不思議の国のデジタル

先日、夜10時過ぎに、都心の駅から渋谷方面に向かって地下鉄銀座線に乗りました。
ホームに待つ人も行き交う人も、大手町や丸の内方面からの
会社帰りとおぼしき人ばかりです。
ふと気づくと、私の周りの全員がスマホを手にしています。
電車が到着して、中から降りて来る人も、
中にいた乗客も、全員が片手にスマホを持っているのです。
車内を横切る人すら、片手のスマホを、
まるでアンテナのように掲げて、
スマホに道案内されるかのようなポージングで歩いていきます。
やや混雑した車内で、スマホを手に持っていない人は、約3名。
その3人が持っているのは、
中年の白髪混じりのビジネスマンは二世代くらい前のiPod nano、
20代後半とおぼしきショップつとめぽいお姉さんはiPod touch、
10代後半とおぼしき大学生あるいはフリーターぽいお兄さんは、
PSPを握りしめてゲームに夢中。
スマホでないだけで、デジタルデバイスには変わりありません。
これが、昼間や夕方くらいの電車内なら、
まだ、本やノートを片手に持つ人、
ガラケーを覗くおじいさん、
何も持っていない人、
様々なはず。
が、夜10時過ぎの地下鉄では、スマホ率120%の勢いです。
私は、バッグの中に持っているものの、
歩きながら見る気はしないし、
電車に乗ったらメールチェックでもしようかと思っていたものの、
あまりの光景に見とれてしまって、
なんとかこの様子を写真に撮りたいと思ったのですが、
怪しい人になることを恐れて実行できませんでした。

確かに、スマートフォンは持ち運びできるミニサイズのパソコンで、
そりゃまあ、便利です。
スマホにして以来、パソコンで調べたいことも、
手元のデバイスで、いつでもどこでも、手軽にできるようになりました。
でも、だからって、車内の乗客ほぼ全員がスマホ片手って。
まるで30年前のキップか定期みたいに。
バッグやカバンにしまったり、ズボンや上着のポケットにしまったり、
という人も皆無で、ひたすら片手にかざしているわけです。
もはや一心同体。

複数の企業が、腕時計やメガネ型の端末を新発売、もしくは考案中です。
それほど、私たちは情報と抱き合っていたいのだろうか。
なんだか不思議の国に迷い込んだような気がする夜でした。

ついにiPhoneをdocomoが扱うことになって、
チマタにまた、あの機種が増えるのでしょう。

思えば、私たちが携帯電話を使い始めたのは便利だったから。
そして、今もほとんどのキャリアは便利さや機能性を打ち出しています。
そして、今もほとんどのスマホを求める理由は
「デザインがいい」「早くつながる」「操作性がいい」「ゲームしやすい」
などの機能性だと思います。
ところが、iPhoneだけは、選ぶ理由が、
もはやブランドに対する信頼性だと思います。
つまり、iPhoneというクラブのメンバーになりたい。
「使うこと」ではなく「持つこと」に意味がある。
それがiPhoneが築いたステイタスであり、ブランド性なのだと言う気がする。
すべての「人気ブランド」に共通する傾向ですが、
それはもはや信仰に近い。
だから、テレビコマーシャルを見ていても、
ほとんどのキャリアのCFがより享楽的で、
これ持つと楽しいよ、アハ!!みたいな、
テーマパークやレジャー的なノリなのに比べて、
iPhoneのCFはひたすら哲学的です。
「iPhoneでなかったら、それはiPhoneではないのです」
とすら言っていたことがありました。
禅問答?
あるとき、iPhoneのCFかと思って見ていたら、
本当に某宗教系の出版物の宣伝だったことがあって、
iPhone=Mac=信仰という思いを新たにしました。

信じることは確かに、ある面で救われること。
地下鉄でスマホ片手に行き交う人たちに取って、
それは確かにどこかに導いてくれるアンテナなのでしょう。

とか言っても、決して偉そうに上から目線で言っているわけではありません。
実際に今、これまで待ちぼうけだったdocomoユーザーとして、
iPhoneに機種変しようか迷い中です。
手にかざして地下鉄をうろつけば、
神の声が聞こえるかも知れません。

