春を待つサンダル


まだまだ寒い日が続いています。
日本は歴史的な豪雪、ヨーロッパも歴史的な寒波ということで、
われらが地球は凍えております。
そんな冬ですが、ファッションの前線はもう春夏。

先日、ドイツの健康靴として有名な、
ビルケンシュトック ジャパンのカタログが送られてきました。
このカタログで、毎回シーズンコピーを書かせていただいています。
ビルケンシュトックでは年2回のコレクションごとにテーマを設け、
そのイメージでカタログがデザインされ、イメージ画像が撮影されます。
今回のテーマは『ファミリー・ツリー』。
震災以降、ほとんどの人達が感じている、人と人との結びつきの大切さ、
それを一本の木のもとに集う人達というイメージで表したものです。
ファミリーツリーというのは本来、家系図を意味する言葉ですが、
このテーマでは家族のみでなく、友人や同じ目的を持つ同志、
仕事仲間、趣味の仲間など、何かが共通することで、
1つの大木に集まった人たち、というニュアンスです。
私がお手伝いしているのは、毎回提案されるこのテーマをストーリーに広げること。
今回は、ひとつの大きなファミリーツリーで暮らす家族や集団から、
やがて種子が風に飛んで行って、
別の場所で新しいファミリーツリーを形成するような、
大空や未来へ伸びて行くイメージのコピーを作りました。

ビルケンシュトックはドイツ生まれの靴メーカーで、
元々、足の健康を考えたサンダルで知られていました。
60年代後期に自然回帰を唱えたヒッピーが履いていたこともあり、
アメリカではかなり以前からファッションアイテムでした。
日本でも90年代に入ってから人気が出てきました。
サンダルだけでなく、もちろん普通の靴も多く、
スタイルごとにロンドンやボストン、パリなど、
都市の名前がついていることでも知られています。
特徴はフットベッドと言われる底敷き。直訳すれば足の寝床。
これがゴムの木から作られるラテックス混合のコルク、2枚の麻、スエードの4層でできていて、
自然かつほどよい硬さがヒトの足裏を快適に支えてくれるのだそうです。
このフットベッドを見ると凹凸があり、かなり立体的。
踵、親指、ほかの指の部分は凹んでいて、土踏まずの部分は盛り上がっている、という感じです。
ビルケンシュトックの考え方は、ヒトの足は本来、土の上を歩くようにできているので、
現代のようにコンクリートやアスファルト、石畳の上を歩くには、
それなりのフットベッドで足裏を支えてあげないといけないのだそうです。

さて、そのビルケンシュトック、ナチュラル系のファッションを好む人達はもちろん、
ちょっと個性的なモード系の人にも人気があります。
履きやすいのと、青や赤、バイオレットなどの色もあるので、
コーディネートのスパイスにしやすいのかも知れません。
とはいえ靴の中で足の指がゆったりくつろげるよう、
甲がダンビロのスタイルなので、
タイトなスーツにとんがり系の靴を合わせたい、
という場合には合わないかも知れませんが、
スタンダードな形のスーツにホワイトのシャツ、
というような英国風スタイリングにはおすすめです。
ペイズリー柄などの紺色のシルクスカーフとか、あえてちょっとドレッシーな小物と
コーディネートすることで、モダンイングリッシュテイストになります。
お休みの日なら、ロンドンストライプのボタンダウンシャツにジーンズにダンビロ靴、
というようなスタイリングで楽しんでもいいかも。
これから暖かくなれば、短めのパンツやショートパンツに合わせて。

ちなみにビルケンシュトックつながりで、
サンダル界のロールス・ロイスと言われるサンダルのお話。
ニューヨーク在住のドイツ人女性、ユッタ・ニューマンが、
職人さんと一足づつ手作りしている革のサンダルで、
履き心地が抜群なのだそうです。
すべて革でできているのですが、
底だけ特注のビルケンシュトックのゴムソールが貼られています。
その履き心地=乗り心地の快適さと、一足5万円前後というプライス設定が、
サンダル界のロールス・ロイスと言われるゆえん。
ちなみにデザインは、ちょっとレトロなたとえですが、
「え、何これ、ベンハーサンダル?」という感じの、
素朴でワイルドでいかにも手作りな感じ。
最初見た時はロールスというより手作りイカダを連想してしまいました。
でも、ハンドクラフト的なものこそ贅沢というのが現代の真実です。

というわけで、サンダルが履けるほど、早く春に、
暖かくならないかと願う今日この頃です。

王子様のスーツ

2月になり、寒い日が続いています。
受験や就活中の皆さんは、大変な時期ですね。
風邪やインフルエンザに負けないよう、
暖かくして、栄養をつけて、乗り切ってくださいね。
と、いきなり親戚のおばさんになってしまいましたが、
この寒空の中、受験塾帰りの小学生や受験生風高校生、
就活中らしきリクルート姿の学生とか見ると、
「がんばれよ、絶対うまく行くよ」と心の中でエールを送ってしまいます。
そうやって、目指す先に何があるのか?
わかりません。
でも、一生懸命努力している人の姿を見ると、つい応援したくなります。

とはいえ、ちゃんと勉強すれば答えが出る、結果が出る受験と違って、
就活は曖昧模糊としていて答えがひとつではないし、多分に不条理。
でも、社会というのは不条理なものです。
だからこそ、人はゲームとかスポーツが好きなんだろうなあと思うのです。
強い者が勝つ。まあ、少しは運不運もあるけれど、
とりあえず、基本、強いものが勝つ、そのあたりがヒトゴトながらすっきりする、
ストレス解消になるのではないでしょうか?

