アメリカ大統領選挙が大詰を迎えています。
ヒラリー・クリントンvsドナルド・トランプの最終決戦は、
どういう結果をアメリカにもたらすのか?
大国アメリカのトップは、地球のなりゆきにも大きな影響をもたらす存在ですから、
世界中が見守っているこの一戦。
60年代のアメリカの左翼活動家、ジェリー・ルービンはかつて、
「米大統領選挙は日本や同盟国の国民も投票できるようにするべきだ。
だって、誰がなるかで周りの国も左右されるんだから」と言っていました。
今のところ日本バッシングで息巻くトランプさん。
昔から何かと話題を振りまいていた人です。
マンハッタンの5番街で金色に輝くビル、トランプタワーが有名な不動産王です。
ビル同様、本人もギラギラした感じでエネルギッシュ。
トークやスピーチは切れ味最高、毒舌・舌禍のオンパレードでシャープそのものなのに、
体型や服装は、どうもシャープとはいえないシルエットです。
だぼっとした印象のスーツにホワイトシャツ、
そこに赤か青、たまにピンクなどの無地のタイ。
柄物は99%レジメンタルタイです。
すっきりした細身のスーツやシャツに、渋い色や柄のタイをきりりとしめた、
オバマさんのようなスマートさはありません。
とはいえ今回は、ドナルドさんのみでなく、ほかの候補者も、
あまりおしゃれ感を漂わせている人がいないのが現状です。
1人、ヒラリーさんが、すっきりしたシンプルデザインのジャケットを着こなして、
現代的な都会感を漂わせています。
ちょっとゆるっとしたボディラインをうまくカバーしつつ、
知的で凛々しいたたずまいに見せる。
さすが女性候補はこのあたりを心得ています。
ところで、今回の大統領選のもうひとつの特徴は、
目玉候補がみんな高齢なこと。
民主党の大統領候補ヒラリー・クリントン 68歳、
ライバルのバーニー・サンダース 74歳
共和党の大統領候補ドナルド・トランプ 69歳。
(共和党内でのトランプさんのライバル、テッド・クルーズ氏は45歳、
もう1人のライバル マルコ・ルビオ氏は44歳ですが、
ほぼトランプさんが共和党の代表になると見られています)
日本で言えば前期高齢者(64〜74歳)にあたる人たちが、
全米を移動しての選挙活動を展開して演説を繰り広げているのですから、
そのタフさに驚かされます。
これまで選挙ごとに若返っていたという印象のある米大統領目玉候補が
今回は一気に年齢を上げてきた点が、とても興味深く感じます。
高齢者というキーワードつながりでいえば、
近頃話題の映画『アイリス・アプフェル!94歳のニューヨーカー』は、
タイトル通り、94歳のファッションアイコンに迫ったドキュメンタリーです。
60年代からインテリアデザイナーとしてホワイトハウスの内装にも関わっていた
アイリスは、80代でファッションプランナーとしても活動を開始。
トレンドやブランドにこだわらない自由な発想でコーディネートするスタイルは、
ドリス・ヴァン・ノッテンやアレキサンダー・ウォンなどの
若手デザイナーたちにもファンが多いのだとか。
実際、彼女のスタイリングは金髪のショートヘアに大きなフレームの眼鏡、
真っ赤なルージュ、カラフルな色の大胆なプリントのトップスに、
エスニックな大ぶりのアクセサリー、といった、目にも楽しいコーディネート。
94歳という高齢の女性がこういうキャラクターで注目を集めて、
ファッションアイコンとしてリスペクトされているという点に、
アメリカのファッションの歴史の深さを感じます。
ひるがえって、日本でファッションアイコンとして話題になるのは、
国内外のブランド物をいち早くゲットして身にまとっている、
若くてかわいい着せ替え人形さんたちばかり。
それもまあ、ブランド品ビジネスの動く看板なのだから仕方ないのですが、
この高齢社会、アイリスのような存在が早く登場して
注目を集めてほしいもの。
最近、おしゃれな高齢のお嬢様方(みの・もんた的表現)の写真集なども、
出始めていますし、街行くシニアのファッションも日々おしゃれにはなっています。
が、目を見張るほどおしゃれな人が多いのは、
やはり銀座や青山、恵比寿や目黒、田園調布あたりを闊歩する、
富裕層高齢マダムというのが現状です。
ただ、10年後くらいには、そこいらの街を歩く年金生活マダムでも、
目を見張るおしゃれさんになっている時代がくると思います。
たとえばそこいらのファミレスでも内装が、
一昔前のおしゃれカフェくらいのインテリアになっている今日このごろ。
10年後には庶民派おばあちゃま・おじいちゃま御用達の、
洋品屋さんのファッションアイテムが、
H&M、くらいにはなっているはず。
だいたい、年を重ねるほどいろいろなしがらみから解放されて、
肉体的や経済的には不自由な面もあるかもですが、精神的には
本人さえ望めば、もう一度青少年のごとく自由になれるはず。
老いてこそ、服に惚けていたいものです。
と、米大統領選の高齢化に、日本もうかうかしていられないぞと思う春のはじめです。