リノベやDIYで、スタイリッシュな空間を実現


首都圏はいきなり寒いです。
11月でこの寒さは36年ぶりなのだとか。
最近そういう、何十年ぶりの猛暑とか豪雨とか低気温とか多いですよね。
かつて異常であった現象が、通常になってきている、
私たちはその変化への急速な対応を強いられているわけですが、
なかなかうまく行きません。
昨日までずっと暑ければ、「今日は急に寒いですよ」と言われても
気持ちがまずついて行けない。
気持ちも体も、今仕様にリフォームしていかなければならないわけですよね。

リフォームやリノベーションといえば、
最近は「リノベ」と省略化された程、家の改装がトレンドです。
新築を購入するにはお金がかかるし、
そこで中古の手頃なマンションや一戸建てを購入してリノベする。
あるいは古い自宅や親族から譲り受けた家をリノベする。
全面的に施工会社に頼む人や、
基本的な部分を大工さんや専門家に頼んで、
あとはDIYで自分で直す人と、方法もさまざまです。

ファッションやデザイン業界ではレトロスタイルが定着していることもあり、
自分の住空間もアメリカンやヨーロピアン、
シックスティーズや昭和テイストにしてみたり、
1940〜50年代のニューヨークスタイルにしてみたり。
テレビのコマーシャルやドラマ内で表現されるインテリアも、
レトロな空間が目立ちます。
ファッションのジャンルが多様化している今、
住空間の好みも多様化していて、
最先端を好む人から、過去へのノスタルジー派までさまざま。
その一方、北欧モダンを取り入れたシンプルスタイルの住宅は、
グローバルスタンダードと化しているようで、
海外のニュースに出てくる家並を見ると、最近建てられたとおぼしきものは、
世界的にみんなとても似通っています。
ファッションに続き、家のデザインも地球規模で共通化しているのが、
興味深い現象です。
東京郊外の街を歩いていると、
古き佳き農家の庭に、母屋とは国籍が違うのかというような
白を基調とした北欧モダンの家が建っていたりして、
ウッドデッキのテラスにモダンなファニチャーが置かれていて、
庭の片隅の納屋には放置された農具がそのまま、という、
ひとつの庭に年代や様式の異なる世界が共存していて、
住宅博覧会のような楽しい景色に出会うことがあります。
家好きにとって東京郊外の町は、
ニッポンの住宅事情・過去と未来が現物展示で見られる宝庫です。

そんな中、空間保存された昭和中期に出会える場所が団地。
1950年代から、若き労働人口を受け入れるため
続々建てられた集団住宅地です。
当時はモダンなライフスタイルを提案するスペースでもあったため、
最近のレトロブームで再注目されているところではありますが、
少し前からはその団地のリフォームに、
IKEAやMUJI、IDEEと言った、国内外のインテリアショップが参入したり、
著名な建築デザイナーが大幅なリノベーションを手がけて、
インテリアにこだわる若い層を取り込む動きが見られるようになりました。
そうした部屋では、普段からよく利用しているブランドの
世界観そのままの空間に住めるという次第。

これまでは、そうした業務はインテリアの会社の専売特許のようでしたが、
最近はアパレルブランドからの住空間への参入もチラホラ。
ユナイテッドアローズやジャーナルスタンダードなどが、
それぞれのショップのこだわりのインテリアを導入したリノベ空間を、
提案しています。
都内の優良中古物件はそれだけでも高いので、
アパレル産業がリノベを手掛けるとなると、
それなりの値段になりそうですが、
超スタイリッシュな空間をオーダーメイドでリノベするよりは、
時間的にもコスト的にもリーズナブルということかも知れません。

衣食足りて礼節を知るということばがあります。
「物質的に不自由がなくなって、はじめて礼儀に心を向ける余裕ができてくる」、
ということのようです。
そこからいえば、衣食足りて住を知る、といえまいか?
ファッション、グルメ、そしてインテリア。
セルフリノベのブームも、それを物語っています。

ところで、IKEAは昨年、本国でのキャンペーンで
「悩みを検索するとそれに合う家具が表示される」という画期的な方式を展開。
たとえば「彼が愛していると言ってくれない」という悩みを検索すると、
同じ商品名のIKEAの商品がヒットするという具合。
ちなみにその悩みへのアドバイスは「黒板」でした。
「娘が服を脱ぎ散らかす」という悩みへのアドバイスは、
高い背もたれに横棒が3本も付いていて、タオルや服がかけられる「椅子」。
つまり、多くの人たちが検索するお悩みを商品名にしてしまったわけです。
残念ながら日本のIKEAではそのキャンペーンはされていませんが。
家具や雑貨など、暮らしのものをひとつ変えたり新しくすると
気分も一新されもの。
インテリアは服と同じように、気持ちや呼吸に密着したものといえそうです。

*写真は、東京近代美術館で10月まで開催されていた「日本の家 1945年以降の建築と暮らし」展の出品作のひとつ。
スキップフロアの多様で、狭小地でも空間が確保できるという提案。