ダルビッシュ有の契約金が、日本人選手で過去最高と報道されています。
ダルビッシュというと、最近の活躍はさることながら、
甲子園での目覚ましい活躍と勇姿が懐かしいと思ってしまいます。
今よりずっと華奢で少年ぽくて(実際少年でしたけど)、
その数年後にやはり甲子園で人気者になったハンカチ王子よりは、
ものすごく印象的でインパクトがありました。
そういえば、ハンカチ王子に続く注目のスポーツ少年ということで、
ハニカミ王子として脚光を浴びたゴルフの遼くん。
今やハニカミどころか、押しも押されもしない若き実業家くらいの貫禄があります。
先日もテレビに三つ揃いスーツで登場した時は、
ハタチそこそこと思えない似合いっぷりで、
30〜40代になった時の貫禄は想像をはるかに超えているはず。
風邪薬から不動産まで、今や連日テレビから遼くんに何かを薦められている私たち。
スポーツ系の天才は成長と出世が早いですね。
あれよあれよという間に、業界の頂点に行き着いてしまいます。
白黒がはっきりわかる世界だから、スポーツは娯楽の王者で、
巨額なものが動くのでしょう。

そのダルビッシュが契約時に渡米する時に、
成田空港で見せたファッションが話題になりました。
ダウンジャケットはモンクレール、ジーンズはディーゼルだったらしいのですが、
その下に着ていたTシャツのプリントが大麻の葉だというので、
アメリカで物議を醸したというのです。
逆にダルビッシュがその手のドラッグとかに興味もないし、
それが大麻の葉だということも知らなかったからこそ着れるのでは?と思うけれど、
Tシャツのプリントはメッセージを表すと考えるアメリカ人にとっては、
「ダルビッシュって、マリファナ合法化論者なの?」と思われたようです。
ちなみにそのTシャツは、フランスのデザイナー、ルシアン・ペラフィネの製品で、
この人、カシミア100%の超高級セーターとかを専門としていて、
綿100%のTシャツで7万円前後。
そしてスカル模様とピースマーク、大麻の葉がお得意のモチーフ。
プリント的には、渋谷や原宿の若い子向けショップで普通にありそうなチョイスですが
(特にこのブランドのコピーということでなしに)、
多分、綿の素材と縫製のクオリティが違うのでしょう。
というわけで、業界のトップに立つスポーツ選手の成田ファッションは、
いつも注目を集めます。
一時期の、サッカー日本代表、中田英寿元選手の、
レザーパンツにピチピチTシャツの限りなくゲイ的スタイルとか。
最近は、やはり日本代表、
本田圭佑選手の金髪+ティアドロップ+三揃いスーツが熱いです。
白のボタンダウンのドレスシャツにネイビーとブルーの斜めストライプのタイ、
そしてスーツは若干グレー味を帯びたネイビー。
サッカー選手はワールドカップの際の移動などでは、
制服的お揃いスーツを着込んでいます。
日本サッカー協会のオフィシャルスーツは2000年以来、
連続して英国ブランドのアルフレッド・ダンヒルのもの。
いつもベーシックできまじめな感じのデザインです。
一方、本田圭佑選手が独自に選ぶスーツおよびコーディネートは、
いつもちょっとギラギラしていて、夜の香りとかドルの香りとかたっぷり。
空港に赤いフェラーリを乗り付けて、
グレーのスーツに金のベルトのいでたちで降りて来たり、
圭佑さんのファッションから目が離せません。
サッカーといえば、ワールドカップの試合を見ていると、
どこの監督もいつもスーツを着ています。
ちなみに日本代表の監督はやっぱりダンヒルを着るのが決まりのようです。
そして、トルシェと通訳を筆頭にジーコもオシムも岡田さんも、
みんなカッコよかったです。
サッカーフィールドでの(正確にはフィールドの外ですが)スーツ姿って、
なんであんなにカッコよく見えるのでしょう。
「神の子」マラドーナが監督の時のスーツ姿は、
たっぷりめの体型が、彼の人生を物語っていました。
そう、Tシャツのプリント同様、ファッションはメッセージを伝えるもの。
その人の思想とか生き様が形になって現れてしまうものです。
と、自戒を込めて・・・・。

2012年のビートニク

 インテリアでは’60年代調のものが人気ですが、ファッションでも最近よく、
’60年代のスタイルを見かけます。
 タイトなジャケットに小さめの襟のシャツ、細身のパンツ。
’60年代当時、アイビーやコンチと呼ばれていたファッションです。
 チマタでも、そんなカッコの男子をよく見かけるし、ポール・スミスやアレキサンダー・マックイーンのような英国デザイナー勢も、
タイトなジャケットと、細身のパンツをコレクションで展開しています。
 ’60年代というのは、なぜか今、スタイルのキーポイントになっているような気がします。
 それは、戦後約10年経て、やっと余裕を取り戻して新しい時代になった、あの頃独特の勢いへの憧憬もあるのかも知れません。
今の時代から見れば、新しさというよりレトロなのですが、
古き佳き時代のチャレンジ精神、
恐い物知らずな躍動感を感じさせるからではないでしょうか。
 日本でも昭和40年代にVANやJUNといった先駆者的なメーカーが、
そういうスーツやシャツを作り、
MEN’S CLUBなどの雑誌ではコーディネートが紹介されました。
平凡パンチがまだ、当時のファッションやサブカルを紹介する雑誌として、
ワカモノの必読書だった時代、
表紙は大橋歩さんが描くアイビールックの青年たちでした。
当時の日本では、アイビールックといえば七三分けのヘアスタイル。
今、あの頃のワカモノの写真とかを見ると、七三のおかげで、
全員、やけに好青年に見えます。
ちなみにアイビールックのオリジナルは、
米国のハーバードほか8大学のフットボール連盟「アイビーリーグ」から。
ボタンダウンのシャツに細身のシングルジャケット、
細身のパンツにローファーという彼らのファッションが、
アイビー・ルックと呼ばれたのでした。
元祖は学生だけにクリーンなイメージですが、
そんなアイビー調やコンチネンタルスタイルのジャケットやスーツを着つつ、
欧米ではそこにロングヘアをあわせてしまうワカモノたちもいました。
60年代にサブカル志向の人々の間で流行っていたビートニク・スタイルです。
ビートニクは、50年代から60年代後期にかけて、
暴力的、反社会的、または実験的だったりする小説や詩を書いた、
ジャック・ケルアック、アレン・ギンズバーグ、ウィリアム・バロウズの、
3人の作家や詩人をビート世代と呼んだことから派生したムーブメントです。
一見普通のジャケットやスーツを着ているのに、
髪だけマッシュルームカットだったり、長髪だったり。
60年代後期になってエスニック的なヒッピースタイルが台頭するまで、
ビートニクスは反体制のシンボル的スタイルでした。
若い頃のアンディ・ウォーホルもちょっとそんな感じです。
最近、タイトなスーツやジャケットに、
髪はマッシュルームカットというワカモノをよく見かけます。
ボタンダウンシャツやポロシャツにタイトで短めなパンツ、
足元にはローファーやデザートブーツ。
首から下はまるで昔のままですが、
違うのはバッグでしょうか?
今のワカモノたちご愛用のトートバッグは、当時ファッションアイテムとしては、
取り入れられていないものでした。

