先日、東京・大阪間を約1時間で結ぶという、
リニア中央新幹線についてのニュースを見ました。
東京から時速500kmで走るこの超電導リニアモーターカーは、
名古屋開業が2029年、大阪は2045年なのだそうです。
今から34年後では、とんだ近未来な話ですが、
もっと気の長い話題が、先頃発表された超音速ジェット機。
こちらはヨーロッパの航空会社EADSがパリの国際航空ショーで発表したもの。
現在の旅客機と同じようにターボジェットエンジンによって離陸し、
その後はロケットエンジンに切り替えて急上昇。
上空でラムジェットという超音速用エンジンに切り替え、
現在の旅客機より約3倍も高い、上空約3万2千メートルを、
音速の5倍のマッハ5で吹っ飛んで行くのだそうです。
実用化は2050年頃。
かくして人類は東京ーロンドン間を2時間半で移動できる世界に突入するらしい。
ちょうど現在の新幹線による東京・大阪間の所要時間ですね。
しかも、この音速機、悪評だったコンコルドと違い、
遙か上空を飛ぶので騒音とも無縁なのだとか。
もう数十年前にパリでコンコルドが頭上を飛んで行った時の、
この世の終わりかと思えるような轟音がいまだに脳裏にあるので、
音速機と聞いてまずそれを思い浮かべました。
が、そんな私を置き去りにして科学はさっさと進歩していたようです。
さらに、ここがポイントですがこの音速機、
植物から合成したバイオ燃料でターボジェットを動かすとのこと。
ターボ以外のほかのエンジンの燃料は水素と酸素なので、
排出するのは水だけなのだそうです。
つまり、地球温暖化の原因となるCO2(二酸化炭素)を全く排出しない、
早い上にエコなジェット機というわけです。
ひと昔前までは、早さや効率だけが求められたけれど、
昨今は効率と同時に、いかに環境を守れるかも求められます。
そんなことから、原発メインだった日本でも最近、
自然エネルギーが脚光を浴びるようになりました。
太陽光、風力についで注目されているのが、バイオマスエネルギーです。
古代の生物から生成する石油、石炭、天然ガスなどを化石エネルギーと言うのに対して、
バイオマスは現代生活で身近にある動植物から生成される燃料を使うので、
生物エネルギーと言われます。
昔からお馴染みの薪や炭もいわばバイオマスエネルギー。
さらに現代は新技術によって、木材や海草、生ゴミ、紙、
果てはプランクトンなどの生物資源を燃料にして発電できるようになっています。
以前、環境保護大国スゥエーデンの人にインタビューした時、
「コーヒー豆で車だって動かせるよ」と力説していました。
日本でもコーヒーのかすなどを使った代替えエネルギーの開発が進んでいるようですが、
今、最も興味深いのは「オーランチオキトリウム」の存在です。
沖縄のマングローブの根元に棲息している藻で、
光合成を行わず水中の有機物を食べて油を作り、細胞内に溜め込むのだそうです。
油を作る藻はほかにもあるようですが、
「オーランチオキトリウム」の生産量はほかの藻類の10倍以上。
成分は石油とほぼ同じで、代表的なバイオ燃料の原料であるトウモロコシと比較しても、
同じ広さの土地で生産できる油はトウモロコシの5万倍なのだそうです。
例えば琵琶湖の1/3、20万ヘクタールの面積でこの藻を培養すれば、
20億トンの石油が生産でき、世界の石油需要量である50億トンの内、40%を日本で生産できるのだとか。
なんと!日本がブルネイみたいなお金持ち産油国になれると!
OPECなんかも参加しちゃったりするんでしょうか?
しかし何がスゴイって、これを発見した藻類学者の渡邊信・筑波大教授です。
沼や池にいる藻は4万種以上もあって、
教授は効率よく油を作る藻を求めて世界の池や沼や洞窟まで調査し、
やっと沖縄で出会ったのがこの「オーランチオキトリウム」だったのだとか。
教授はこの藻が作った代替えエネルギーでトラクターを動かす実験にも成功しています。
藻類を研究している人が国の命運を決める・かも知れないはめになる。
新時代の到来であることは確かです。
そんなバイオマスエネルギーを使った音速ジェットが2時間半で繋ぐヨーロッパの国々。
1960年代、お金はないけど時間だけはあるという若者達は、
シベリア鉄道で一路ヨーロッパををめざしました。
橫浜から船でソ連(現ロシア)のナホトカまで行き、ナホトカからモスクワ、
さらにモスクワからヨーロッパの国々へと列車で行く旅で、
日本を出てから目的地の欧州の街にたどり着くまで一週間以上かかったといいます。
今なら一週間といえば、日本を発って平均10時間で目的地に到着し、
異国の街を観光して回り、帰路に着くくらいの日程です。
それが50年後には2時間半。早朝に出れば日帰りだってできてしまいます。
「今日はちょっとミラノで買い物してパリで晩ご飯食べて帰って来るわ」みたいな。
先日、高校時代からの親友がオーストラリアのメルボルンから久しぶりに里帰りしました。
彼女はイギリスで知り合ったアーティストのパートナーとオーストラリアに移住。
2年ぶりに会う彼らはデザイン違いの白いリネンのシャツを着て、涼しげで清潔な感じでした。
オーストラリアの彼らの友達は殆どが、なんらかの創造活動をしているアーティストで、
センスのあるなしに関わらず、みんなおしゃれに熱心なのだとか。
そんな友達連中の主なショッピングはネットで、
特に日本のファッションが人気なのだそうです。
「この前も京都にすごくスタイリッシュな靴を作っているメーカーがあって、
サイズが27の女友達が別注したって言ってたわ」とのこと。
京都のメーカーも遠い海の向こうの街から、
オーダーがくることは見越していたのかも知れませんが、
あの古都の街から革靴が海を渡り、南半球の小さな街に届くことを考えると、
とても不思議な気がします。
そう、この土井縫工所のシャツも、時に海を渡り陸を走り、
丘を越え野を越え、未知の街に届けられています。
燃やしてもCO2を排出しない、布製の袋に包まれて。
世界の距離はリニアモーターカーより音速ジェットより、
急速に縮まっているんですね。