シティ・オブ・トーキョ―

city of tokyo とIOCのロゲ会長がボードを示し、
東京は2020オリンピック開催国に決まりました。
7年後、このアジアの街に、世界中から人がやってきます。
その人たちがまず思うのはどんなことでしょう?
今、世界の都市の建築物は、
とくに新しいビルでは似た感じなので、
東京もさほどエキゾチック感はないかも?
パリのシャンゼリゼ通りの一角は表参道かとみまごうほどだし。
世界中の人が何より驚くのは、その清潔さではないかと思います。
一説によると、シンガポールは東京よりもっときれいだというけれど、
少なくとも東京の都心のデパートやショッピングビルでトイレに入るときの
あの安心できる清潔感。こういう恵まれた状況は、海外ではそうそうないのでは?
そんな日本人は、清潔好きが高じて、長らく無臭が好まれていました。
特に女性が多く手にするものは完璧、それ。
化粧水や石鹸、住居用洗剤などは「無臭」「無香料」が主流でした。
が、最近のアロマブームからか、
香料入り柔軟剤ダウニーの人気からか、
はたまた、そこにショップがあれば半径500m圏内に香りビームをまき散らす、
自然派せっけん「ラッシュ」の人気からか、
近頃「香り」が一気に復権を遂げ、
もうチマタは匂いをフューチャーした商品だらけです。
タバコの匂いなどをとるための衣類・布製品・空間用消臭剤までが
「フローラルの香り」とか「ハーブの香り」とかの匂い付き。
消臭するんとちゃうんか?!
と突っ込みたくなる商品ばかりです。
トイレの便器洗浄剤まで、「ミントの香り」が出たなあと思っていたら、
あっという間に「ラベンダーの香り」や「ローズの香り」が登場。
しかも、無臭ブームが終焉を向かえ、「香り」が復権を遂げたと同時に、
これも復活したのが「デコレーション」。
長い間、スタイリッシュなテイストのお約束であった「シンプル」が、
今やデコレーションに取って変わられているのです。
たとえばファッションビルのポスターや宣伝媒体が、
見事に花や装飾的なモチーフを多用した、
夢見がちでデコラティブ、ロマンティックなラインに変わって来たのが3年ほど前。
ファッションもフリルや花柄が主流になってきて、
食器や生活雑貨もデコラティブに様変わりし、
気がつけばシャンプーや洗濯洗剤までもが、
バラの花やハーブ系の草花をあしらったパッケージのオンパレードで
ものの見事にデコラティブに大変身。
シンプルへの道は長かったけれど、デコラティブへの回帰はあっと言う間でした。
私が物心ついた頃は昭和モダンの真っ最中。
欧米からやってきたポップでちょっとサイケな柄物が王道でした。
冷蔵庫や電気炊飯器、ポットにまで図案化された花がらが、
ドーンとプリントされていたものです。
色はオレンジやちょっとグレーがかったグリーン、
そしてプラスティックのザルは濃いピンクでした。
そこから長い長い時間をかけて、生活様式はシンプル化し、
無地やモノトーンが主流になるまで半世紀は要したように思います。
が、バラの花やクラシカルな唐草模様の復権までに要した時間はものの3〜4年。
しかも図案化した花がらでなく、今日びの花がらはリアルがポイント。
結局、みんな装飾的なのが好きなのかも。
とくに女性の花好きは無視できません。
建物がどんどん無機質なモダン様式になる昨今、
植物などの自然美を描いたリバティプリントが支持された時代のように、
今また日本人は、花の香りや模様に魅せられ癒やされているのかも知れないですね。
で、こんにちは〜、こんにちは〜世界の国から〜、と訪れる人たちを迎える7年後は、
どんな街になっているのでしょう?
そこに至る過程が、今からとても楽しみであります。

オンラインの誘惑

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前回は「例年並みの夏」という長期予報を真に受けて、
とんだ間抜けなことを書いてしまい訂正とお詫びを申し上げます。
とんでもなく暑い!記録的な猛暑の夏でした。
すでに日本は亜熱帯とすら言える、ハンパなく高温多湿な日々でした。
(というか今なお)
今年、あの熊谷を抑えて日本一を記録した四万十市の気温は41℃。
これってもう、お風呂の熱さですよね。
追い炊きせず入れるという省エネぶりです。
ゲリラ豪雨やゲリラ雷雨にも襲われ、
私も乗っていた電車が途中で停まったこともありました。
取材帰りに家からの電話で我が家が停電になった事を知ってびっくりしたり。
停電なんて数十年ぶりのできごとです。
駅を降りたとたん、駅前が真っ暗でまたびっくり。
家までの道の街灯もすべて消えていたので、
スマホの灯りをたよりに歩きました。
しかもスマホ、省エネ設定にしているのですぐ暗くなるし。
いやはや、夜はこんなに暗いのだと言うことを再認識した夜でした。
で、高齢の母を心配して、ご近所の、停電していないエリアの方が、
お宅に避難させてくれました。
エアコンが停まっている家の中は、本当にうだるような暑さだったのに、
怖かったのは母の「暑さは感じなかったけど、真っ暗で不安だった」という言葉。
高齢の方が熱中症に陥る要因がここにあります。
皮膚感覚が若モノや中年の人たちとは違うらしい。
そんなゾッとしたこともあった、記録的猛暑も、そろそろ終わりに近づいている、
ことを祈っております今日この頃、皆さま、夏バテなどされていませんでしょうか?
夏バテ予防には常温の飲み物を飲み、
温かい食べ物を摂って胃腸をいたわるのが効果的だそうです。
野菜たっぷりのスープなんかを積極的に摂るようにして、
夏の疲れを癒したいところです。