この手のスタイルで思い出すのは、
俳優では当時大ヒットしたアメリカ映画「卒業」の頃の、
ダスティン・ホフマン。いつもいい味の着こなしをしています。
サイモン&ガーファンクルの往年のファッションや、
イギリスのヤードバーズなどのスタイルもかなり参考にしたいライン。
ポイントは、ちょっと脱力感のあるスーツやシャツの着こなし、
といった感じでしょうか?
今年風ビートニクスタイルは、きまじめなジャケットやドレスシャツに、
リバティプリントの花柄とか、
ちょっとユニセックスなスカーフをプラスしてみるなんてよさそうです。

写真は60年代のイギリスのロックバンド、ヤードバーズ。
左から二人目がジェフ・ベック、右端はジミー・ページ。
さらにエリック・クラプトンといった、
のちのスーパーギタリストたちが在籍していた伝説のバンドです。

荒海を粋に乗りきるコート

木々もすっかり葉が落ちて、1年で一番寒い時季になりました。
こうなるとおしゃれのしがいもあるというものです。
冬の必須アイテムといえば、まずはコート。
暖かくてなおかつ軽いものが理想ですが、
そんな条件を満たしてくれるのはひと昔前までカシミアしかありませんでした。
100%に近くなるほど保温力は増し、ほかの素材を混ぜないでいいので軽くなる、
その代わりお値段は重量級。
そんなスーパー艶のいいカシミアコートを着ている人や、
毛皮のコートを着ている人を最近見かけなくなりました。
その代わりに200gを切る超軽量のダウンコートや、
中綿に保温効果抜群の化学繊維を使ったコートなど、
機能的なアイテムがたくさん登場しています。
寒い寒い木枯らしの日でも、軽くて暖かい上にお求めやすいコートが、
しっかり身を守ってくれるのですから、
便利な世の中になったものです。

とはいえ、最近、ふと気づけば、
街はピーコートに侵略されているような気がします。
メンズでいえば、モード系からお兄系までの男子が着用し、
レディスでいえばハイファッションを好むリッチOLから、
うずたかく頭を盛ったお姉さん系までの御用達。
合わせるアイテムを選ばない、オールマイティな点が人気の秘訣でしょうか?
とはいえ、ピーコートに花柄のスカートを合わせるなんていうのは、
20年前ならかなり上級のおしゃれテクがある人しか考えないスタイリング。
そんなミスマッチなコーディネートが普通になった昨今だからこそ、
ここまでピーコート人気が高まっているといえましょう。
中高の制服にも取り入れられるほどストイックで、
しかも老若男女イケる。もはや最強のおしゃれアイテムです。

ピーコートというと思い出すのがスティーブ・マックイーン。
映画「砲艦サンパブロ」で彼が着ていたそうなのですが、
私はその映画を観ていないのです。
それなのに、ピーコートを着たマックイーンが脳裏に焼き付いているのですから、
60年代や70年代の日本で、彼のピーコート姿が、
どれだけ大々的に報じられていたかわかります。
「『冒険者たち』のジョアンナ・シムカスのピーコートもよかった!」
と熱く語っていた人もいました。
「冒険者たち」は60年代後期のフランス映画です。
「映画の冒頭で、ピーコートにタートルネック、
カーキのパンツを履いたレティシア(シムカス)が、
二枚羽根の飛行機に乗るんだよ。めちゃくちゃカッコよかった!」とのこと。
ちなみにジョアンナ・シムカスは前衛芸術家の役で、
普段は男っぽい作業着風なのに、
ハレの舞台ではパコ・ラバンヌの、
60’sなミニドレスに身を包んで登場します。
そのギャップと、どっちも魅力的だったことが強く印象に残っています。

