ロイヤルなカジュアル

猛暑のはずが一転、今年の夏は例年並みとか。
とはいえ、例年が猛暑なのですから、なんともはや。
ただ、近年では2010年が記録的猛暑だそうで、
そこまでは暑くならないというのが気象庁の予報です。
ともあれ、今年は7月のはじめから蒸し暑くて、
もはや夏バテしている人も多いようなので、
お天道さまどうかお手柔らかに、と祈ってしまいます。

そんなさなか、別の意味でホットだったのがロイヤルベビーの誕生です。
英国はおろか世界中から報道人が集まって大騒ぎでした。
お産の何日か前から「キャサリン妃、そろそろ入院」「陣痛がはじまり入院」
「今、お産の初期段階にある」と連日の報道。
「ああ、今、イキんでるのね」と
世界中に「そのシーン」を想像されているキャサリン妃も
ちょっとお気の毒と思いました。
そして生まれたのは王子、将来のキングでした。
誕生の翌日、ウイリアム王子とキャサリン妃が、
ロイヤルベビーを抱いて初めて国民の前に姿を現しました。
この時、病院玄関に登場した
ウイリアム王子とキャサリン妃の服装が新鮮で印象的でした。
まず、キャサリン妃はブルー地に白の水玉のワンピース。
胸の下あたりでギャザーを寄せたシンプルなデザインです。
ウエディングドレスで有名なジェニー・パッカムに依頼した特注品とのこと。
とはいえデザイン的には特注でなくても、
カジュアルブランドやセレクトショップで探せそうなシンプルなもの。
その場合、生地にもよりますが手が届きやすい値段のはずです。
一方王子はブルーと白の細いストライプのシャツに黒いジーンズ、
こげ茶のバックスキンのスリッポン。
「国民目線の王室」を提唱するウイリアム王子夫妻だけに
いかにもイマドキのヤングカップルというカジュアルスマートなスタイルです。
ではここで、31年前にウィリアム王子が誕生した時、
王子を抱いて出て来たチャールズ皇太子とダイアナ妃の
スタイルを振り返って見ましょう。
場所は今回と同じセント・メリー病院。
ダイアナ妃はグリーン地に細かい白の水玉のワンピース。
30年前の流行を反映して、オーバーサイズかつ膝下丈、
いわゆるミモレ丈のワンピースで、
今見るとやたらユル〜い感じに見えてしまうのは仕方ないかも知れません。
そののちファッションリーダーとしてメキメキ頭角を現したダイアナ妃の、
ちょっと野暮ったいお嬢さんという結婚当初の初々しさを見ることができます。
が、よりそうチャールズ皇太子のスタイルたるや。
ブルーのドレスシャツにレジメンタルタイ、
ネイビーのペンシルストライプのWのスーツにはネイビーのシルクのポケットチーフ。
フル装備ともいうべき、隙のない着こなしです。
いつなんどきもクールビズと無縁のタイドアップ紳士、
それがチャールズ皇太子であります。
そして31年後、初孫であるロイヤルベビーに会うため、
病院を訪れた皇太子のいでたちは?
もちろん淡いブルーのドレスシャツに黒と金のレジメンタルタイ、
細かいグレンチェックのWのスーツにブルー系ストライプのポケットチーフ、
茶色いウイングチップの靴。
これまたダンディーな着こなしで、チャールズコレクションに揺るぎなし。
寄り添うカミラ夫人はフリル状の衿がついたドレッシーな長袖ワンピース。
色が白なので結婚式にはNGとしてもデザインでいえばセミフォーマル。
夫婦揃って親戚の結婚式に参列できるくらいのフォーマル度です。
かたや、お二人に先立って病院に現れたキャサリン妃の両親のスタイルは、
うって変わってカジュアルスマート。
パパはロンドンストライプのシャツに紺のWのブレザー、
白いコットンパンツに茶色いローファー。
これがかなり履きこんであるヤツで、
新品で来ないあたり、逆にかなりのオシャレさんです。
ママはブルーがかったグレー地のシルクワンピース。
ショールカラーで肩にシャーリング、ウエストや腰の辺りはタック止めでタイトに、
胸と腰から下はフレアでゆったりと。
スリムからグラマー体型までカバーできる賢いシルエットのドレスです。
ちょっとクラシカルでフェミニンなフォルムに、
花模様のようなモチーフが散っているのもチャーミング。
中央で結ぶウエストのリボンをキャサリンママは、
ちょっとサイドにずらして結んでいました。
ブランドはオーラ・カイリー(英国のデザイナー)で、日本円にして約5万円。
庶民でも手が届きそうなアイテムです。
両親ともいかにもオシャレな中年夫婦といった印象。
キャサリン妃の両親はパーティーグッズの通販サイトを起こし、
それが大繁盛してひと財産築いた人たちだけに、
人の購買欲を掴むのが上手そうです。
カジュアルな服をスタイリッシュに着こなしてこそ、
一般人消費者の信頼を得られるというもの。
そしてウイリアム王子とキャサリン妃夫妻の両親としては、
Wのスーツとフォーマルテイストなドレスで決めたロイヤル両親より、
こちらの夫婦のほうが、
ファッションコーディネート的には相性バッチリという感じです。
日本でも今や団塊世代がシニア世代に突入し、
VANやJUNのアイビースタイルを経験した人々が、
国内のシニアファッション感覚を底上げしています。
この手のヨーロッパの中年たちとのファッションの差が、
ほとんどなくなってきたと思います。
むしろファッションの差は国や人種ではなく、趣味思考の違いで出るのが、
グローバル時代の特徴かも知れません。
2人のグランマのヘアスタイルの違いには、それが如実に表れているような気がします。
まず、キャサリン妃のママはストレートのミドルレングスで、
前髪は目が隠れる程度の長さを斜めに流しているスタイル。
限りなくナチュラルで、日本でも30〜40代くらいの女性向けファッション雑誌で、
よく見られる髪型です(ちなみにキャサリンママは58歳)。
一方、カミラ夫人は、肩に着かない程度の短い髪を、
顔の輪郭に沿って外巻きに巻いています。
どこかで見たような髪型だと思ったら、ずばり聖子ちゃんカット。
イマドキ、ここまで毛先をクルクル外巻きにカールしている人も珍しい。
近頃ハヤリの巻髪とも違います。
80年代で髪型のセンスが止まっている、日本でいえばさしずめ
片山さつき先生のようなテイストでありましょうか。
かように異なるファッションテイストを持つ
キャサリンママとカミラ夫人に共通するのは、
2人ともバッグと靴がベージュだったことだけ。
まあ、これは洋装における夏場のスタイリングのお約束かと。

未来の英国王「ジョージ・アレクサンダー・ルイ」王子さまは、
さっそくキャサリン妃の実家に両親とともに里帰り。
パパは育児休暇を取っているらしいです。

ところで、誰を見てもスッキリしたシャツを着こなしている英国人男性たちを、
ワイドショーで見ていたらカメラが一転して、
現地で中継する日本人レポーターがアップに。
すると、いきなり「ボタンホールが色違い」とか「前たてが異素材」とか、
小ネタを効かせたシャツをお召しになっている方々が。
とたんに猛暑を感じた夏の午後でした。