくても年を重ねるごとに、
きれいな原色にココロ引かれる自分がいます。
ヨーロッパでは高齢のマダムほどピンクやブルー、
若草色やパープルなんかをオシャレに着こなし、
燃えるように赤い口紅をさしていたり。
もっと若い頃は、年を取っても、
洗いざらしのポロシャツと綿パンでオシャレに見えるばあさんになりたい、
と願っていました。
でも、実際に年を重ねてきた今、
もうゴテゴテに着飾ったゴージャスなばーさんに憧れます。
首にも腕にも指にも耳にもド派手で巨大なアクセサリーを、
じゃらじゃらつけているような。
実際にはそんなヘビーなアクセ付けた日には、
首も肩も凝っちゃってたまらんわい、だと思うのですが。
てなわけで、年を取ると服に対する情熱が再燃するような気がします。
海外のファッション雑誌やら音楽雑誌やらを熱心にチェックして、
「何が一番新しいのか、何が一番おもしろいのか、何が一番刺激的なのか」
そんな情報をつかむことに命をかけていた、
あの頃の気分が今また蘇っています。

さらに考えてみれば、その「ファッション熱復活感」は、
時代の雰囲気でもあるように思います。
一時、デパートなんかもどちらかというと、
「今一番新しい服」より「行列のできるショコラ」優先というか、
デパ地下のグルメにたよっていたような、
衣食住の根幹がゆるぐ風潮があったと思うのですが、
このところ「それじゃやっぱりいかんだろ」とココロを入れかえた感があります。
デパートもショッピングセンターも、今は
「うちこそファッションの殿堂よ」という
みなぎるようなチカラこぶを見せつけているかのような。

そんな今日この頃。
少し前までオタク人気が災いして、ちょっと避けられていたダッフルコートが、
このところまた正当に評価されている気がします。
元々はベルギーのダッフル地方で作られたウール生地を使っていたため、
ダッフルコートと呼ばれるようになったもので、
オリジナルは19世紀のポーランドで流行ったフロックコートなのだそうです。
その原型を取り入れて、英国の軍隊用にデザインしたのが「ダッフルコート」で、
19世紀に生まれたクラシカルな男性用コートの中では、
唯一残っているフード付きなのだそうです。
現在、主流になっているダッフルコートは細身ですが、
原型はかなり身幅が大きく、中に相当厚手のジャケットなどを
着込んでいても大丈夫そう。
今は、木のトグルに麻のロープという原型を保ったものから、
または水牛のトグルに革紐、
あるいはプラスティックのトグルにビニールレザーのヒモ、
というプチプライス仕様までさまざま。
基本的なデザインは19世紀から変わっていないものの、
現代のダッフルコートはカラフルなものや柄物など、
素材はバリエーションに富んでいます。
先日見かけた男性の、きれいな青のダッフルコートは、
裏地が紫色系のペイズリー柄でした。
本来は裏地なしの1枚仕立てがダッフルの正統派。
でも、インナーに鮮やかな色のニットを合わせたり、
ちょっと個性派のパンツを合わせたり、
色や小物、ボトムのスタイリングで冒険したくなるのが今のダッフル気分です。
オタクでも学生風でもない、大人なダッフルをキメちゃって、
今年のバレンタインは行列のできるショコラをゲットしてください!