もともと英仏の漁師の防寒服だったピーコートは、
19世紀には英海軍の下士官用の軍服に採用されたほど、
質実剛健で機能性が売りのアウターです。
ちなみに「ピー」はオランダ語でラシャを意味する「pij」が語源なのだそうです。
強風にさらされる甲板での作業に備え、
どの風向きでも風を防げるように、
合わせが左右どちらでもできるようになっているのだとか。
襟が大きいのは、風が強い甲板で襟を立てることで、上官の声を聞こえやすくするため。
そして縦に切れ目の付いたマフ型のポケットも、
手をすっぽり入れて、冬の強い風から守るため。
という機能的なコートで、しかも無駄を省いたマニッシュなデザインがオシャレです。
難点は、本物に近いほど、
ラシャなどのしっかりした素材を使っているので重いこと。
着ている時はまだいいけれど、
インドアで手に持ったまま移動する時など、着てきたことを後悔します。
時たま、フリースみたいな軽い生地でできたピーコートを見かけますが、
ビニールでできたドクター・マーチンみたいなもので、
できれば本物が欲しい。
定番はネイビーブルーですが、赤やグレー、ベージュなんかもあり、
レディスではオフホワイトも人気。
中にはチェックや、珍しい所では、ワインなんかもあります。
ボタンは紺や黒のほか、金色の派手なタイプも。

ピーコートの強みは、スーツにもカジュアルにも合わせられる点です。
カジュアルでのコーディネートの定番は、ニット帽にシャツにセーター、ジーンズ。
チノパンやカーゴパンツなども似合います。
シャツはロンドンストライプか、濃いサックスの無地なんかが似合いそう。
太い編みのニットのマフラーをぐるぐると巻いて。
靴はデザートブーツやワークブーツあたりがオーソドックスなチョイス。
スーツに合わせるにしても、
コンサバでもエッジィでも、ゆったり系でもタイトでも、
無地でもストライプでも、スーツの傾向を問わないキャパの広さが魅力です。

そんな最強・万能の人気アイテムだけに、
小物類で個性を出して行きたいですね。
カジュアルなら帽子やマフラーで、ほかと差を付けてみては。
スーツの場合は、あえてタイトなスーツやモード系の靴を合わせて、
その軟派なシルエットを軍服の硬さで引き締めるのも手。
スーツのままアフターファイブに出かけるなら、
ポール・スミスのマルチストライプのマフラーとかで冒険してみてもいいですね。

色々なおしゃれを受けいれてくれる上に、元はヨーロッパの海の男の服。
荒天で働く男を、木枯らしや雪の夜の寒さから守ってくれるスーパーアイテムです。

*写真は、ピーコート2連。

新年のご挨拶

迎春

2012年が明けました。

元旦は毎年、明治神宮に初詣に行きます。
かなり昔、厄払いで初穂祈願というのをお願いして以来で、
行かないと新年がはじまらないという恒例のイベントです。
皆様は初詣に行かれましたか?
氏神様にお参りするというのが初詣の起源ですから、
近場の神様にお参りするのが一番正しいのかも知れません。

人知を超えた災害に見舞われた昨年でしたが、
今年は穏やかな年になりますように。

本年もどうぞよろしくお願いいたします。

師走のスパイス


いやはや、なんともう大晦日です。
今年は3月のあの震災以来、被災地の方はもちろん、
暮らしへの意識が一変した、という人も多いのでは?
具体的には多分日本中で、防災意識が高まったとは思うけれど、
精神的なことでは、当たり前のことが当たり前ではなくなったような感覚。
だから、毎日を大切にしなくちゃと思いつつ、
結局バタバタと日々は過ぎて行きました。
年末に貰った仕事のメールで笑ったのが、
「昨日はドタバタとしておりまして、返信が遅れ申し訳ありません」
それ、普通は「バタバタ」じゃありません?
それすらビジネスメールで使うのもナンかと思うのに。
もうそのドタバタぶりが如実に伝わって来ますが、大丈夫か?この人、
という師走です。
まったく、カレンダーで12/31が最後の日と決めたからといって、
なんでこんなに忙しい思いをしなくちゃいけないいんでしょう。
大掃除、お正月の食材の買い出し、鏡餅やお花や松飾りの用意。
これを大体2日間くらいでやろうというのですから超ハードです。
じゃあ、もっとはやくからやれという感じですが、
仕事納めが29日、という人も多いはず。
結局、2日間でバタバタするというのが恒例です。
昨日は、玄関やキッチン、バストイレなどの掃除が終わると、
自分の部屋の掃除にかかれたのがもはや夜。
フローリングを拭きながらテレビを付けていたら、
「踊る大捜査線」の劇場版をやっていました。
このドラマ、来年公開の映画で有終の美を飾るそうです。
思えば「青島刑事」ももう40代半ば。
15年続いたという超人気ドラマですが、
「都知事と同じ青島です」というセリフも、今は使えないし。
青島さんが都知事であったことも、すでに遠い遠い過去という気がします。
そんな時代から(すでに連続ドラマではないにしろ)続いているのですから
設定も色々不自然になって来ます。
気になる同僚のすみれさんとの仲も、
もう40代の美男美女というと、両者独身だけに、
人にはいえない特別な事情でもあるのかと思えてしまいます。
そういえば室井警視監も独身だ。なんなのみんな揃って。
そんな「踊る・・・」といえば、織田裕二扮する青島刑事のパーカ。
元々はアーミーコートで、
’50〜60年代にモッズの男の子たちがファッションに取り入れて、
60年代後期にはヒッピーにも人気のあったコートです。
モッズといえば、テーラーメイドのスーツを競って着こなしたことで知られます。
タイトなスーツに小さめの襟のシャツに細身のタイ。
ループタイやアスコットタイなんかもコーディネートされました。
その後、モッズは定番ファッションのひとつとして定着して、
日本でも、一部には根強いファンがいて、
老舗のビスポークテーラーのお得意さんだったりするようです。
モッズを着こなしたバンドといえば、リアルタイムではThe Who。
彼らは60〜70年代に絶大な人気を誇ったロックバンドで、
ロンドンの下町出身。
日本でも上映された「さらば青春の光」というモッズ映画、
というより少年期の切なさや危うさを描いた青春映画の秀作は、
The Whoのリーダーが原作を手がけたものでした。
この映画はポリスの頃のスティングも出ていて、
光り物のモッズスーツを着た彼はスーパーカッコよかったです。
そういえば当時を知るイギリス人評論家が昔書いていたけれど、
「The Whoに比べるとビートルズはいわば田舎から来たバンドで、
なんだかダサかった」んだそうです。
モッズスタイルのミュージシャンとしてほかには、
80年代のUKではスタイル・カウンシル、
日本ならミッシェル・ガン・エレファントなんかが思い浮かびます。
そんなキメキメで、ある種ドレッシーなスーツの上に、
戦闘服たるアーミーパーカを合わせる。
しかもシルエットはダボダボでユルユル。
そんな風に両極端を合わせたアンバランスなコーディネート。
それこそファッションをよりおいしくしてくれる「スパイス」といえます。
70年代初期にイタリアのメンズファッション誌の、
パーティの紹介記事かなんかで、
とあるファッションディレクターがタキシードの上にダッフルコートを合わせていて、
それがめちゃくちゃカッコよかったのを覚えています。
「え、それしかなかったの?」と誤解されず、
「さすが!」と思わせる着こなし的説得力が、この際必要ですが。
あるいは、ジーンズにオペラパンプス(男性の礼装に合わせる靴)を合わせる、
なんていうのも、80年代に流行ったスパイシーなコーディネートです。
ロンドンの地下鉄で見た男の子は、かなり純度の高いカシミアコート、
しかもベージュというオーソドックスなカラーチョイス、
しかもグレーフラノのパンツに、
ダークブラウンのスエードのスリッポン、ラインはセリーヌ風。
そんな正統派かつ優雅ないでたちに、なんと靴下が、
ヴィヴィアン・ウエストウッドでした。
しかも超ど派手な柄、おまけに靴下素材でなく、
一時期作られていたカットソーのもので、
つまりTシャツ素材で平面的に作ってあるから、
履くと普通の靴下みたいに足にフィットしないし、
足のあちこちに不具合が出て、シワ・タルミのオンパレード。
しかも靴の中でよじれるという履き心地最悪のものでした。
(私も3足持ってました)
でもテキスタイルがいかにもヴィヴィアンという柄で、
ファンにはたまらない魅力溢れるアイテム。
それを、オーソドックスなコーディネートに取り入れている。
こういう遊びがファッションの醍醐味かと思います。
とはいえ、履き心地の悪い派手な靴下はあまりおすすめできないし。
ここはひとつ、個性的なカフリンクスでスパイシーなおしゃれを楽しんでは?
小さなアイテムだから、主張し過ぎず、でも自分なりの感覚を伝えるのには、
最適のアイテムかも知れません。

