ロックンロール・グランパ

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GWも終わり、また仕事再開です。
仕事の合間や移動中は、もっぱら音楽を聴く派です。
昔ほどつねに「新譜や新人のいいのないかなあ」と
しょっちゅうレコード屋(死語でした。CDショップね)で
探しまくるということはなくなり、
今は昔からのお気に入りを聞くことが多いです。
だって、ロックすれっからしの一人だもん。
もうほとんどの新しさはすでに聴いてるもん、という状況。
とはいえ、昔なじみの人が新しいアルバムを出したといえば、やはり気になります。
でも、昔より色褪せた感がある場合や、
昔より張り切りすぎてる割りに空回り感がある場合など、
がっくりすることも多々あり。
そんな中。
うーん、やっぱりすごい!
というのがデヴィッド・ボウイの新譜でした。
いわずと知れたロックン・ロールヒーローの一人、
その10年ぶりのアルバムが注目を集めています。

彼がブレイクしたのは1970年代初期のこと。
それまでややヒットを何曲か放っていたものの、
「スターマン」というシングルの大ヒットで一躍スーパースターに。
同曲が入った”The Rise And Fall Of ZIGGY STARDUST AND The Spiders From Mars”
というアルバムもヒットしました。
これは宇宙から来た男が”ジギー・スターダスト”と名乗り、
ロックバンドを結成し、若者のヒーローになるけれど、
最後は破滅して自死を遂げるというコンセプトアルバムで、
どこか切ない音と、独特のストーリーを持つ歌詞に魅了される人が続出したのです。
同名のバンドとともに繰り広げるコンサートは、
アルバムの中の世界を再現したような劇的なものでした。
私は72年にロンドンのレインボーシアターで行われたコンサートを見ることができたのですが、
これまでの生涯で見たライブのベスト3のひとつであることは確実です。
リンゼイ・ケンプという、これまた世界的なパンマイムのアーティストやその劇団メンバーが、
神秘的にして扇情的に躍る中で、メイクしたボウイたちがパフォーマンスを展開します。
それは生まれて初めて見る、まさに別世界で、私は劇場の椅子に打ちつけられたようになりました。
なんだか、生の心臓を取りだして見せられているような生々しさを覚えたものです。
その頃私はまだ10代で、少女と言ってもいい年頃。
そんな頃にそうしたものを見ることができたのはとてもラッキーなことでした。
以来、ボウイは私のヒーローになりました。
のちに、ボウイをモデルにしたアメリカ映画「ベルベット・ゴールドマイン」の監督、
トッド・ヘインズが来日した際にインタビューしたのですが、
彼がボウイを特別視している理由は「短髪で登場したこと」でした。
「70年代のロック・ミュージシャンはみんなロングヘアだった。
T-REXのマーク・ボーランも音は革新的だったけど髪は長いままだった」
事実、ボウイも「スパイダース〜」を出すまでは長髪でした。
ところが、スパイダースを出すにあたって、彼は長髪をバッサリ。
短髪をオレンジ色に染め、のちのパンクヘアのように逆立てて登場したのです。
ロックといえば長髪という時代に、短い髪がおったっていて、
しかも化粧してラメの服を着た男は、逆に狂気じみてヤバイ雰囲気でした。
トッド・ヘインズは「そのいさぎよさが時代を切り拓いた」と言いました。
ボウイは、希有なソングライターであると共に、
優秀なプロデューサーでもありました。
自分をどう売り出すかにかけて、天才的な演出力があったのです。
当時、彼は「飛行機は怖いから乗らない。海外でもどこでも船でいく」
ということで知られていました。
初来日した時も横浜港に船で着いたのです。
私も友達と出迎えに行って(若者はヒマです)、
岸壁から船上のボウイを見つけて大感激。
手を振ると振りかえしてくれました。
その話をトッド・ヘインズにしたら、彼はすごくうらやましがってくれたものです。
のちに、ボウイのこの飛行機嫌いは大嘘で、実はエピソード作りの一環と判明。
飛行機、全然平気で、じゃんじゃん乗ってるらしいです。
そういえば、10年ほど前に来日した時も飛行機で来てたしね、多分。

ボウイ・短髪でスターダムへ!以来、40年強。
10年ぶり、御年66歳のボウイが作ったアルバムは、
ベテランミュージシャンの手垢や溜まった脂肪を感じさせません。
新鮮でサラリとしていて、それでいて、まごうことなきボウイ。
継続は力なりといいますが、20代半ばから第一線でスターを張っていて、
60代半ばの今も、こんな音を作れるって、その感覚の鋭さを改めて実感します。
ネットなどに公開されているPVも、いやあ、すごいです。
声高でない新しさがじんわりと、目を覚まさせてくれます。
何から目覚めるかは、人それぞれですが、
トシなんて、取ってる場合じゃないぞとか、
続けること、続けられることこそが才能だ、とか、
まあ、色々、ほどよく目覚める、そんなパワーがあります。
「Where Are We Now? ボウイ」
などで検索してみてください。

現在、ロンドンのヴィクトリア&アルバート・ミュージアムでは
「David Bowie is」と題された一大ボウイ展が開催中です。
(〜8/11まで)
彼はイギリスの有名なミュージシャンの中ではじめて、
日本人デザイナーの服を着た人ですが、
70年代初期に山本寛斎がデザインしたコスチュームも、もちろん展示されています。
3月の開幕時にはテレビ、ラジオ、新聞などがボウイ一色に染まり、
その時ロンドンに行った友人いわく
「猿でもわかるデビッド・ボウイ状態」だったと言います。

http://www.vam.ac.uk/content/exhibitions/david-bowie-is/

一方ローリング・ストーンズはこの夏、50周年記念コンサートを開催するとのこと。
平均年齢68.5歳。
じーちゃんたち、孫の世話してるヒマはありません。
高齢化社会のお手本のような。
老いてなお斬新。
というか、老いも若きもがんばりましょう。

*写真は、
上が10年ぶりの新譜。”The Next Day” 。ジャケットデザインは1977年の自身のアルバム”Heroes”を下敷きにして、四角いスペースでカバーしてあります。さらにアルバム名に二重線を入れて消し、DAVID BOWIEと加筆。過去の”英雄”はもういないよ、次の世界に行くよ、というメッセージなんでしょうか?

下の3枚はすべて、70年代初期のボウイのアルバム。左から”Pin Ups”。1964-67のヒット曲のカバー集。
初期ピンク・フロイドのヒット曲”See Emily Play”など聴き所満載。かなり忠実なカバーです。
ちなみに隣の女性はミニの女王、ツイッギーです。
中央が”ZIGGY STARDUST”。ビートルズのサージェント・ペッパーと並び、ロックの歴史的名盤と言われます。
左は”Aladdin Sane”。ジギー・スターダストの大ヒットのあとにリリースされたもので、
Ziggyのあらゆる濃さと爆発寸前の高まりや切なさというようなものから、肩の力が抜けて洗練された感じ。
(5/8 写真とキャプションを追記しました)
(5/10 曲名が間違っていたので修正しました「Where We Are Now? 」→「Where Are we Now? 」)