いとしのロンドンストライプ

木々に咲く花が次々に目を楽しませてくれるこの季節。
東京は桜が葉桜に変わり、八重桜が美しい時季になりました。
今年はお花見を自粛せよ、いや、その必要はない、なんて言われましたが、
そんな世間の声にはおかまいなく、時季がくれば花は静かに咲き、
春という再生の季節の力強さを教えてくれます。
今年は特に、花の暖かみを感じるというか、
いつにもまして、ココロを癒してくれる気がします。
すべての人たちが、来年の今頃は穏やかに花見の季節を迎えていられますように。

さて、そんな春先。
霞たなびくうららかな日には、
いつも黒や紺系に走りがちな人でも(私もそうです)、
さすがに生成やベージュの淡い色のジャケットが恋しくなるのではないでしょうか。
(私もそうです)。
ベージュのジャケットとくれば、
シャツは爽やかなブルーのロンドンストライプあたりを合わせたくなります。
このロンドンストライプというのは、知的にしてスマート、
しかもストライプの持つ若々しい印象に、
独特の色気が醸しだされると思うのは私だけでしょうか?
というので、超個人的な判断基準ですが、
青系のロンドンストライプシャツは、かなーり男前度がアップすると思います。
しかもこのシャツ、正統派で着こなしても、カジュアルに着こなしても、
同様におしゃれでスマートな感じがする、1点で十分存在感のある、
パワフルアイテムのひとつではないでしょうか?

これまでに記憶に残るロンドンストライプシャツの着こなしといえば。
一人目は、昔、表参道にあった友達のセレクトショップで見かけた男性。
顧客というその人は、ロンドンストライプのシャツにベージュのスーツを着て、
全体的にトラッドな印象のスタイリングでした。
ところがその襟元には、なんと可憐な花柄のネクタイが…。
植物画のようなクラシカルで具象的なタッチで、
バラやアネモネが描かれたネクタイです。
その男性はかなりふくよかなタイプで、一見モード系な体型ではないし、
顔つきもおしゃれ系というより、TKOの木下さん(ボケのほう)的な・・・。
その「木下さん」が植物画ネクタイ効果で、
なんとも味わい深くスタイリッシュな人物に見えたのでした。
彼が出て行ってから友達に「すっごくおしゃれじゃない、あの人? あのネクタイすごい!」
というと「あれは多分古いグッチじゃないかな。あの人ああいうの、パリやミラノ行って見つけてくるんだよね〜。この前はヴィヴィアン(ウエストウッド)のバンビ柄のネクタイしてたよ」とのこと。
ごく正統派のスーツやシャツ+個性派ネクタイ、あるいは個性派カフス。
そんな上級のおしゃれに挑戦してみては?

二人目は、代官山で見かけた青年。
彼はロンドンストライプのシャツに、紺地のリボンタイをしていたのですが、
それが、かわいいモチーフを色々織りこんだチロリアンテープ風のタイなのです。
その上に紺色のロングコート、ロールアップジーンズに茶色のローファーという、
さりげな〜いスタイリングなのですが、
ストライプシャツの知的な世界をチロリアンテープで、
「男のメルヘン」にしてしまった彼のコーディネートもまた忘れられません。

そして最後の一人は、とあるレストランのパーティで見かけた男性。
彼は少々光沢のあるチャコールグレイのスーツに、
ロンドンストライプのシャツという、これまたなにげないコーディネートでした。
ところがネクタイではなく、紺地にワインの水玉模様のシルクスカーフを合わせています。
しかもアスコットタイのように首元で結んでいるのでなく、
シャツの上から大判のスカーフをして前を重ね、その上にジャケットを着た感じ。
スーツの襟にそってスカーフが見えます。
そう、よくコートからマフラーがみえている感じです。
特にイケメンというわけでもない、一見フツーのおじさんなのに、
スカーフのあしらいがフツーじゃなくてカッコイイなと密かに見ていると、
そのうちライブバンドのラテン系な音に合わせて、
一人軽やかに踊りだし、すこぶる踊れるおじさんでびっくり。
やっぱり、男の人の魅力のひとつにギャップというのがありますね。
意外なコーディネート、意外な行動。
女子のハートがキュンとなるのはこんな瞬間です。
ともあれ、寒くもなく暑くもなく、
春はあれこれおしゃれにトライするのに最適な季節です。