焼き鳥屋のつぶやき

そろそろ猛暑も越えたか?と思われる今日この頃。
みなさまいかがお過ごしでしょうか?

先日、近所の焼き鳥屋さんの前を通りかかった時のことです。
カウンターだけの小さな店で、店の前に小さなテーブルと椅子が置いてあります。
とはいえイマドキはやりのオープンカフェのような小じゃれたものではなく、
失礼ながら粗大ゴミの日に路上に放置されたテーブルと椅子のほうが、
まだマシじゃないか?と思えるような、そんなレベルのポンコツっぷりです。
しかも、店の前がセットバックしているわけでもないので、
もろ、路上に置かれている状態です。
とはいえ昨今のオープンカフェ効果やお花見文化に慣れ親しんだ国民性もあり、
路上で飲食することへの抵抗はあまりないのかも知れません。
などと思いつつ、ガテン系中年男性2人が飲んでいる真横を通り過ぎようとした瞬間、
ひとりがもうひとりに「フェイスブックやってる?」
とたずねたのには、ちょっと驚きました。
聞かれた男性は「ああ?」と質問の意味を理解していなさそう。
「フェイスブックいいよお、やんなよ、え、じゃあツイッターは?」といったあたりで、
私は彼らの会話が届かない距離まで来てしまったのが残念でなりません。
フェイスブックの何がカレをこんなに魅了しているのか、
そして何をつぶやいているのか、ぜひその全貌をお聞きしたい所でした。
先日、オーストラリアから里帰りした私の友人AちゃんのパートナーDは、
2年前フェイスブックで日本女性と知り合いメル友になったのですが、
その日本女性の家はなんと、Aちゃんの東京の実家のすぐ近所という、
驚愕の事実が判明し全員びっくり。
なんとDは、20年以上前に知り合ったリアルパートナーと、
2年前に知り合ったオンラインのメル友を、同じ町内の住人から引きあてたという、
驚異のピンポイント攻撃にして驚異の命中率を誇るのでした。
地球は広いっていうのに。
で、うちの近所の焼き鳥屋で飲んでるおじさんとも、
いつかDは必ずやフェイスブックで巡り会う日が来るだろうと信じています。

というわけで、インターネットがめざましい進化を遂げたのは、
世紀が変わった頃からでしょうか?
それまではパソコンがある家も限られていました。
’90年代後期まで私が住んでいたマンションの住人は企業のサラリーマン家庭が多く、
そういう家には必須アイテムとしてパソコンがありました。
会社のIT革命に乗り遅れないように、
お父さんたちは涙ぐましい努力をしていたわけです。
でも、まだネットやメールを活用している家庭は少なかったように思います。
2000年を過ぎるとブロードバンドも発達して、
大容量の物が高速で送れるようになり、定額制度が広まったおかげで、
家庭におけるパソコンの役割は急速に拡大して行ったわけです。 
さらに最近は、スマートフォンやタブレットの普及で、
パソコンを使わずにネットにつながるヒトが急増しています。
それ以前から10代の子達のネットはもっぱらケータイ。
スマホどころか、あの小さなケータイの画面で、
ネットにつなげているのだからツワモノです。

そんな今日この頃。
アップルのCEOであるスティーブ・ジョブスが辞任を表明しました。
パソコンといえばウィンドウズが圧倒的ですがマイノリティであるMac派にとって、
アップルの共同創設者のジョブスはカリスマ的存在です。
ジョブスと、マイクロソフト創設者であるビル・ゲイツとは奇しくも同い年。
彼らはまだ大型計算機であったコンピューターに高校生の頃に出会っています。
二人の生育環境は対照的で、かたや裕福な家庭に生まれ育ったお坊ちゃまのゲイツ。
地域で一番授業料が高い高校を経てハーバードへ。
かたや、未婚の母から生まれたジョブス。
父に当たる人はシリア人の政治学者で母親も大学院生だったというから、
頭脳的には恵まれていたのだと思います。
実母は最初から子どもを養子に出す予定で出産し、大卒の里親を捜していたのに、
申し出たジョブス夫妻は高卒と中卒だったので躊躇したとか。
それでも、夫妻が必ず息子を大学に進学させると約束したので養子縁組が成立。
実際、ジョブス夫妻は裕福ではなかったけれど息子をリード大学に進学させました。
でも、彼は大学に進んでから迷います。
決して経済的に余裕があるわけではない両親が、
懸命に貯めてきたお金を授業料に費やしている。
そのことに意味を見出せなくなって、彼は大学をやめてしまうのですが、
やめたあとも大学に通い、
哲学やカリグラフィ(西洋書道)の授業にもぐりこんでいました。
この時に学んだ美しい文字や文字間のあけかたなどが、
のちにマッキントッシュのタイポグラフィーづくりに役立ったのだそうです。
「もし、あの時に大学をやめていなくて、必須科目以外の勉強をする余裕がなく、
カリグラフィーの美しい文字に出会っていなかったら、
マックに美しいフォントが組み込まれることもなかっただろう、
でも、当時はそれがあとになって役立つなんて考えもしなかった。
ワカモノよ、あとになってプラスになる・ならないなんて、今考えることはない、
大事なのは自分のやりたいことを自信を持ってやることだよ、
それがあとになって点と点で結ばれるから」
と彼は、スタンフォード大学の卒業式に招かれた時にスピーチしました。
これは「伝説のスピーチ」といわれています。

ジョブスが画期的だったのは、
それまで特殊な業種のための計算機であったコンピューターを、
誰もがボタンひとつで操作できる家電に仕立てたこと。
さらに、生演奏以外はレコード盤やCD盤という形あるものだった音楽を、
拡張子で通信するものに変えてしまったこと、
さらに、パソコンを封筒に入れてしまったこと(iPad)。
そして、なんと言っても彼の特徴は新製品を発表する時のファッションです。
そんなハレの舞台で、ここぞという大勝負をかける時、
ジョブスの勝負服はいつもTシャツにジーンズ。
でも、iMacの花柄や水玉模様モデルを紹介するために来日した時のジョブスは、
珍しくシャツにネクタイというスーツ姿でした。
そして、アップルを創設した頃の若かりし彼も、
たいがいシャツにジャケットというスタイル。
(しかも超イケメン!)
その後、ふくれあがっていく資産に抵抗するかのように、
Tシャツとジーンズという柔な服に着替えたジョブス。
アップルの基調講演での勇姿をもう見ることができないと思うと寂しい限りです。
以前から悪性腫瘍と闘っていて、ここ数年の彼は痩せて、
燃え尽きたのかとさえ思える体つきでした。
辞任の理由は体調悪化のようです。
これほどの原動力を失って、これからアップルがどうなって行くのか、
Macファンとしては気になって仕方ないといった所です。

ニュースはネットで読み、音楽もネットで聞き、映像もネットで観て、電話はスカイプ。
そんな人たちが増えていて暮らしの道具はどんどん変化しています。
少なくとも、パソコンは今、仕事道具であると同時に、
ほとんどのヒトにとって楽しいオモチャでもあるという、
ひとつで何役も兼ねてしまう機能的な物体です。
これで材料さえ入れれば調理してくれるという家電が登場してパソコンにつながれば
おまけにパソコンがロボット型になって、コノミの性格やルックスが選べるようになれば、
人類は絶滅に向かうんじゃなかろうか、恋愛や結婚がばかばかしくなって。
とか思ったりする晩夏の夜です。

*モデルさんの広告写真?というくらいのイケメンは1984年の若きジョブス。
80年代らしいシルエットのスーツ。案外コンサバ?
ちなみにこのパソコンに似たやつ、うちの事務所にあります。