デザイナーズ・アジサイ

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現在のヘッダー写真も、この記事の写真も、これ、すべてアジサイです。
同じ種とは思えない、さまざまな形があります。
日本原産ですが、今では世界各地で新しいアジサイが作られているのだとか。
こういう場合、花のデザイナーとかがいて、
ニューデザインをスケッチブックに描いていたりするんでしょうか?
昔、アルファロメオをはじめとする車のデザインで有名なジウジアーロが、
パスタのデザインまで手がけていると知ったときは驚きでした。
ジウジアーロが手がけたのが驚きなのではなく、
あのパスタにデザイナーがいるということが。
言ってみれば、蕎麦やうどんの形にデザイナーがいたというような。
確かにパスタは色々な形があって、うどんに似たスパゲッティは、
単に長細いだけ。
でもショートパスタと呼ばれるものには、
いわゆるマカロニを筆頭に、シェル型や星形、リボン状のもの、螺旋状のもの、
まるでオブジェのように色々あります。
とはいえそういうものをデザイナーがデザインしていたなんて!
シェフや街場の食堂の大将がデュラムセモリナ粉をコネコネしながら、
ああやったりこうやったりして作り上げるものではなかったのでしょうか?
ちなみにジウジアーロデザインのパスタは、
茹でやすく、かつソースがからみやすいんだそうです。
さすがデザナーズパスタ。
そして最近、よく見るのが「デザイナーズマンション」という不動産の広告です。
うちの近所に、有名な建築家の隈研吾さんが設計したマンションがあります。
隈さんにインタビューした時に
「入居してるのはデザイナーとか、クリエーターが多いよ。どう?」
とおすすめされましたが、当然高級なので丁重に辞退しました。
このマンションとか、さらに隣町にある安藤忠雄設計の建築群とか、
この手の建物は確かにデザイナーズマンションなのだろうと思うのですが……。
街に拡散されていく「デザイナーズマンション」は何を持ってしてそう呼ぶの?
「デザイナーズ賃貸」とか「デザイナーズ・リノベーション」とか。
写真を見れば、確かにオシャレっぽいけれど、
イマドキのマンションや新築1戸建なんかみんなこうじゃない?
といいたくなるデザイン。
企画設計とか技術とか知識とかノウハウが蓄積されてきて、
今ではたいがいの設計屋さんなら普通に北欧建築の巨匠が建てた家の、
エコノミー版やあらゆる意味での日本バージョンを作ることができそう。
なので、一億総デザイナーというわけなんですね。
これまで長い間、日本の家はデザイナーでなく大工さんが仕切ってきました。
大工さんもデザインするわけですが、
伝統の工法や様式に則った中でのデザインの応用だったわけです。
が、「デザイナーズ」マンションやハウスは従来の枠を打破したものなんですよ、
というのが不動産業界がひねり出した新しいセールスポイントらしい。
そういえば、今さら誰も服の宣伝で「デザイナーズファッション」とは言わないし、
やっぱり建築の世界のコンセプトなのだと思っていたら、
思い出しました、80年代の終わり頃に世を席巻した「デザイナーズブランド」ブーム。
これまた、なんなの?という名称であります。
すべてのブランドにデザイナーはいるでしょうが。
あれから30年。すでに死語と化しています。
そういえば「デザイナー・フーズ」というのもありました。
こちらは、1990年代、アメリカ国立癌研究所が作った言葉。
『フィトケミカル』という、野菜が持つ力を特定して、
加工食品に加える目的ではじめられた計画で、
がんの予防に効果が期待される野菜約40種類が公開されました。
ちなみにフィトケミカルとは、
動けない野菜や植物が紫外線の害や害虫から身を守るために、
茎や葉に備えている色素や苦味、エグミ、といったもの。
これを人体に摂り込むと、体の中のサビを防いでくれるんだそうです。
なので、これを加えた食品をデザインして生み出そうよという計画でしたが、
なぜか途中で消滅したそうです。
とはいえ、これなんかは「デザイナー」の正しい使い方という気がします。
今後この冠を載せてビジネスに応用できる業態としては、
デザイナーズ・駅の売店、デザイナーズ・トラベル、デザイナーズ・銭湯、
デザイナーズ・八百屋、魚屋、パン屋、引っ越し屋、デザイナーズ郵便局、
デザイナーズ銀行、デザイナーズ神社、デザイナーズ占い師なんかでしょうか?
そう謳っているところがあったら、ちょっとのぞいてみたいです。
でも、デザイナーズ病院だけは行きたくないですね。
世田谷某所にミッドセンチュリーのモダン系名作椅子を揃えた歯医者があって、
見るからに治療費が高そうで逆効果だと思うのですが、
カフェかと見まごうガラス張りの院内はいつも若者でいっぱい。
デザイナーズ患者と呼んであげるべきかも。