ハンドメイドの幸せ

まだまだ残暑が厳しいものの、
夕暮れの早さに秋を感じます。
夏休みが終われば、秋の夜長がはじまりますね。

最近、ホテルのブライダル担当の方に取材することがあったのですが、
昨今の結婚式のトレンドは手作り感ということらしいです。
かつて、ホテルでの結婚式といえば、
広いバンケットルームに新郎新婦が座る、一段高いメインテーブルがあり、
ゲストが座る円卓や長テーブルが配置されていました。
親戚や恩師、会社の上司や同僚、友人たちの来賓の挨拶が続き、
ケーキカットにキャンドルサービス、というのが定番でした。
余興といえば友人のコーラスかギター演奏、手品くらい。
私は友人の結婚式で、
司会が往年の人気グループサウンズのボーカルだったことがあり、
「♪おまえのすべて〜」という大ヒット曲を生で聞けた時は、
ちょっと感動しましたが。
バブルの頃はかなり大仕掛になった余興やショーアップが、、
90年代に入ると次第に沈静化し、
中期からのウエディングはおしゃれなカフェやレストランで、
クールに催す地味婚がトレンドになってきました。
あるいは都会や高原にあるロマンティックなウエディング系教会や専門施設で、
別世界感満載な式をあげるとか。
一生に一度(の予定)のことですから、
新郎新婦(特に新婦さん)の壮大なドリームの実現でいいと思うのですが。
で、最近のトレンドはホテルでなく、
一軒家感覚のレストランやゲストハウスであげたいという意識があるらしく、
ホテル側も戸建感覚の式場を新設したり企業努力を重ねているようです。
私が取材したところでは「一軒家風のアイアンゲート」
「ゲストをお出迎えできるエントランスホール」
などがセールスポイントになっていました。
そして、ゲストとより親密な時間がもてるように、
余興は減る傾向にあり、
新郎新婦やゲスト間のトークタイムが多く設けられるのが時流だとか。
さらに、ウェディングの大切なポイントであるケーキも
新婦または新郎新婦による手作り、というのが増えているんだそうです。
さすがにケーキはパティシエにお任せして、
ヴィジュアル効果やおいしさを保証したというカップルでも、
手作りマカロンなど、一品手作りを加えて、しかも、
新郎新婦でそれをゲストたちに手渡しするのが今風とのこと。
引き出物にしても、新婦のお兄さまが焼いた器や、
新郎のお母さまが織った麻のテーブルナプキン、などというのが登場したり
ウエルカムボードをカップルの家族が手作りするのはもはや定番とか。
当人たちどころか、家族もうかうかしてはいられません。
そして、極めつけは、新婦のブーケを新郎が手作りするというのが、
最近人気の企画なのだとか。
その際、新郎のタキシードの襟につけるブートニアもペアで作るのだそうです。
なんか、ぶっとい指でブーケやブートニアを作っている新郎の姿を思い浮かべると、
微笑ましくも、もはや新婚家庭のパワーバランスが思い浮かぶ気がします。
中には新婦のドレスを手作りしちゃったという強者もいるようです。
(デザイナーとかでなく、普通のサラリーマンだったらしいです)
とにかく、家族や友人の絆をさらに強める、
というのが昨今のウェディングのキーワードのようですが、
どんなスタイルになっても「新婦一人勝ち」という状況は変わらないかも。

ともあれ、フォーマルなシーンで襟に花を飾る場合、
コサージュっぽく作りこんだものより、
みずみずしさを生かした生花をシンプルに飾るというのが、
よりスタイリッシュな気がします。

ヒーローの制服

真夏の祭典がはじまりました。
開会式のショーはミニ映像からはじまりましたが、
これからしてまさにイギリスっぽさムンムン。
カメラが水中や地上、上空やテムズすれすれに疾走し、
イーストロンドンにあるオリンピックスタジアムめざします。
途中、テムズ川の建物の上にピンクの豚
(ピンク・フロイドのアルバムカバーのモチーフ)が浮かんでいたり
Sex Pistolsの”God save The Queen”が一瞬かかったり。
UKサウンド好きならニヤニヤしてしまう趣向でした。
そしてショーはまず、古き佳き田園風景から幕を開け、
馬車に乗った山高帽の紳士たちが現れると煙突が登場して時代は産業革命へ。
中でも牽引役を担った製鉄業を表すような金色の輪が上空に浮上して、
それが5つ組み合わされて、第1回目の近代オリンピック開会を表現。
そう、イギリスは近代オリンピックが生まれた国なのです。
さらに「不思議の国のアリス」から「メリー・ポピンズ」「ハリーポッター」まで、
ファンタジーの生産国ならではの、有名キャラ総出演の幻想的シーンを経て、
歴史の舞台を現代に移し、モッズやグラムロック、パンクが登場。
一番印象的だったのは、鳩のシーンでした。
オリンピックでは平和のシンボルである鳩を使った演出がお約束らしいのですが、
今回は本物ではなく、ナイロン製の鳩の羽根を背負った男達が、
ビートルズの”Come Together”とともに自転車に乗って登場。
これがよくできていて、羽ばたきがとても自然でした。
照明を落とした会場を一周する自転車鳩たちの羽根は、
青白くサイバー系の光りを放っていて、幻想的で美しい光景でした。
その中の一羽が空中高く飛び立って行って、頭上を移動していく。
というショーは、ロス五輪の時のジェット噴射飛行男や、
ソウル五輪の時の電動聖火台のような、
ハイテクを駆使して未来感を出す手法はとっていないのに、
ある意味、とっても未来的でした。
ド派手な盛り上がりやスター制度はなくて、
あくまでもみんなでいっしょに楽しもうというスタンス。
選手団入場の際に先導する役の女性が、
大勢の顔がプリントされたかわいいワンピースを着ていて、
各国選手の顔なのかと思っていたら、なんと、
今大会のボランティアのオーディションを受けた人たちの顔なのだそうです。
服の後ろにはその人達の後ろ姿。
さらに、栄えある聖火の最終ランナーは7人!
しかも、まだ実績はなく将来性だけたっぷりな10代の選手たち。
聖火台も高所にあるシンボリックなものではなく、
参加各国を表す銅でできた204個もの器に点灯する仕掛け。
その器が次々に聖なる炎をあげて空中に上がり、
やがてひとつの大きな聖火になる、という「One World 」的な演出でした。
そういう意味で未来的な提案に満ちたショーだったと思います。

