テーマパーク的書店の楽しみ

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空は青く新緑は艶々と輝いています。
芽吹いたばかりの新芽や、
生まれで間もない葉はみずみずしくて、
見ているだけで心が洗われる気分。
美しい季節がやってきました。
そして、世はゴールデン・ウィーク。
遠出派の方も近場でのんびり派の方も、
さぞやお楽しみのことと思います。

連休直前のある日、東京郊外にできた「コーチャンフォー」という
複合商業施設に行って来ました。
広〜いワンフロアに、書籍、文具雑貨、音楽映像、カフェの4種が入った、
北海道発の巨大商業施設です。
コーチャンフォーの原名は「Corch&Four=四頭立ての馬車」の意味だそうで、
4つの要素で成り立っている施設であることを示しています。

首都圏初進出の店舗は、京王多摩線の若葉台駅と小田急多摩線のはるひ野駅から徒歩圏。
マンションと戸建住宅の街区のあるニュータウンを歩き、
ほかに高い建物のないエリアに忽然と表れる、
限りなくテーマパーク的なビジュアルのその建物を目の当たりにすると、
もはや心がときめきます。
抜群の吸引力に引き込まれるように中へ。
広い!!
あまりの広さにうっとり。
書籍と文具がこれほどの在庫数で揃っている施設は、
東京ではほかにないかも。
たとえば専門的な医学書とか民俗学、思想関連だけでも、
それぞれ横10メートルくらい続いてそうな勢い。
医学書の通路が10メートルって、ある意味、壮大な無駄の10メートルです。
その無駄さ加減こそがテーマパークなのだわと思ってしまいました。
だって、ミッキーやプーさんに興味のない人にとってディズニーランドって何?
でも、興味のある人にとって、とことん尽くしてくれるのがテーマパークの存在意義です。
「最後の本屋が去年つぶれた、もうこの街に本屋は一軒もない!」
「最後の文房具屋は10年前につぶれた、
ボールペンやノートはスーパーやコンビニの文具コーナーしかない!」
という悲劇の街の住人は、
すぐさまここに駆けつけるべきだと思います。

書店の閉店が相次いで、活字離れが指摘されて久しい状況ですが、
でも、最大手通販のアマゾンなどでは、おもしろい現象が生まれています。
リアル書店全盛の頃は、売れる本が限られていたのに、
アマゾンなどでは突出して売れる本の後ろに、細い売上がしっぽのように延々と長く続くそうです。
その恐竜のしっぽ的に長く続く本たちは、数年に1〜2冊しか売れないものもあるかもしれない。
それでも、アマゾンには在庫があるので、それを検索した誰かが注文する。
一般の書店では注文してから1週間から10日かかっていたものが、
翌日には届く。
そのおかげで、それまで陽の目を見なかった本も誰かの手に渡る。
その便利さと在庫の豊富さという黒船に国内の書店は見事やられてしまったんですね。
アマゾンの功罪といえるかもしれませんが、コーチャンフォーのようなお店に来ると、
アマゾンの倉庫がリアルショップになったような興奮を覚えます。
文具や雑貨も同様。
クレール・フォンテーヌというフランスの文具は、
スタイリッシュなノート類で知られていますが、
これまで日本の有名な文房具屋さん、たとえば伊東屋などでも、
入っている種類は限られていました。
それが、これまで国内では見たこともないようなラインアップがズラリ。
何から何まで刺激的なショップ展開です。
モノが溢れて、今や、お仕着せではあきたらない消費者たち。
ていねいな造りのものや、ハンドメイド的なもの、
ほかにはあまりないものを欲しがるご時世です。
”書店テーマパーク”(的希少価値)というコンセプト自体、
やたらとあるわけでなく、なんとも魅力的です。
ところで、ショッピングセンターや百貨店に入っている大きな本屋さんは、
いつでもお客さんでいっぱい。
そのうち実際に買う人は半数以下だとしても、
レジだっていつもたいがい行列で、夜のコンビ二のレジくらい混んでいます。
それで本や雑誌が売れないって。不思議ですね。
基本、本屋さんはなんとなく行ってみたくなる、
テーマパークでありお祭り広場なのかもしれません。