さて、今年も残す所あと数時間。
新しい年が皆様にとって喜びに満ちた、よき年でありますように。
来年も、どうぞよろしくお願いいたします。

*画像は「さらば青春の光」のサントラ盤ジャケット。
自慢のパーカスタイルの主人公。これでベスパに乗って出かけます。

レトロなラウンジで未来を思う

西新宿の京王プラザホテルで、
取材中、素晴らしいモノを見つけました。
籐のアームチェアです。
丸っこい卵のようなこのデザイン。
これがデザインされたのは1960年。
今から半世紀も前のことです。
デザイナーは剣持 勇。
渡辺力や柳宗理と並ぶ日本を代表するインテリアデザイナーで、
1950年代や60年代初期に、
彼らといっしょにジャパニースモダンの基礎を作った人です。
これはもともと、1960年にオープンした、
ホテルニュージャパンのためにデザインされたラウンジチェアでした。
ちなみに今はなきホテルニュージャパンは、
オリンピックを目前にして建てられた、日本初の都市型多機能ホテルです。
この椅子は日本の伝統的な職人の技を活かして作られたもので、
1脚編むのに10時間もかかるのだそうです。
・・・と、記憶していますが、
逆に、え?10時間でできちゃうの?職人すげー!!!
と思ったものでした。
このラタンチェアは世界の優れたデザインを収蔵している、
ニューヨーク近代美術館(MoMA)の永久保存品なのだそうです。

京王プラザホテルは1971年オープンで、
館内にはいたる所に60年代のモダンデザインの名残が見えます。
71年というと、デザインの最先端はもう少し宇宙的かつ無機質な、
近未来カラーが強かったと思うけれど、
あえて60年代的ナチュラルで有機的なフォルムを採用しています。
そのおかげで、今なお、古くさくなっていないのです。
レトロな香りはしつつ、今、時代は巡って、またコレが新しい。

中でも3階のカクテル&ティーラウンジは、
まさにミッドセンチュリー風な雰囲気です。
今最も注目のレトロテイスト。
まるで近頃オープンしたばかりのデザイナーズホテルかカフェのよう。
しかも椅子もソファも座り心地がよくて、
お気に入りの場所になりました。
過去と現在が混在するラウンジで、未来を思いつつ、
外の並木を眺めながらお茶を飲み本を読み。
しばし、せわしなさから解放されます。
といいつつ、スマホでメールチェックする自分。
さあ、明日から12月。
駆け足で冬がやって来ます。

写真上・籐のアームチェアはホテル2階の「新和食 かがり」という店の、
ラウンジにあります。
下・同じく3階のカクテル&ティーラウンジ。イマドキ最先端カフェ風。
60年代のモダンテイストを受け継いだ71年生まれのインテリア。
カーペットの柄もいい!