そして、開会式といえば、気になるのが各国選手団のユニフォームです。
ユニフォームは大別して3パターンあります。
スーツ系、伝統衣裳系、スポーツウェア系です。
やっぱり一番興味があるのはスーツ系。
今回、事前に話題になっていたのがアメリカでした。
ラルフ・ローレンがデザインしたものが帽子から服、
靴にいたるまですべて中国製だったというので物議を醸したのです。
とはいえ、紺色のWブレストのブレザーにラウンドカラーの白シャツ、
紺地に赤ラインのレジメンタルタイ、白ズボン、紺のベレーで、
胸に有名なロゴマーク入り(この広告はいいのか?と思いました)。
ともあれ、ラルフ・ローレンらしいきっちり系スタイリッシュなものでした。
そして今年はフランス勢のユニフォームがちょっと大人しげ
(シルエット的に地味な紺ブレ、白シャツ、白ズボン、青タイ。
パンツがタイト気味でフィットしているのが唯一の特徴でしょうか?
ちなみに馬術のユニフォームはエルメスなんだそうです)
だったせいか(?)イタリア勢のユニフォームがやたらカッコよかったという印象。
デザインはアルマーニ。
男性は紺色のスーツにサックスのシャツ、紺系のレジメンタルタイ、
イタリア国旗をチーフ代わりに胸に挿している選手もいました。
女性はタイとお揃いの柄のスカーフというのが粋でしたね。
で、開催国イギリスの選手団のユニフォームは?というと、
デザインはステラ・マッカートニー(ちなみに親子異種競演)。
アイテムは白いジャージ上下。
トップスの襟は金色で、男性群はハーフパンツ仕様でした。
スーツ系ではなくスポーツウエアで入場したのは、
ステラがアディダスの契約デザイナーであり、
英国選手団の競技用ウエアもアディダスが担当しているせいかも知れません。
そんな英国勢はデヴィッド・ボウイの”Heroes”とともに入場。
「We can be heroes just for one day”という歌詞が、
今回のオリンピックのココロを象徴しているような気がしました。
誰もがヒーローになりえる・・・。
それにしても、オリンピックにデヴィッド・ボウイやピストルズが流れるなんて、
東京オリンピックの時代に予想できたでしょうか?
当時は三波春夫のオリンピック音頭っすよ?
スポーツとロックなんて全く次元の違う世界でした。
今、世界は縮まったとしみじみ思います。
国やジャンルを超えて、同じ思いを共有する人達が、同じ言語を話している、
そんな気がします。
さあ、そして、肝心の日本人選手団のユニフォームは?
・・・あれ?、これ、東京オリンピックの時のじゃないですよね?
という感じでした・・・。

真夏の祭典まじか

あと1週間でロンドン・オリンピックが開幕します。
オリンピックといえば、競技以外にも楽しみなのが開会式イベントです。
直近では北京オリンピックも、いろいろ楽しませてくれました。
最初の花火はCGだったとか、独唱した少女の歌は別人だったとか、
さすが中国!終わったあともぬかりなく話題を提供してくれたものです。
多分、ロンドンオリンピックでは、
CG花火や歌声すり替えなどのフェイク&キッチュな方式は取らず、
ものすごくエコか、
演劇文化の熟した英国ならではの劇場型仕掛けのどちらかだろうと、
予想していました。
ロンドンオリンピック開会式の演出を担当するのは、
『スラムドッグ$ミリオネア』で有名なダニー・ボイル監督。
とはいえ私には『トレインスポッティング』の方が、
この監督作品として馴染み深いです。
ユアン・マクレガーがまだオビ=ワン・ケノービ(スター・ウォーズ)になる前の、
まだ駆け出しだった頃に主演したファンキーな映画で、
音はイギー・ポップだし全編疾走感あふれるものでした。
で、そんな監督の演出による開会式プランが6月に発表されたのですが、
「かつての英国の牧歌的な雰囲気を再現する計画」とのこと。
会場の競技場に本物の土と草を運び込んで埋め尽くし牧草地を再現。
そこに馬12頭、鶏10羽、ガチョウ9羽、羊70頭の家畜を投入し、
草原では「家族」がピクニックを楽しんだり、
歌ったり踊ったりするんだそうです。
という演出で、古き佳き英国の田園風景を再現するんだそうです。
この計画が発表されるや
「動物虐待だ!動物を開会式の大混乱にさらすことになる、
動物たちの恐怖を考えてみなさい、とくに羊はどれほど怖がるか!」と
動物愛護団体などから猛反対の嵐だそうで「とくに」と名指しされた羊は、
すでに大混乱しているのではないでしょうか。
さらにこの会場には巨大な雲をワイヤーで設置し、
当日、イギリスの雰囲気を象徴する雨が降らなかった場合、
その雲から人工の雨を降らせる計画なのだそうです。
選手たちは、小川あり畑ありの田園地帯を歩くことになるのだそうで、
なんという農村テーマパーク的開会式! 楽しみ過ぎる!
とまあ、今回の演出は「牧草地」という部分はエコで
「競技場に再現+人工雨」という所が極めて劇場的で、
予想2種のミックスマッチでありました。

