梅雨がはじまったようです。
四国から関東にかけて広い範囲での梅雨入りと聞きました。
雨が降ると外出時の荷物を増やしたくないと思ったり、
それなりに不便なこともありますが、
それなりに楽しいこともあります。
お気に入りの傘をさす、新しいレインブーツを買った、
ポンチョをゲットした、などなど。
というマテリアリスティックな喜びに加え、
雨に濡れて艶々と輝く木々や花々を見るのも楽しいし、
かたつむりを発見できるのもこの時期の楽しみのひとつです。
という梅雨時ですが、着るものに迷うことは確かです。
外気は肌寒いのに室内はムシムシ。
そんな条件をクリアして快適な着心地をもたらしてくれるのが、
昔から重宝されている素材、リネンです。
私が中学生の頃、遠縁のおじさんがあるとき、母と私を銀座に誘ってくれました。
おじさんは仕事の関係で海外生活が長かったせいか、
とってもおしゃれな人でした。
待ち合わせの駅に現れたおじさんのいでたちは、
生成りの麻のスーツに白い麻のシャツ、パナマ帽に茶色のメッシュの靴、
という紳士っぷりでした。
そのときは私のリクエストで「欲望」という映画を見ました。
1960年代中期のロンドンを舞台に、
スゥインギングロンドンと呼ばれた時代のファッションや広告業界、音楽を
一人のカメラマンに起こった不思議なできごととして描いた作品です。
監督はイタリアの鬼才、ミケランジェロ・アントニオーニ。
小学生の頃から洋画と洋楽ファンだった私がぜひ見たかった映画でした。
ライブシーンに登場するロックバンド、ヤードバーズが見られたのも興奮だったし、
行きたかったロンドンの街を大画面で見られたというだけで楽しめたのですが、
でも、当時の普通の日本人の大人には、
描かれている内容も演出も難解だわ縁遠いわ、で、
多分母なんかはずっと寝ていたんじゃないかと今になって思います。
映画を見たあと、レストランで食事をしていたら、
おじさんは「まあ、変わった映画だったね」と言いながらも、
色々解説してくれました。
「2人の男が犬の散歩をさせていたでしょう、あれは同性愛の人たちだね」などなど。
おじさんは偏見があるわけではなく、そういう人を通行人として登場させることで、
あの街の状況や背景を描いていると解説してくれたのです。
海外生活の中でもロンドンが一番長かったというおじさん。
コックニーというロンドン訛の発音があることも、
そのときはじめておじさんから聞いたのでした。
中学生の私はハンバーグをモグモグ、なおかつ目を丸くしながら、
おじさんの話に聞き入っていたものです。
そうそう、映画を見る前に、おじさんは私たちを靴屋に連れていきました。
私は精一杯おしゃれをしていたのですが、靴はスニーカーでした。
「銀座で映画を見て食事するのだから、もう少しエレガントな靴にしましょう」
と言われて、そのとき私が選んだのはコバルトグリーンのスエードの、
メリージェーン型の靴。ほんの少しヒールが高いもの。
おしゃれには靴がカンジン!というのもそのとき悟ったことでした。
そんな風に英国仕込みのおじさんはいつ会ってもダンディな紳士で、
「話してるとイケメンに見えてくるのよねえ」というのが親戚の女性軍団の評価。
そう、おじさんはちょっとだけ残念な風貌をしていたのです。
でも、親戚の女性たちにもモテモテで、
粋さは身を助けるとつくづく思います。
初夏になるとおじさんのダンディな麻のスーツと麻のシャツ、
銀座の日差しに映えたパナマ帽を、いまだに思い出す私です。
さてさて、夏を涼しげにスタイリッシュに、という場合は、
土井縫工所のリネンシャツをおすすめします。
素材は高級リネンの代名詞として名高いハードマンズリネン。
通常リネンというと、「麻」を使っていると思われがちですが、
ハードマンズリネンの素材は亜麻科のフラックスで、麻とは異なる植物。
麻よりも柔らかくて丈夫、しかも高級な繊維なのです。
そんな上質な亜麻を使って、長い歴史のうちに継承されてきた、
伝統的なアイリッシュリネンの紡績技術で作られた生地がハードマンズリネンです。
生地の特徴は吸湿性・速乾性・通気性に優れていること。
高温多湿な日本の夏には最適な素材であることは間違いなし!
上質なリネン生地が持つ、特有のネップや節などの風合が、
シャツに表情の変化や色気を与えてくれます。
また、リネン素材は縫製の施し方によって、
カジュアル味の強いシャツになりがちですが、
土井縫工所ではほかのドレスシャツと同じ縫製で仕立てているので、
どこから見ても優雅で上質なシャツの顔をしています。
ジャケットのインナーとしても品格を添え、タイを締めても上品なVゾーンに。
カラーバリエーションも白、サックス、ピンク、ネイビー、ブラック、カーキと
豊富に揃っているので選びやすいのですが、
それぞれの色が独自の魅力を備えているので迷うことは確か。
2〜3色揃えておくと、色のちがいで気分やスタイリングも
異なる雰囲気で楽しめそうです。
蒸し暑い初夏から暑い夏へ。
今年はリネンの優雅な風情を身にまとって乗り切ってください。