ピッティ・ウォモで歴史とトレンドを見聞する


地球はほぼプチ氷河期に入っているという、
ショッキングな情報もあるほど、極寒の今冬です。
みなさまいかがお過ごしでしょうか?

この時期、SNSやブログなどでしばしば遭遇するのがPITTI IMAGINE UOMOの話題です。
通称「ピッティ」は、英国と並ぶメンズファッションのトレンド発信地、
イタリア・フィレンツェで行われる世界最大級のメンズプレタポルテの見本市で
毎年、 1月と6月にそれぞれ4日間、開催されます。
93回目となる今年は1/9〜13に行われましたが、会場がまた魅惑的。
日本で見本市の会場というと、晴海の東京ビッグサイトのような
ハイテク&モダンな建造物を想像しますが、そこはさすがイタリア。
終着駅であるサンタ・マリア・ノヴェッラ駅にほど近い、通称「バッソ要塞」がそれ。
1537年に当時フィレンツェを治めていたメディチ家の当主が高名な建築家に建てさせた、
文字通り要塞で、建設当初は中にお城も建てる予定だったとか。
この築480年の大建造物が現在は貿易展示場に使われていて、
約6万平方メートルの敷地内に複数の会場が設けられています。
ピッティの名称は、かつての会場がピッティ宮殿だったからなのだとか。
ちなみにこの要塞の近所にあるサンタ・マリア・ノヴェッラ薬局は
世界最古の薬局といわれる観光スポットです。
中世の世界に迷い込んだような歴史的ロケーションの中で、
メンズファッションの明日を示す見本市が行われるわけで、
まさにここでは過去と未来のカタチが共存しているという次第。

見本市にはイタリア国内外から約1000以上の、
有名無名、大小の意欲的なブランドが参加します。
来場者も世界各地から、バイヤーや報道陣が訪れ、
2017年は19,400人がバッソ要塞に集結したといいます。
ここに集まるファッショニスタたちを写そうと、
多くのメディアやブロガー、一般人も集まり、
スタイルを巡る熱い4日間が展開するのです。

出展アイテムはスーツやシャツはじめ、ネクタイ、靴、バッグほか、
ファッションに関する小物雑貨類のさまざまが出展されます。
会場はメインからサブまで大小複数が設けられ、
メインではクラシコイタリアなど、サブではデニムやカジュアル、
などといったスタイル別、傾向別、テーマの打ち出し別で展示会が分かれています。

そして、欧米やアジアのバイヤーの中でも、日本のビジネスはかなり大きいといわれ、
大手百貨店や主なセレクトショップがここで、
次期のトレンドの道筋を見据えながら買い付けているわけです。

もちろん土井縫工所も毎回、トレンドの動向をリサーチするべくPITTIを訪れています。
取引先のブランドが出展していることもあり、
毎回、会場に並ぶコレクションからトレンドを探り、
訪れる人達のコーディネーションにも刺激を受けています。

そこで、スタッフが見た今回の印象は、
英国のブランドのみならず、イタリアのブランドからも、
艶っぽいイタリアンラインが少し影を潜め、英国調が強くなっている模様。
仕立てやサイズ感もゆったりした感じで、
クラシックであったり、ビンテージ風であったり、少しカントリー調であったり。
素材も、ガンクラブチェックやグレンチェック、タータンなど、
英国調やスコティッシュテイストのもの、
またコーデュロイやフランネルなどカントリーテイストのものも
目立っていたといいます。
ツイードやヘリンボーンはじめ、ネップ、シルクシャンタンなど、
織地に特徴のある生地も今シーズン、よく目にした素材といいます。

色展開では深いオレンジやテラコッタ、マスタード、モスグリーン、
マスタード寄りの黄色、カーキや抹茶寄りのグリーンなど、
落ち着いた色目のもの。
傾向として、くすんだようなスモーキーな色合いがトレンドのようです。

デザイン的には、ビンテージやクラシカルなラインが目立ち、
あえて着用感のある効果を演出しているものなども。
また、小紋や幾何学模様などノスタルジックなパターンも打ち出されていたそうです。

肝心なシャツは?というと、
コーデュロイやフランネルなどを使ったサファリぽいものやウェスタン調、
ボタンダウンでアメリカンテイストなもの、
英国調のビンテージなプリント柄やチェック使いのものなど、
全体的にカジュアルスタイルが多い印象だったようです。

見本市には、各社、各ブランドとも、
張り切って、意欲的・挑戦的な打ち出しをしてくるもの。
とはいえ、実際にビジネスベースで売れるものは違っていたりするので、
ブランド側が見せたいものと、バイヤーが見たいものが
しばしば違っていたりすることも。
そんななか、高級ドレスシャツのメッカ、イタリアでも、
「最高峰のマシンメイドドレスシャツ」と称される、
高級シャツブランドの「FRAY(フライ)」のプレゼンテーションは
基本中の基本にして、ごまかしのきかない白いドレスシャツ。
そのプライドに心打たれます。

ピッティのあとはミラノに移動し、
おつきあのある参加ブランドのショールームにおもむいての商談や、
ミラノ界隈のショップでマーケティングを重ねた土井縫工所のスタッフたち。
今回のPITTIでの体験や見聞した次のトレンド傾向は、
今後の製品づくりに反映されていくはずです。

※ 写真は、上2枚がPITTIを訪れた人たちのスナップ。とくにダンディファミリーが圧巻!!
その下からはスタッフたちのスタイルと、街の光景。最後がスタッフ行きつけのリストランテのメニュー。
イタリアはウマイ!!