デニムな秋

キンモクセイの香りと少し茶色味を帯びた樹木。
季節はめぐり、秋も深まりつつあります。
そろそろ秋冬の新しいアイテムを揃えはじめている人も多いのでは?
長く暑かった夏の間、引き算のコーディネートで落ち着いていた反動のように、
空気が冷え込んで風が冷たくなってくれば、
あれこれ足し算のコーディネートへの期待も高まります。
タイを合わせたシャツスタイルに、カーディガンやジャケット。
スカーフ、マフラー。
ファッションの醍醐味が味わえる秋冬シーズンのはじまりです。

今年の秋冬はアメリカンカジュアルをヨーロピアンで。
そんなスタイリングが新鮮です。
たとえば注目はデニムシャツ。
デニムといえばアメリカンカジュアルのチャンピオンのようなアイテムですが、
昨今、イタリアやフランスといった地域の
世界的ファッショニスタの間で、
着こなしのスパイスとして重要な位置を占めるアイテムです。
シャツにタイ、ジャケットといったスタイリングの場合、
ストライプやギンガムチェックなどと同様、
個性的でスタイリッシュな印象を醸し出せるのがデニムシャツの魅力です。

デニムといえば、ダンガリーとどう違うの?という疑問が浮かびます。
これは織り方の違い。
タテ糸がインディゴ、ヨコ糸に生成を使って綾織りにしたものがデニム。
横糸が生地の裏側に出るので、裏が白っぽく見えるのが特徴です。
ジーンズを裏返して見ると、オモテのインディゴブルーに比べ、
裏は白っぽいですよね。
デニムの語源はフランス語の「セルジュ・ドゥ・ニーム」といわれます。
「ニーム産のサージ生地」という意味なのだそうです。
一方、ダンガリーはタテ糸に生成の糸、ヨコ糸にインディゴ染めの糸を使った綾織物。
語源は、この織物の産地、インドのムンバイにあるダングリという地名なのだそうです。
さらに、ダンガリーより薄くて、よくシャツに用いられるシャンブレーは、
タテ糸にインディゴ糸、ヨコ糸に生成り糸を使った平織物のことです。

ダンガリーのシャツというと、60年代のアメリカのフォークシンガー、
ジェームス・テイラーを思い出します。
彫りの深い知的な風貌とストレートのロングヘア。
アルバムカバーで着ていたダンガリーシャツは、
60年代のファッションアイコンといえます。
当時は自由な精神・若者・青春のシンボルのようだったデニムやダンガリー。
あの頃の若者が、今はその年頃の子どもや孫を持つ年代に。
デニムやダンガリーのシャツも、彼らの成熟とともに、
より洗練されたものに変わって来ました。
でも、やっぱり、どこかに若々しい粋さを備えている。
そんなデニムシャツで、この冬をスタイリングしてみてください。

*写真はジェームス・テイラーのアルバム”Sweet Baby James”