秋もすっっかり深まってきました。
街を歩けば金木犀の香りが風に乗って漂ってきます。
この香りは、嗅いだとたん、胸の奥の弱い場所をつんと差してくるような、
どこか切ない感じがあります。
陽も短くなり、これから冬に向かおうとする時期のせいでしょうか?
仕事の上ではもはやすっかり冬です。
出版物は一ヶ月以上、時間を先取りなので、
真冬やクリスマスを意識した特集の撮影などが続いています。
先日は、ホテルで過ごすクリスマスというテーマの撮影がありました。
なんと、夜景の美しいホテルでの一泊プランに超豪華ジュエリー付き。
男性から奥さまやパートナーなど大切な方へ、
日頃の感謝を込めてクリスマスの贈り物をしたい、
でも、プレゼントを探している時間や、何を贈ったらいいか、
よくわからない、という方のためにホテル側が超豪華ジュエリーもご用意します、
というプランで、宿泊費はジュエリー込みで平均大卒初任給くらいの金額。
夜景を眺めつつ、ホテルセレクトの豪華ジュエリーを贈られる人生って、
どんな感じでしょう・・・。
その女性の悲喜こもごもを妄想してしまい、軽く小説1本書けそうな気がしました。
撮影スタッフの中に豪華客船の仕事に関わっている方がいて、
その方いわく、客船でのクルージングはつねに人気で、
相変わらず陰りはないとのこと。
そういえば、母のお友達(最近豪邸を新築・超セレブ)が、うちにいらした時に、
日本茶を出したら、その器がものすごくお気に召したらしい。
形はきれいだけれど、粉引きの、なんということはない湯飲み茶碗。
で「これ、どこでお求めになったの?」
と言われたけれど、私はしょっちゅうどこかで、
器を買ってしまう奇病に取り憑かれているので、
どこで買ったものか思い出せない。
銀座和光で、とか言えればカッコいいのだけれど、
多分、どこかのデパートのワゴンか特設会場の陶器市だよな〜としか思い出せない。
私はかなりヘビーな器マニアなので、きちんとした値段の物を買っていては、
とっくに破産しております。
だから、自分流ルールを設けていて、
「ひと目で惚れほどカッコいい、ほかの食器と喧嘩しない、普段使いができる」
の3点をクリアした上で最後の大問題「お求め安い!」をパスしないと、
購入しないことにしている。
高くていいのは当たり前。リーズナブルなプライスでカッコよくて使い勝手がいい。
これです。
で、母のお友達のご婦人は「これ本当に素敵ねえ、こういうの、ずっと欲しかったの。
どこのお店だったか思い出したら教えてくださいね」と、
その器を抱きしめて、熱いまなざしを注ぎながらおしゃったのでした。
その時私は、こうした方々が百貨店の外商の顧客であらせられるのかと思ったり。
いいもの、洒落たものが欲しい、でも、自分でアレコレ発掘して歩くのは苦手。
誰かにおすすめされたい、おいくらでも結構よ、
という富裕層ターゲットの企画が、そういえば最近目立ちます。
撮影は西新宿にあるホテルの42階にある超高級客室で行われました。
一般の客室ではなく、カードキーを持っていないと、
泊まっている部屋のフロアにエレべーターが泊まれないし、
チェックイン・アウトも一般用とは別の専用フロントで行えます。
西新宿という副都心は、1971年の京王プラザホテルのオープンから幕を開けました。
当時、日本一の背高ビルだった同ホテルも、今は全国高層ビルランキングで68位とか。
現在の西新宿は、ハイアットリージェンシー、ヒルトン、パークハイアットなどの
ホテルをはじめ、都庁ビルほかの高層ビルが建ち並ぶ近未来シティ。
約半世紀前までは、このあたりに都民の水瓶、淀橋浄水場があったのでした。
そう、ヨドバシカメラのネーミングはこの淀橋からきているらしいです。
その浄水場が移転した跡地に副都心が計画され、高層ビルが続々と建ち並びました。
相次いで高層ビルがオープンした当時は、右肩上がりのアクティブな未来を、
誰もが思い描いていたはず。
時代の先が見えづらい今、
天を目指して伸びる高層ビル群は、
心なしか巨体をもてあましているように見えます。
昭和のはじめや中期に、小さな町工場だった会社が、
大企業に成長した高度経済成長マジック。
今は逆に、細やかな動きができる所が、
大企業の足元を脅かしているように思います。
こういう時代だからこそ、昭和の熱い志を再燃させて、
目の前の小さなことからコツコツと歩を進めて行く事が大事。キリッ!
などと、靄がかかって見通しの悪い新宿の景色を眺めながら、
思ったものでした。
なので、写真は右肩あがりにして見ました。