そんなロンドン、4月から長雨が続いていて、
しかも20年ぶりの冷夏なのだそうです。
7月に入っても日本の11月初旬の気温なんだそう。
いくら英国名物の雨といっても、ロンドンの雨はさっと降ってさっと止む。
それが晴れた青空のもと、一日になんども繰り返されることもあり、
そして日本のような大粒の雨でなく霧雨なので、
まず、誰も傘をささない。
英国人が傘をささない理由は、そのほかに、傘そのものにもあると言われます。
その昔、英国紳士といえば山高帽にステッキ代わりの傘。
杖代わりなので、限りなく細く巻くことが求められ、
かつては「傘巻屋」という商売まであったそうで、そこに頼めば、
それこそ職人的な細さと見事な巻加減で仕上げてくれたのだそうです。
とはいえ、巻代が取られるわけで、そこは無駄を嫌う英国紳士、
ちょっとくらいの雨ではささなくなり、
それが風潮として広まったのではないかと言われます。
とはいえ、やっぱり日本のような雨では、傘をささないわけにはいかない。
英国の霧雨ならではの「濡れていこう」主義だったと思います。

というわけで、オリンピック開会式には人工でなく、
リアルな雨が降り注ぐ様子が見られるかも知れません。
いっせいに傘をさしているのは、
きっと国外からの応援団や観客の方々かも。

ちなみに、英国のロイヤルファミリーの方々は、
雨の日には透明のビニールの傘を携えて登場します。
といってもモチロン、コンビニ傘ではなく、特別注文のロイヤル仕様。
通常の傘のように平たくなくて、深いお椀を逆さにしたような形で、
すっぽりかぶってさしてもお顔がよく見えるようにという配慮からなのだそうです。
傘の縁はカラーテープで縁取りされていて、
女王陛下などは服の色や帽子の色と、傘の縁取りの色を
しっかりカラーコーディネートしていて、とてもおしゃれです。

雨の日が楽しみになりそうな傘を探してみるのもいいですね。

弊社のiPad

ここ数日過ごしやすい日が続いていますが、
今夏の長期予報は猛暑らしい。
今からげんなりしています。
ヨーロッパや北欧の人達は夏になると、一般庶民でも長い夏休みを取ります。
しかも、そんなに暑くない地域の人達。
さほど暑くない都会からさほど暑くない海辺や高原へ。
なんで? と思いますね。
日本のほとんどの地域は猛暑に見舞われ、
埼玉県熊谷市なんて日本一暑い街としてブレイクしてしまったほど。
なんといっても40度超えで、放っておいてもお風呂が沸きそうです。
でも、熊谷市民の方々のほとんどは、
長期バカンスをとって海辺で過ごしたり、
山荘で凉をとったりはしていないはず(してたらごめんなさい)。
なんで? と思いますね。
なんでヨーロッパや北欧の人達は、そんなに暑くないのに
長期バカンスに出かけ、日本の人々はこんなに暑いのに、
いいとこ1週間弱のお盆休みしかとらず働き続けるのか?
まあ、日本人は勤勉という一言なのでしょうが。
このまま温暖化が続き、日本の夏がもっと暑くなったら?
労働環境は変わって来るでしょうし、経済にも影響が出るでしょうし、
長期休暇という制度が生まれるかも知れません。