空港テーマパーク

仕事で羽田国際空港のレストラン&ショッピング街に行ってきました。
この施設はすでにオープンして1年。
空港利用以外の来客が落ち着いてきた頃です。
スカイツリーに人気を持って行かれてるのかも知れません。
ライバルはまだオープンしていないのに。
とはいえ、最近もテレビではよく取材されています。
レストランやショップの並ぶ4階フロアが、
江戸の町並風になっているので、絵になるし、
どことなくテーマパーク風です。
そしてターミナルビルの建物そのものは骨組みが見えるとてもモダンなデザイン。
建物5階分が吹き抜けになった開放的な空間の下に、
江戸的風景がはめ込まれているのです。
レトロな家並の上に超近代的な骨組みの天井が広がっていて、
そこが逆になんとも近未来を思わせます。
未来なのに何故か風景や人のスタイルは江戸時代というような、
ある種のアニメのような別世界観が体験できるのです。
ショップやレストラン街は建物の4階と5階にあり、
4階は古き佳き日本のたたずまいの「江戸小路」で、
レストラン18軒と物販15軒が軒を並べます。
5階は現代東京がテーマの「TOKYO POP TOWN」で、
今や日本を代表するもののひとつであるアニメのグッズや、
世界のアイドル、ハロー・キティなどのキャラクターショップや、
アパレルメーカーがプロデュースする今ドキな生活雑貨など、
ショップ8軒とカフェ2軒が並んでいます。

さらに、空港でははじめてというプラネタリウムもあり!
そして、やはり空港ならではの忘れてならないポイントが、展望デッキです。
屋内と屋外の双方に、広いデッキが設けられていて、
待機中の飛行機が心行くまで眺められます。

一応すべて回ってから4階にあるカフェでひと休みしました。
出発ラウンジのすぐ上にあり、壁面がすべてガラス張りの建物ゆえ、
窓外にモノレールと、晴れた日は陽光に輝く海が見えます。
そして吹き抜けの眼下には搭乗手続きのフロア。
ここでお茶を飲んでいると、そのままチェックインして、
どこかに飛んで行ってしまいたい衝動にかられます。

1978年に成田空港が開港するまで、羽田は長い間、
国際空港として日本の玄関口の役割を担っていました。
私が初めてイギリスに行ったのも羽田から。
当時は海外遊学そのものが珍しかったので、
誰かが海外に行くとなると、親や友人、親戚まで空港に見送りに来ることもザラ。
自分が行く時や友達の見送りの時もみんな集まって、
国際線の出発ラウンジの二階にある喫茶店で、
ワイワイやっていたことなど思い出してしみじみしました。
私も友達も、親すらも、そしてトーキョーすらも若くて、
この世に怖いモノなんてなくて、なんでもできると思っていた時代。
あの未知数加減からすると、自分も年や経験を重ね、
日本のみならず世界の可能性も、ある意味、先が見えてきています。
そしてあの頃の羽田から見れば、遠い遠い場所だった海外の国々への距離が、
近頃は実に縮まったと感じます。感覚的には地続きのような。
島国日本にとっては、それは確かに新たな可能性なのだと思います。

そんな、遠い遠い日々を思い出させてくれる羽田空港は、
ご存じのように30年ほど国内線メインの空港でしたが、
昨年からはプチ国際空港として見事帰り咲いています。
とはいえ、フライトインフォメーションを見ると、
ほぼ東南アジアや中国行き。
あとはアメリカの一部とヨーロッパはパリとロンドンのみで、
しかも本数は少ないようです。

建物の頭上を見あげると、天井は一定間隔で切れ目のようなものがあり、
そこから日差しが降り注いでいます。
TIAT(東京国際エアポートターミナル)の広報の方にうかがうと、
このビルはエコ仕様で、雨水や地熱利用など環境に配慮してあり、
照明も省エネ対策で出来る限り自然光を取り入れるように設計されたのだとか。
ちょうど晴れた日だったので、建物内はまぶしいほどの明るさに満ちています。
さらにこのターミナルは随所にユニバーサルデザインが施され、
搭乗ゲートから飛行機に乗り込むまですべて
世界初のバリアフリーになっているのだそうです。

最先端の入れ物(建物)の中に、
江戸の町並を取り入れた国際空港。
現代ニッポンの模索がここに現れているような気がしました。

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左・江戸の町に近未来の空が広がる
右・カフェから見た出発ラウンジ

快適オンラインショッピング

今年は11月の半ばを過ぎても、冬とは思えない気候が続いています。
昨日なんて長袖Tシャツに薄手のコットンジャケットだけで自転車に乗って、
夕暮れ時に疾走しましたが、寒さを感じませんでした。
それでもさすがに、すっかり葉を落とした街路樹なんかを見ていると、
冬はもうそこなんだなあと、ちょっと寂しい気持ちになります。

先日、冬に備えてムートンのブーツが欲しくなりました。
ただ、ムートンブーツは甲の部分が丸くて大きい、
ドナルドダックの足くらい大げさなデザインのモノだと、
かわいさ100倍なだけに、年齢制限がありそうです。
色々検索してみたら、ミネトンカというモカシンブランドの中に、
大人が履いてもおかしくない感じのものがありました。
ちなみにミネトンカは1946年創業のアメリカの老舗メーカーです。
原住民であるアメリカインディアンたちが昔から作っていた伝統的なモカシンを、
今も同じ製法で一足ずつハンドメイドで仕上げているのだそうです。
別名インディアンモカシンと呼ばれ、
足を保護するために一枚の革で包みこむように作られている、
足に優しいナチュラルな靴です。
そして私が選んだのは甲の部分のラインが控えめで、
普通のバックスキンの靴のような感じです。
さっそく購入して履いて見たら、まあ、本当に心地よいこと。
足に軽く吸い付いついてくるような感触は、
さすが天然素材ならではという感じがします。
靴を履いていると言うより、野生の生物に足を包まれているような快適な感覚です。
インディアンと靴の、ある種、官能的な関係に思いを馳せてしまいました。
一方日本人が生み出した履き物は下駄や草履、わらじ。
どれもが足の裏には堅い感触です。
わらじは下駄や草履に比べれば比較的ソフトですが、新品は堅い。
足の裏にソフトなものを選ぶ感覚と堅いモノを選ぶ感覚。
これは気候風土とも大きく関係しているのでしょう。
アメリカ原住民が住んでいた北米は雨が少なく乾燥していたのでは?
梅雨の時期があって夏は蒸し暑い多湿な日本では、
やはり下駄や草履の感触が足の裏に心地よかったのかもしれません。
一方、北米の草原や岩肌などを歩くのに、下駄や草履じゃ無理そうです。
モカシンの履き心地を味わいながら、あちらとこちらの違いを思ったのでした。

