Golden is Silence

大型連休がはじまりました。
初日の土曜日、テレビのニュースは、
恒例の空港出発ラウンジの光景を伝えていました。
東京から南北の他府県へと続く自動車道の渋滞の空撮もお約束。
この時期、海外や国内旅行で、あるいは家族または単身での帰省で、
しばし日常生活から離れて気分転換されている方も多いと思います。
とはいえ、自由業と言う名の不自由業である身としては、
連休と言ってもデスクワークがあったりして、
例年東京に埋没しています。
昨日は夕暮れ時から二子玉川に行って来ました。
ここは田園調布などのブランド駅が多い東急田園都市線・大井町線にある街で、
住みたい街ランキングで10位よりちょっと下(笑)くらいに
いつも名前が出ている街。
大昔は遊園地があることで知られ、それ以外はとくにパッとしない街だったのが、
1969年に日本初の郊外型の大型ショッピングセンターとして
高島屋がオープンしてから、一気にオシャレ感とハイソ感が出て、
さらに近年は駅前の再開発で大型SCビルやオフィスタワーが増え、
その中に高級ホテルや楽天本社ビルがあったりして、
街の雰囲気は加速度的にオシャレ感と、ブランド感が増しています。
うちからはバスで20〜30分、隣町と言ってもいい近さなので、
ついついすっぴん・普段着で行ってしまうのですが、
結構ピカピカな方々が多いのが実情です。
とはいえ、カフェで隣り合うマダムたちもみな
「次は◯分発でそれ逃すときついかも」とか話していて、
結構バス利用客が多いのも実情です。

二子玉川という名の通り、街の南端は多摩川に接しています。
駅前でバスを降りると、SCには行かず、私はまず、河原に出ます。
うちの近所にも多摩川は流れていて、東京百景に選ばれている
プチ名勝などもあるのですが、あまり人工的ではなく、
昔のままに保存されている感じ。
ところが二子玉川駅近辺の河原はそれはもうきちんと整備されていて、
こりゃもう河川公園の趣ですなあ、と常々思っていたら、
本当に『兵庫島公園』という名前の公園なのでした。
ひょうたん池や人口の小川があって、子どもたちが水遊びができます。
家族連れはもちろん
(パパ&子どものパターンが多いのは、ママがSCで買い物中なのかも)、
若い女の子のグループがSNS用の写真を撮り合っていたり
カップルが散歩していたり、
男女のグループが芝生ではしゃいでいたり。
このあたりが街のブランド化に成功している要因なのでしょう。
お買い物だけの満足度ではない、その場所にいることの喜び。
それはもう駅前のSCビルのいたるところにもその試みが感じられます。
オフィスタワーの高層ビル以外は低層に押さえて、
中庭風のデッキテラスから各ショップやカフェ、
レストランにアプローチできる。
ショップ群を抜けると広場のようなテラスがあり、
大きな空と開けた視界が楽しめます。
さらに屋上にはテラス。
最近、モノよりコトの時代と言われますが、
購買欲をそそるには、まず、その場所を居心地良くしようというコンセプトが、
そのSC全体を貫いています。

1970年代に、西武百貨店渋谷店の当時の社長、堤清二は、
さまざまな革命的路線を打ち出した人ですが、
その中で社員に「車道を渡れ」と檄を飛ばしたという伝説もありました。
西武の前は二車線ほどの車道ですが、
横断歩道ではなく、車道を歩いて横切れというのです。
当時のパリやロンドンの街では繁華街の車道が細いせいもあって、
若い子たちはみな横断歩道を無視して渡っていました。
そういう自由な雰囲気をデパートから広げて行くんだという
街づくりの意識があったようです。
それでこそ、この街に人が集まり、
デパートに人が集まってきて買い物をする、という。
あれから約半世紀後の今。ショップやカフェの合間に広場で憩う人々。
小売業の販促をめぐる街づくりは、
さらに発展してここにあると感じます。

ここにはとても大きな蔦屋があって、蔵書の数、約15万冊。
探している本は、たいがいなんでもあるという印象。
しかも店内にダイニングやカフェ(スタバ)もあるので、
お茶でも飲みながら買った本がすぐ読めるのもうれしい。
とはいえ、連休初日のスタバは買うだけでも長蛇の列で、
とても並ぶ気になれませんでした。
連休後半に旅行が控えているのか、それとも東京埋没組か、
それぞれの事情を抱えて郊外の街に集まる人々。

私はZARA HOMEで、大きめなマグカップを買いました。
フレンチぽくてアンティークっぽくて、これでお茶を飲んだら、
フランスの田舎町の小さなカフェの雰囲気が味わえるかも
なんぞと思うわけです、夢見るご婦人は。←はい、私。
物にはストーリーが必要です。

*写真は、上から二子玉川の兵庫島公園、二子玉川RIZE、RIZEのエントランス近辺。

*タイトルは、60年代後期の洋楽のヒットナンバー”Silence is Golden”
(トレメローズ)から。ゴールデン・ウイークは、一部の東京がとても静かになるので。