そんな日本ですが、都心のビジネスシーンはクールビズのおかげで
ずいぶん景色が変わって来ています。
スーツにネクタイではなく、シャツにノータイになっているのはもちろん、
中にはTシャツにハーフパンツにスニーカーやクロッグという、
「これからプールですか?」というスタイルの人も多い。
広告代理店やデザイン制作会社などのクリエイティブ系の人達は、
元からカジュアルなスタイルでしたが、
それでもクライアントとの打ち合わせなどビジネスシーンでは、
コットンやリネンのジャケットにシャツくらいは着ていました。
最近はもう一気にTシャツやポロシャツにハーフパンツ派が増えていて、
全員がかの有名な”ハイパーメディアクリエーター”の方に見えます。
で、そういう人は、しばしば小脇にiPad。一時のシステム手帳の代わりですね。
先日も、広告代理店で私が打ち合わせしている隣のブースに、
ポロシャツ・短パン・iPad青年が入っていくのが見えました。
で、先客に挨拶しているのですが、スーパーカジュアルなそのスタイルにして、
スーパー腰が低い&営業トークなのです。
「先日はどうも、大変お世話になりまして。いえ、とんでもございません、
弊社の何々が〜、御社の誰それ様が〜」という具合。
なんか、休日の海かプールで仕事先の人に出会ってしまったサラリーマンという感じ。
で、素足にクロッグで毛ずねまで見えているのに
「弊社は」はないだろう、と。ほほえましい限りでした。
どうも日本人はすることが極端な人種なのかも。
で、デパートなどに行くと、一応男性社員の方々は、
みなさんドレスシャツを着用していらっしゃるのですが、
最も多いのが「生地の色と、ボタンホールの色がちがう」。
あれ、去年も書いたけれど、やっぱり今年も居心地悪い。
何が原因かというと、やっぱりどうも、ごまかしっぽい部分でしょうね。
女子のアイテムでいうと、あれです、クラシカルな花模様の使い方。
そう、ヨーロッパの昔の家の壁紙みたいな、
リアルなタッチの花模様が今トレンドなのですが。
これは大昔のテキスタイルなので、生地は綿や麻、シルクなど天然素材であるべき。
それが基本、つまりそのアイテムにおける真理です。
ああそれなのに、チープなショップに並ぶチープなアイテムの中には、
テロテロな化学繊維にそのクラシカルな花模様がプリントされている。
しかも、中には織模様のある素材にプリントされている悲痛な花模様まで。
こういうのに限ってフリルのミニスカートに仕立てられているのですが、
そういうアイテムを見た時の居心地悪さ。
と同様のものを、あの手のシャツに感じるのですが、共通しているのは「ごまかし」。
服のカッコよさを左右するのは、アイテムごとの真理が守られているかどうか、
それにつきますね。
と、暑苦しい夏をさらに暑苦しくしてしまったような・・・。
次回は涼しげな話をお届けできますよう弊社も最善を尽くします。

スーパー・クールビズ発動

またクールビズの季節がやってきました。
しかも今年は”スーパー・クールビズ”にバージョンアップしています。
来年はハイパー・クールビズ、再来年はメガ・クールビズとかね。
ともあれ、何がスーパーかというと、「上着なし、ノーネクタイ」が去年まで。
今年からはさらに、「もっと軽装でいっちゃってください!」というスタンスだそうで、
柄シャツとか、かりゆしウェア、アロハでもOKなんだそうです。
さっそく環境省にニュースカメラが入り、
色鮮やかなアロハをお召しの方などを写していました。
さすがに環境省では短パンはNGらしいのですが、
スポーツ用品の会社などはここぞとばかり、
ハイテク素材のTシャツや七分丈パンツにスポーツサンダルなど、
自社のスポーツウェアに身を包んでいるご様子。

一方、6月1日の閣議では野田首相を筆頭に閣僚が全員、かりゆしウェアを着用。
かりゆしウェアは沖縄の夏服で、アロハ調のシャツ。
一応沖縄にまつわるモチーフを入れたものが、かりゆしウェアの定義とのこと。
シーサーとか、ハイビスカスとか、でしょうか?
ゴーヤーとなるとかなりポップアート的なシャツになりそう。
毎年6月頭の閣議において、
閣僚はかりゆしウェア着用が慣わしになっているんだそうです。
ちなみに「かりゆし」とは沖縄の言葉で「めでたい」という意味だそうで、
とてもおめでたい服なのですね。

クールビズも経験を積み、二極化しているなと感じます。
政府は率先して柄シャツOKなカジュアルクールビズを推進。
節電で熱中症になる人が続出しては、これまた政府の責任が問われるわけで、
「ここはもう、アロハでもハーフパンツでもなんでもいっちゃって」と、
節電時のファッション無礼講はエスカレートしています。

その一方、「やっぱりウチはアロハはNGだわ」という企業や部署のための、
よりフォーマルに見えるクールビズウェアが開発されています。
土井縫工所でも大好評のカノコ素材のシャツをはじめ、
ジャケットに合わせてもしっくりくるポロシャツとか。
吸水性がよく速乾の素材を使ったジャケットやパンツとか。

とにかく、この湿気たっぷり、かつ、ここ数年インドより暑い日本で、
冷房を抑えて涼しい顔で働くための様々な工夫が、
あちこちから提案されています。
冷感シートのような素材で作った服とか、
扇風機付きのシャツとか。
これ、本当にミニサイズの扇風機がシャツの後ろについている、その名も空調服。
生地を10cm角くらいの正方形に切り取って、
その部分にミニ扇風機がはめ込んである図を想像していただきたい。
扇風機の表面は格子になっています。
アイデアは素晴らしいと思うのですが、デザインがダイレクト過ぎて、
これはある意味、アロハより勇気が必要かと思われます。

来年や再来年にはミニクーラーをはめ込んだ、
『冷房服』が登場しているかも知れません。
ともあれ、南向きで東西の隣が月極駐車場で、さえぎるもののない我が家。
真夏の暑さはムンバイレベルです。
なので、冷房服の登場を待ちわびています。

リバーサイド・ホリデイ


GWも今日で終わり。
今年は大雨にたたられたり、晴れ間に恵まれない連休でしたが、
みなさま、充分リフレッシュされましたでしょうか?
事前のアンケートではネットでも大新聞の調査でも、
半数以上が「家にこもる」とか「特に予定なし」と答えていました。
じゃあ、あの連休恒例のニュースネタ、
空港での出国ラッシュとか新幹線満杯とか、
東名高速40km渋滞とか、
ああした光景を繰り広げているのはあとの半数以下、
もはやマイノリティの方々だったわけですね。
GWといえば国民こぞってレジャーや帰省にいそしむのがならわし、
その結果、列島中を民族が大移動するという、
ニッポンの風習がまたひとつすたれたとすると、
それはそれで寂しいような・・・・。