で、このブーツ、オンラインで購入したのですが、
今回は紆余曲折がありました。
香川県高松市にあるオンラインのインポート専門店に注文して、
翌々日届いたのでさっそく履いて見たら、ちょっと小さい。
というよりジャストサイズなのですが、ムートンのブーツは大きいほうがかわいいしね。
なので、ひとつ大きいのに交換して貰いましょ、と思ったら、
なんと2日間ですでに在庫ナシ。
で、2番目に気に行っていたデザインのも、3番目のもすべて売り切れだったので、
結局返品することに。
ラッキーだったのは、相手のレスポンスがいちいち早くて、
メールの文面もシンプルで明快で感じがよかったということです。
また何かあったら、ここで買いましょと思いました。
そして、キャンセルが成立した直後に運よく別のショップからメルマガがきて、
なんと偶然にも私の欲しかったブーツの再入荷のお知らせでした。
さっそく購入。
やと出会えたなあという感じです。

そんなわけで、オンラインショップヘビーユーザーの私です。
シメキリに追われて忙しい、欲しいモノを買いに行けない、
晩ご飯の食材さえ買いに行く時間がない、そんな日々が続くと、
ついポチっと押してしまいます。
CDやDVDは主にAmazonです。
翌日届くし、電車に乗って輸入CD屋に行くより早い、国内盤DVDはどこより安い。
そういえば、どこにも売っていないDVDを探しまくり、
結局九州の小倉にある小さなショップから買ったこともあります。

生活雑貨もよく買うもののひとつ。
もちろん時間があれば東急ハンズやデパートの家庭用品コーナーに行って、
自分で色々手に取って選ぶという、
それもまた楽しみだったりするわけですが、
シメキリに終われて時間がない時に限って、大根をおろすはめになり、
硬い大根に癇癪起こして怒鳴りつけたりするような時、
パソコンで「簡単 楽々 大根おろし」とか検索して注文すれば1〜2日後には
「はいはいもう大丈夫ですよ、お任せください」といわんばかりに、
スイスイ楽々なおろし器が家に届いて生活が一変!ですから。
そりゃあ便利なものです。
送料も交通費よりはおトクです。

お気に入りの紅茶はなかなか手に入らないフランス製で、
これもオンラインがもっぱらの購入先。
ロシア王室御用達の紅茶商が、革命後にフランスに亡命、
今はパリのたった1軒のショップでのみで販売しているという紅茶です。
昔、友人のパリ土産に貰って以来、ハマってしまったのですが、
とにかく東京での扱いがないに等しい。
ディーン & デルーカという輸入食品屋さんの、
私の知る限りでは渋谷店か品川店くらいでしか扱っていないのですが、
お気に入りのフレーバーはそこにすらしばしば在庫がないという。
ネットの紅茶専門店に時折出ますがとにかくお値段が高級。
そこで検索をかけたら国内や海外在住のアマチュアの、
バイヤーさんが集まっているサイトに在庫があってソク買い。
輸入ものがリーズナブルに購入できて送料込み。おトクです。

パソコン関連のアイテムもほぼネット注文です。
以前、フラットパネルのMacを使っていた頃、
メモリー専門店でメモリーを買ったものの、
増設がうまく行かなくて電話でコツを聞いたら、
「このまま待ってますから、やってみてください」と言ってくれるではないですか。
「大丈夫ですよ、慌てないでいいですから、ゆっくりやってみて」
と装着できるまでずっと指導してくれて感激したことがあります。
オンラインと言っても、やはり人と人とのつきあいに変わりはないと思います。

長いつきあいといえば、財布は同じデザインのイギリス製のものをずっと使っています。
レシートやカードでパンパンになっても大丈夫だし、デザインもいいので。
毎年素材違いが出るので、2〜3年に一度新しくします。
これはロンドンにある日本のオンラインショップでずっと購入しているのですが、
メルマガのロンドン便りを読むのも楽しみだったりします。

ひとつ気がとがめるのが、本をついついAmazonで買ってしまうこと。
うちの近所には比較的大きな本屋さんが2軒あるのですが、
それでも昔ほど在庫を抱えなくなっているので、
私が読みたいと思う本はなかなかありません。
そういえば20年前に出版された本を
どうしても読みたいと思ったのですが、すでに絶版でした。
Amazonで探したら古書店から出ていたので、さっそく注文。
神田の古本屋街を1日さまよって探すのも楽しいイベントですが、
ネットなら仕事の合間に5分もあれば結論が出ます。
こんな便利さを甘受しているうちに、
チマタから本屋さんがどんどん消えてしまいます。
本屋さんが大好きで、本がたくさん詰まった本棚に囲まれていると、
ワクワクするタチなので、本屋さんの実店舗がなくなるのは寂しい。
そう思いつつもAmazonで買ってしまう本好きの矛盾。

