今年の春は雨が多かった関東地方。
咲き始めや満開時に花を散らせた風雨もありましたが、
多雨のおかげか新緑はいつにも増してみずみずしく、
チマタの景色を艶々と彩っています。
最近、ショップに行くと、どうもグリーン系の色の服に目が行きます。
やっぱり新緑の心地よさに心惹かれるからでしょうか?
ペパーミントグリーンや若草色、8月頃の強い日差しに鍛えられた葉の色を思わせる、
少し暗いグリーンも魅力的。
Tシャツやタンクトップなどは、グリーンはもちろん、
オレンジや濃いピンクなど、色で冒険できるアイテムです。
デニムシャツの下にグリーンやオレンジのタンクトップを合わせてみる、
あるいは鮮やかなグリーンやブルーの綿麻のスカーフを巻いてみる。
そんなコーディネートを楽しみたい季節です。
ところで、”Elle Decor”というインテリアとデザインの雑誌があります。
ファッション誌”Elle”から分かれ、1987年にパリで創刊、
現在、世界26カ国で出版されているそうです。
エル・デコには毎号、”Style”という特集ページがあり、
海外をメインにこだわりのインテリアを誇る家を紹介しています。
有名なデザイナーの家から、無名の若い一般人の家まで、
こりゃすごいわ、という家しか取材していないので、
毎号それぞれ個性的、目からウロコ的な、
インテリアポイントがあり興味は尽きません。
このページやほかの特集ページの原稿を、
私も時おりお手伝いしているのですが、
今回も原稿を書きながら、ふと、思ったことは。
イタリアの撮影セットデザイナーの男性の家の、
写真データを見ていたときのこと。
彼はイタリア北東部の田園地帯にある古い農家を買い取って、
リフォームして暮らしているのですが、
リビングルームの天井高は、日本家屋にすれば2階半くらいのサイズ。
植物好きな彼は、そのリビングルームの壁面を床から天井までガラス窓にし、
さながらレトロな温室のような部屋で多肉植物やら何やらと暮らしています。
ジャングルのように葉を伸ばす観葉植物の合間をぬって、
イタリアのモダン家具のソファやアームチェアが配置されています。
その中で寛ぐ彼は坊主頭に洗いざらしのデニムのシャツ、ジーンズ、
履き古した白いアディダス(多分)。
ガーデニング中はスエットのフード付きパーカを羽織っています。
まさにうちの近所を歩いている若者10人中8人がこれだろというスタイル。
こうしたファッションやインテリア、新築のビルや民家の外観は、
先進国ではどんどん共通化、グローバル化しています。
でも、新築は無理だから古くて安い家に住みたい!
という場合の住環境になると、欧米と日本はとたんに大きな差が出てしまう。
イタリアだって、みんながみんな、
農家を改造してオシャレな家にできる人ばかりではありません。
でも、古くて天井の高い家がたくさん残っていて、少し改造すれば快適に住める。
日本でいえば、80年代後期から90年代初期に建てられた家やマンションが、
今も数多く残っていて、比較的たやすく入手できる、
代表的な中古物件であるのと同じような現象です。
というわけで、豪邸に住むイタリアのクリエーターと、
ワンルームマンションに住む東京のフリーターが、
坊主頭でTシャツにジーンズ、スエットのパーカにスニーカーという、
全く同じアイテムに身を包んでいる今日この頃。
でも、イタリアのクリエーターのTシャツやパーカはグッチかも知れない、
だったらジャパニーズボーイのTシャツだって、
スーパー2階の衣料品売り場のワゴンセールでなく、
コムデギャルソン オムかも知れない。
それでもかたや200㎡のリノベーションハウス、かたや30㎡のワンルーム。
その違いが大事なんじゃないか?というのが今回の感想でした。
世界中の主たる国で、同じようなTシャツと、
同じようなジーンズを履いて暮らしていても、
異なる住環境に暮らし、異なる食べもので生きている。
それでこそ、各地から異なる文化が生まれる訳で。
じゃなけりゃ、おもしろくないし、
クール・ジャパンの魅力だって失われるし。
と、坊主頭のイタリアのデザイナーの、
まるで日本の男子中学生みたいなスエットパーカに、
地球の文化への思いを馳せた遅い春の午後でした。