せっかくの連休に家にいる、特に出かける予定なしという理由は、
不景気というのもあるでしょうが、
とにかくどこに行っても行列だの混雑は目に見えているわけで、
そんな思いをするくらいなら、
せっかくの休みくらいのんびりしたいと。
でも小さな子がいる家はそういうわけにも行きません。
小学生くらいまでは思い出作りのためにもレジャーや、
子連れでの帰省もやむなしというご家庭が多いと思います。
で、最近はとにかく少子化で、年々子どもが減っている。
その結果、GWの民族大移動も減っているのでは?
なんてことを考えつつ、連休中のある晴れた午後、
多摩川に行って見ました。
川辺は大繁盛です。
バーベキューのおいしそうな匂いがただよう中、
ほとんどのグループが椅子を持ち込み、
ゆったり呑んだり食べたり語り合ったり。
簡易なスツール的椅子のグループもいれば、
デッキチェアでくつろぐ中年男女グループも。
あちこちで「川辺のリビングルーム」状態が生まれています。
キャンプ用のテントをはって中で寝ている人もいます。
すぐ近所の川岸では廃材とブルーシートで小屋を作り、
四季を通じてそこに寝泊まりしている方々もいるので、
その人たちにとっては「この時期はよそ者がうぜーな」というような感じでしょうか。
川辺で語り合う人、本を読む人、音楽を聴く人、憩うカップル、
ひたすら寝る人、ひたすら川の流れを見つめる人、
川岸を歩く人、ロードバイクで走る人、ママチャリで走る人、生身で走る人、
トランペットを吹く人。
思い思いの連休を過ごしています。
川辺に座ってのんびりしている人たちは、
とにかく心の底から脱力している感じに見えます。
中でも極めつけは初老のマダム3人組。
川岸の大きな木陰の草むらに3人で座って、
おしゃべりに夢中です。
そして彼女たちの足元には、3匹の犬たちが並んで寝ています。
ゴールデンレトリバーと毛足の長い中型犬とボストンテリアの3匹が、
ジグソーパズルみたいにぴっちり隣合って寝ているのです。
それはもうひとつのメルヘンのような光景でした。
そんな川辺では、25度という気温も手伝って、
男性は老いも若きもショートパンツ率90% 。
その中で、一人のおじさまがやたら違和感を醸し出していました。
原因はショートパンツに合わせたソックス。
このソックスがやたらきちんとしていて、ぴったりめ。
なのでふくらはぎのやや下までしっかり伸ばされている。
だから一応スニーカーを履いているのに、
なんとなく革靴に見えてしまう。
ショートパンツに背広用のソックス&革靴を合わせているような、
なんともオマヌケかつ、しょぼい感じになってしまっているのです。
短いパンツには裸足か、
せめてくるぶしまでのソックス着用で、
リラックスしていただくことをおすすめします。

写真は、川辺で憩う方々。
前日の大雨で増水し流れも急でした。

花咲くおじさん


桜前線も北上し、今頃は東北あたりで満開を迎えている頃でしょうか?
1年に一度、街の景色を一変させてしまうほど、
桜には特別なチカラがあるような気がします。
私は特にソメイヨシノが好きです。
ヤマザクラなどと違って、葉より先に花が咲くこの種は、
すっかり葉の落ちた裸の枝から、いきなり蕾がふくらみ、花を咲かせます。
で、樹齢の高いソメイヨシノの巨木は色も黒々としていて、
ゴツゴツして男性的な、限りなくおじさんぽい木です。
その色黒でゴツゴツした巨木や老木が、
いきなり薄桃色の可憐な花で覆われてしまうのですから、
なんだか桜自身も照れくさそうにしている気がしてなりません。
ともあれ、春は再生の季節。
新入学や新入社、進学などの時期に合わせているかのように、
そう、新シーズンのスタートを絵で示すかのように、桜が咲き誇る。
本当によく出来ていますよね。

そんな昨今。街にはピカピカのいちねんせいが溢れています。
先日、カフェで打ち合わせをしていたら、
店の前の歩道の植え込みで何かが動くのが見えました。
なんだか、黄色っぽい動物です。
アヒル? 目を凝らして見ていると、
その動物が植え込みの奥で立ち上がりました。
その正体はランドセルを背負った小学生の男の子でした。
ランドセルの黄色いカバーは1年生の証拠。
その子は学校からの帰り道、ふと植え込みの中が気になって、
奥に入り込んで遊んでいたようです。
今の都心では幼稚園までは親が、
園や習い事、友人宅への送迎をするという暗黙のルールがあるので、
彼は今、生まれてはじめての一人歩きという自由を謳歌している時期なのでしょう。
そのフラフラした足取りに思わず、車に気を付けて帰るんだよと
心の中で声を掛けました。