せめて雑誌は、近所で一番小さな本屋さんに行く様にしています。
ほぼ雑誌しかないような、小さな小さな本屋さんです。
それでも、私が高校生の頃はフランス文学の文庫本を普通に並べていたのに。
今では単行本や文庫本はベストセラーやノウハウ本のみです。
しかもそこのおばちゃん、おつりを間違えて多くくれちゃったりするのです。
「おつり、多かったですよ」と返すと、おばちゃんは、
あらあらごめんなさいねと謝ります。
多くくれたのにねえ。
買い物するたび、
応援してるから、店を続けてくださいね、と心の中で祈っています。

エル・デコな夜

10月も終わりにさしかかり、世間はカボチャのオンパレードです。
夜はすっかり肌寒くなってきました。
そんな10/28の夜、エル・デコという
インテリア雑誌が主宰しているデザインアワードの、
授賞式のパーティーに行って来ました。
世界25ヶ国で発行されているエル・デコの編集長たちが選ぶ、
「エル・デコ インターナショナルデザインアワード(EDIDA)」というのがあって、
毎年ミラノ・サローネで発表され、デザイン界のアカデミー賞とも言われています。
ミラノ・サローネというのは、毎年イタリア、ミラノで開催される、
世界最大級のデザインイベントです。
複数の巨大な展示場で国際家具見本市や
国際インテリア・小物見本市などが開催され、
世界各国の企業やデザイナーの作品が出品されます。
その会場のひとつで、エル・デコの編集長たちが発表するのがエル・デコ賞の大賞。
世界の代表的なインテリア雑誌が「ワタシタチハ、コレガ、イチバン!」
と決めるわけですから、全世界で注目されることになります。
そんなエル・デコ大賞に向け、日本の代表を決める前哨戦が行われたのです。
昨夜はノミネート13部門が発表されその授賞式が行われました。
会場は、東京・神宮前の「アウディ フォーラム 東京」。
原宿と渋谷の中間くらい、明治通り沿いにそびえるガラス張りのビルです。
2階のギャラリーには、2011年で最も優れた家具やテーブルウェアとして、
選出された作品が展示されています。
授賞式は1階奥に設けられた特設ステージで19時から行われ、
最初は日本人の若手デザイナーに贈られる、
「エル・デコ ヤングジャパニーズタレント」の発表。
さらに、家具やベッド・寝具、チェア、テーブルウェア、
照明器具、ファブリックなど全13部門の優秀作品が、
続々と発表されていきます。
印象に残ったのは、アウトドア部門で受賞したカッシーナの「LC3 outdoor」。
LC3はル・コルビュジエが1920年代にデザインした、
彼の代表作にして名作家具中の名作。
1世紀近く昔のものなのに、今だにウルトラモダンという驚異の作品です。
そのLC3を、風雨に耐える素材で作ったから、
庭に置いて野ざらしにしても全然平気よ、というのがこの椅子。
この名作家具をテラスや庭に置く生活って・・・、と思ったのが、
印象に残った主な理由です。すみません。
次にエスタブリッシュ&サンズのマンモスというタペストリー。
これは、フィンランドのデザイナー、クラウス・ハーパニエミの原画を元にしたもので、
彼は近年、伊勢丹のクリスマスのウィンドウディスプレイを手がけている、
とても不思議な絵を描くヒトですが、
このタペストリーもマンモスのまわりをプテラノドンが飛び交って、
火山が噴火して隕石が降りまくっている、
という光景が美しい織物になっているという不思議な世界。
あとはPorroというイタリアのメーカーの、Shinというベッド。
シンプルな枠に快適そうなマットレス、
そしてヘッドボードが厚みのあるクッションになっている、
これは今まで見たことがありません。
寝ている間に知らずにヘドバンしても、これなら大丈夫。
これだけで、睡眠不足の人々はこのベッドに吸い寄せられてしまいそう、
というくらいきもちよさそうな作品でした。
ところで、日本ノミネートとはいっても、
必ずしも日本人によるデザインや日本のプロダクツというわけではないんですね。
日本のエル・デコはこれを推薦しますというニュアンスで、
土俵はグローバルなわけですね。
さて、来年度のミラノで選出されるエル・デコ大賞はどうなるのでしょう?
2009年の大賞では日本の吉岡徳仁さんがデザイナーズ・オブ・ザ・イヤーを受賞しています。

ともあれ、やはり芸能関係の式などと違って、
デザイン関係の式はいたって地味です。
発表する方もされる方も淡々と粛々と進めていきます。
間違っても「○○賞、●●さん」と言われたとたんに「イエー!!!」
とWピースで飛び上がる人とか、カメラマンに変顔してキメる人とかはいません。
もちろん、会場を埋め尽くす人々も、デザイン関係のヒトたちがメインなので、
各作品が発表されても秩序正しく拍手するのみ。
そんなわけで、明日のデザイン界を担うヒトや作品にまつわる祝祭の夕べは、
平和で穏やかなうちに執り行われたのでした。
日本ノミネート13部門の対象作品は11/3まで、アウディ フォーラム 東京の、
2階に展示されるとのことなので、興味があるヒトはぜひ。

ところで、いっしょに行った土井縫工所のD氏のジャケットの襟に、
なんとチャーミングなピンバッジが!
昨今、国内外のメンズファッション誌で、ジャケットの襟に生花や、
花のコサージュや、かわいいブローチなんかを付けているスタイリングをよく見かけて、
メンズファッションもいろいろ可能性が広がっているなあと思っていたのでした。
でも、やっぱり生花やコサージュなんかは、新郎でもない限り、
やたらに手が出るものではないし、
と思っていた所にD氏のピンバッジ。「これこれ!」と思ってしまいました。
モダンにデザインされた花が厚手のフエルトで作られています。
シンプルでベーシックなジャケットに合わせている所もいいです。
これはサンプルとのことですが、
仕事場からちょっと華やいだ場所に行く時なんか、
おすすめのスタイリングかと。