その後、牛丼屋の前を通りかかると、
今度は男子中学生グループが店の入り口でワイワイやっています。
「まず、食券買うんだろ?」
「あ、そうだそうだ」
これまた新1年生のようで、牛丼屋の使い方から勉強です。
これまでの人生で、親といっしょに牛丼屋に入ったことのない子もいるでしょうし、
小学生の時より、世界はずっと広がります。
まず食券を買うことを知っている子もいれば、知らない子もいて。
植え込みで遊んでいた子も、6年後にはこうなるんだなとほほえましく思いました。
そして、繁華街は新歓の飲み会に繰り出す大学生や、新入社員たちが目立ちます。
最近、感心するのは、新入社員らしき青年がオシャレになっていること。
この時期というと、ひと昔前までは、
浮いた襟元とか長い袖とか、背中にあっていないジャケットとか、
どこで買ったんだ?と思うようなチープ感漂うネクタイとか、
そんなスーツ姿の人材によく会いましたが、
最近はあまり見かけません。
みんなそれなりに決まっています。
女性も、コートやスーツ、バッグから靴まで、
あきらかに就活生チョイスのアイテムだよなと思う子でも、
OLやって早3年、くらい貫禄ある着こなしが多い。
カジュアルウエアでオシャレをしていれば、
スーツの選び方や着こなしにも、
それなりのショップやアイテムを選べるようになるだろうし、
服に対する全体意識が底上げされているのだと思います。

そういえば最近は「スーツ」「私服」という分け方なんですね。
「制服」「私服」ならわかるけど、
スーツだって自分の服なら私服じゃない?と思うわけですが。
学生や若い人たちにとって、スーツは制服という感覚なのでしょうか?

ともあれ、就活という戦いを勝ち抜いて見事採用となり、
社会の制服に身を包んだ新入社員の方達。
けれど入社はゴールではなく、ここからが新しい挑戦のはじまり。
どんな仕事も大なり小なり、プレゼンテーションが必須ですし、
これを勝ち抜くには万全を期すことが大切。
もちろん、見た目=ファッションだって重要なポイントです。
誠実で真摯、上品な印象と力量の深さを相手にさりげなく伝え、
信頼感を勝ち取る、そんな目的に効果的なドレスシャツの中から、
土井縫工所が「これぞ!」というものをセレクトしました。
誠実さを表す白はもちろん、洒脱なロンドンストライプもおすすめ。
特集ページが別途、本サイトで公開されますので、乞ご期待。
 
*写真は、花咲くおじさん。

ベンチャーな振り幅

ベンチャー青年-2

先日、ナチュラル志向のハンバーガーショップに取材に行きました。
ハンバーガーといえば、物にもよりますが、
ハイカロリーで半ばジャンク・フードな印象。
ところが昨今の健康志向ブームの波はご多分に漏れず、
ハンバーガーにも押し寄せています。
ヘルシーなバーガーを!!
というならいっそハンバーガーではなく別の物を食べればいいと思うのですが、
やっぱりハンバーガーも食べたい。
そこで野菜をたっぷりプラスしたり、
パティを肉ではなく野菜やお豆腐にしたり、
涙ぐましい努力を重ねているショップもあります。
先日取材したそのお店でも、
野菜のみを使ったパティにたっぷりの生野菜をはさんで
「これひとつで一日分に必要な野菜が摂取できる」という、
保健所推薦のようなオリジナルハンバーガーを生み出していました。
パティの部分は野菜のつくね状態。
試食するとまさに「ワタシ、今、めっちゃ野菜食べてるわ」
という感覚が口から全身に行き渡ります。
比較的野菜ずきで青臭さもウェルカム、
生野菜もドレッシングなしで全然OKというヒト(ワタシはそうです)
以外は、ちょっと野菜臭に負けそうになったり、
「俺はキリギリスじゃねえ!!」とお思いになるかも知れません。
ともあれ、女性にはかなり人気だろうなという、
ヘルシー&ナチュラルなメニューを展開しているそのショップ、
社長もまだ20代後半という若〜いベンチャー企業の経営です。
お話をうかがったのは管理栄養士の資格を持ちメニューの考案もするという、
若き店長さんですが、その内容はさておき。
この店長のその日のいでたちに、ワタシは興味津々でした。
爽やかな淡いピンクのボタンダウンシャツ、襟元はあけ気味、
短めの髪のトップは立ち気味という、
ベンチャーやIT企業系の方々に多いスタイル。
タイトで丈が短めのジャケットとパンツに、
造りがしっかりした革のトートバッグ。
これも必須アイテムです。
間違っても布製のヨレッとしたエコ系トートは持っていません。
で、何がそれほど私の視線を釘付けにしてくれたかというと、
店長のジャケットの襟元に挿したクリスタルのラペルピンでした。
これが直径2cm強の球体で、
超ミニサイズのミラーボールを挿しているくらいの存在感。
いっそ風水か何かで浄化作用を狙ったアクセサリーだろうかとすら思いました。
さらに、ポケットチーフは黒と深い赤の間に金糸が織り込まれ、
鈍い光沢を放っている物で、おしゃれではあるのですが、
どことなく夜とかパーティーとかのイメージ。
天然のひざしというより夜間照明や、
舞台のピンスポットが似合うイメージです。
一日に必要な野菜の摂れるヘルシーなハンバーガーや、
米粉の蒸しパンをプロデュースする、
ナチュラル志向の青年は、
予想外に人工的な装いがお好きという感じで、
改めて人間の奥の深さを認識した思いです。
だからヒトっておもしろいのよね。

春先のダンディへ

春めいてきたと思えばまた肌寒く。
みなさま、いかがお過ごしですか? 

ところで最近、コスメ関連の商品を見ていると、
メンズ用コスメが普通にあるのに驚きます。
ファンデーションとか眉ペンシルとかリップとかね。
そういえば、高校野球なんかを見ていると、超体育会系な坊主くんたちが、
眉毛だけ修正してあったりして「それ、ちょっと細すぎない?」と思いつつも、
なんか無骨な顔付きのコが懸命に眉を剃って剃りすぎちゃったりしている感じが、
微笑ましく思えてしまいます。
高校球児だっておしゃれしたいお年頃なのであります。
そんなわけだから、チマタのワカモノたちがファンデを塗ったり、
リップをつけたりするのも無理ないのかなと思いつつも、
やっぱり男はヴィジュアル系と歌舞伎役者以外ファンデ塗っちゃあかんやろと。
そうそう、一時流行った男子高校生のカチューシャとかも、違和感ありました。
あ、スカート男子というのも一時流行りました。
最近、少し見かけなくなったけれど。
そんな風にファッションの男女の境界がますます曖昧になってきています。
この前テレビを見ていたら、男性アイドル歌手が、
ジャケットの両襟に造花のコサージュを合計6コくらいつけて、
さらに模造宝石風のネックレスを幾重にも付けていて、
そのまま女の子のファッションに取り入れられるかわいさでした。
そのアイドル歌手の人はイケメンだけど決して女の子っぽくはなくて、
マッチョな男っぽい人です。
そういう人が花のコサージュをつけているという点がおもしろいと思いました。
あくまでも男のスタイルで、宝石やアクセサリーをプラスする、
そういう倒錯的な衣裳は思えば沢田研二が元祖でした。

一時期、日本のサラリーマンのスーツを
「どぶねずみ」と称していた時代があります。
グレーという色あいだけでなく、多分、
身なりをかまわない、くすんだ感じ全体を表現していたのだと思います。
昭和が終わりバブルがはじけて、団塊の世代の人たちが定年を迎え始めたくらいから、
サラリーマン全体が若返るに従って、どんどんおしゃれになってきています。
コサージュは付けないにしても、
スーツやシャツの選び方におしゃれゴコロが感じられます。
消費者の意識と同時に、スーツなどの量販店が、
スタイリッシュなものを意識して扱うようになってきているので、
そうしたものが手に入れやすい環境になっているのでしょう。
もう数十年前ですが、ロンドンの英語学校に通っていた頃のこと。
その学校はほかのヨーロッパ諸国や南米、
アジアからの生徒たちがたくさんいたのですが、
英語を勉強しにきている人たちはマジメで、
あまりファッションを気にかけている人はいなかったので、
まあ、いわば野暮ったいコたちばっかりでした。
そんな私のクラスでただ一人、ルオモヴォーグから抜けだして来たような
ファッションに身を包んでやってくる男の子がいました。
シャツ、ジャケット、パンツ、靴、バッグ、
どれをとってもまさにルオモヴォーグなアイテムとコーディネートです。
ロンドンだったら当時、先端のモードを扱っているショップでしかないような、
かなり高級なデザインや品質でした。
カルロというそのイタリアン・ボーイに、ある日私はついに聞いてみました。
「カルロ、それ、どこのブランド?」
「ブランド? 」
彼はシャツの襟を引っ張り、織りネームを見せてくれましたが、
全く聞いたことも見たこともないブランド。
「それ、どこで買ったの?いつも着ている服、どこで買うの?」
「イタリアの、うちの近所の店」
「高級ブティック?」
「まさかー!ふつうの、どこにでもある、ちっちゃい服屋だよ」
「カルロって、うち、どこ?」
「ジェノバ。海辺の街」
「じゃ、そのバッグは?」
彼は教科書やノートをいつもメッシュの、
魚の仕掛け網のようなショルダーバッグに入れてきました。
そのバッグもとても洒落ていたのです。
「これは、その店のショップバッグ。買い物するとこれに入れてくれるんだ」
はあ〜。私は感嘆の声しか出せませんでした。
イタリアはすごい! アベレージがもう全然違う・・・。
つまり、日本でいえば駅前商店街の普通の服屋で、
何も考えずそこに並んでいるものを買えば、
いきなりルオモ・ヴォーグのスタイリングになってしまうということなのです。
それはもう、ファッションの底辺が違うのだなあ・・・
と思い切り脱力したあの日。
あれから幾星霜。日本は変わったでしょうか?
駅前商店街の普通の服屋で、何も考えずにそこに並んでいるものを買っても、
いきなりルオモ・ヴォーグになれるでしょうか?
まだまだそれは高いハードル。
でも、意識はどんどん高まっています。
コスメやカチューシャはなんだかなあと思うけれど、
もともと男性の現代ファッションの基本を作ったのは
18世紀のダンディ、ボー・ブランメルと言われていて、
この人は一時、化粧もしていたそうな。
タイトなジャケットに身を包み、糊付けした白い布を襟元に巻いていて、
誰もがその巻き方を真似していたとかで、
それがアスコットタイなどの原型といわれています。
さらに19世紀の英国の作家、オスカー・ワイルドもまた、
ダンディというと名前があがる存在。
彼は毎日、襟に生花をさしてロンドンの街を散歩したそうで、
彼が白い椿をさせば、
翌日はそれがトレンドになるという、流行をリードする存在。
ネクタイは彼が考案したと言われています。
この2人はその日のスタイリングに2時間くらいかけていたと言われていて、
共通するポイントはふたりとも超インテリで話がおもしろくて毒舌家。
そんなところも、服のスタイリングに説得力があったのでしょう。
メンズファッションのオリジナルは貴族や上流階級が元になっているので、
驚くほど華美だったり、凝っていたり、服にうつつをぬかしている感が満載です。
時を越えて現代。
春先には、ちょっと派手めな色のペイズリーや水玉なんかのスカーフを、
シャツの襟元にコーディネートして、
おしゃれ気分を盛り上げてみるのもおすすめです。

*画像はオスカー・ワイルド。
この半ズボンは19世紀に流行ったもので、シルクの靴下を合わせるのがポイント。
 

 
 

 

 

あの頃キミは若かった。

 四半世紀ぶりの寒〜い、早春なのだそうです。
 25年前と言うと1987年。時代はまだ昭和でした。
「その頃あなたは何をしていましたか?」
と、ドキュメンタリー番組風に聞いてみたりして。
あの頃キミは若いどころか、
まだ生まれてもいないという方もいらっしゃいますよね、きっと。
まあ、私はかろうじて社会人になったくらい(←嘘。バリバリ社会人でしたけど何か)
ちなみに1987年というと、日本はまさにバブルに突入した頃。
山手線の内側の土地代だけでアメリカ全土が買えるとすら言われた時代でした。
ワンレン・ボディコンとか、サラダ記念日とか、ノルウェーの森とか、
郷ひろみ・二谷友里恵結婚とか、朝シャンとかJRスタートとか。
ちなみにファッション的にいえば、あの頃私はゴルチエとロメオ・ジリを着ていて、
当時のジャケットやコートを見ると肩幅の雄々しさにめまいがします。
アメフトでもやるんかい、と。
そんなDCブランドのブームとともに、
誰もがおしゃれになった時代でもあります。
そう、原宿ラフォーレのセールには、デザイナースブランドのセール品を求めて、
男女の行列が何重にもラフォーレを取り囲んだ、あの頃を境に、
国鉄はJRになり、農協はJAになり、一気にアカぬけたのであります。
で、「林荘」というアパートは「フォレスト・ハイツ」になり、
「和田美容室」は「サロン・ド・ワダ」になり、
「純喫茶・丘」は「ヒルズ・カフェ」になり。
古き佳き昭和の土着的な香りは次々に漂白され、リフォームされていきました。
それにともなって、芸能人もね。
たとえば、アイドル。
女の子アイドルは聖子ちゃんにしろキョンキョンにしろ
デビューから数年はリカちゃん人形のような、
モードとは無縁の格好でした。
淡いピンクや薄いブルーとかのミニドレスで、
パフスリーブの袖、ウエストはリボン結び、
スカートはパニエを入れて膨らませたような。
ガーリーというより少女チックと呼びたい、そんなドレスに、
髪は聖子ちゃんカットと呼ばれる巻き毛スタイル。
というのが定番で、浮き世場慣れしていたアイドルが80年代後期になって、
急にモードに目覚めました。
キョンキョンを筆頭に、やたらオシャレな、原宿や渋谷、西麻布らへんで遊ぶ、
おしゃれな若い女の子のようなスタイリングに変化したのです。
男の子のアイドルはさほど劇的な変化はなくて、
ジャニーズの男闘魂組がちょいロックぽい格好をしていたのが印象に残っています。
劇的だったのはお笑い芸人のおしゃれ化でしょうか?
かつてお笑い系の方々といえば、派手なスーツが定番で、
原色とか奇妙な柄のスーツを着ていれば
「漫才師みたいなスーツ」と言われたものでした。
それはお笑いの演出上不可欠な仕掛けであったはずです。
ところが、80年代後期の一億総オシャレ化時代に、
お笑い芸人の方々もデザイナーズブランドに身を包んで、
一気にファッショナブルになってしまったのです。
ビートたけしのフィッチェ(ドン小西が運営していたブランド)や、
イッセイ・ミヤケとかが有名です。
当時のたけしは
「三宅一生に『イメージ壊れるから着ないでくれ』と言われちゃったよ」
と言っては笑いを取っていました。
お笑い芸人はダサイという概念がなければ成立しないネタで、
今、たとえばダウンタウンの松本人志が
「グッチから着ないでくれと言われた」くらいのことをいっても、
「へー、松ちゃんのスーツ、グッチだったんだ」
くらいにしか思わないのではないか、
という、ファッション的に平均化された、
ある意味、没個性な世界になってしまいました。
あ、松本人志さんのスーツがグッチかどうかは知りませんよ、念のため。
今では、若手お笑い芸人とロキノン系(雑誌”Rockin’on Japan”に出ている系)ミュージシャンとでは、顔つきもファッションも見分けがつきません。
やすきよとX-JAPANでは全然違ったのにね。

ところで先日、印象的なスタイリングをしている人に出会いました。
「マルチカラーのニットベスト」と思いきや、実はマフラー!
これは斉藤久夫さんのTUBEのものだそうです。
淡いブルーのボタンダウンシャツにレトロな色調のレジメンタルタイ、
ネイビーのスクールユニフォームぽいジャケットというスタイリングに、
マフラーのクラフト感が効いていています。
ちなみにパンツはグレンチェック、バッグはビルケンシュトックの革製トート、
靴はユースドで茶色レトロっぽいテイストの編み上げ革靴。
全体におしゃれを楽しんでいる感じが漂っていますです。