とにかく、この夏はあまりの暑さに、
ネットスーパーが大繁盛したとか。
私もよく利用しました。
水やお米など重たい食品を、ただでさえ暑いさなか、運ぶことを思うと、
ついつい自宅で「ポチ」っとしてしまいがち。
便利なネットショッピングですが、寂しいのがそのあおりをくって、
どんどん書店が閉店していくことです。
活字離れとかいうけれど、そして確かに電車の中や飲食店でも、
ほとんどの人が手にしているのはスマホかタブレットではあるけれど、
でも、本を読んでいる人だって、まだまだたくさんいます。
ああ、それなのに、チマタからどんどん消えていく本屋さん。
先日、近所の駅前のビルにあった本屋さんも閉店してしまいました。
近所にもう一軒、比較的大きな本屋があるとはいえ、
昔は駅周辺に4軒あった本屋が、
どんどん店仕舞いして残るはその一軒のみ。
4軒あった頃は、欲しい雑誌も本も、4軒回ればどこかに在庫があったのに。
それぞれに特徴もあって、店主の傾向が出ていておもしろかったのに。
町を歩いていて、普通に本屋がある風景が、日増しに失われていて、
実に寂しい気がします。
私の町も最後の一軒が閉店してしまったら、
住民は本屋難民と化してしまうので、
どうかつぶれませんように。
といいつつ、Amazonヘビーユーザーという、このジレンマ。
だって早いし、確実にほぼ翌日手に入るしね。

本にしろ服にしろ、オンラインでのショッピングには、
欲しいものがあれば検索して探し当てる、
獲物を追い詰めて行くような快感があります。
やっと探し当てて、「ポチ」とする時の達成感と快楽。
リアル店舗をいくつも回って試着して購入するおもしろみと、
モニターで全国や海外までの「仮想商店」をめぐり、
ためつすがめつ眺め入って、アレコレ推察して購入するおもしろみ。
オンラインのショッピングは雨の日も風の日も、停電でも無関係なのが強みです。
そろそろ秋のシャツが欲しい気分ではありませんか?
「ポチ」っとして快感を味わってみてください。

ロイヤルなカジュアル

猛暑のはずが一転、今年の夏は例年並みとか。
とはいえ、例年が猛暑なのですから、なんともはや。
ただ、近年では2010年が記録的猛暑だそうで、
そこまでは暑くならないというのが気象庁の予報です。
ともあれ、今年は7月のはじめから蒸し暑くて、
もはや夏バテしている人も多いようなので、
お天道さまどうかお手柔らかに、と祈ってしまいます。

そんなさなか、別の意味でホットだったのがロイヤルベビーの誕生です。
英国はおろか世界中から報道人が集まって大騒ぎでした。
お産の何日か前から「キャサリン妃、そろそろ入院」「陣痛がはじまり入院」
「今、お産の初期段階にある」と連日の報道。
「ああ、今、イキんでるのね」と
世界中に「そのシーン」を想像されているキャサリン妃も
ちょっとお気の毒と思いました。
そして生まれたのは王子、将来のキングでした。
誕生の翌日、ウイリアム王子とキャサリン妃が、
ロイヤルベビーを抱いて初めて国民の前に姿を現しました。
この時、病院玄関に登場した
ウイリアム王子とキャサリン妃の服装が新鮮で印象的でした。
まず、キャサリン妃はブルー地に白の水玉のワンピース。
胸の下あたりでギャザーを寄せたシンプルなデザインです。
ウエディングドレスで有名なジェニー・パッカムに依頼した特注品とのこと。
とはいえデザイン的には特注でなくても、
カジュアルブランドやセレクトショップで探せそうなシンプルなもの。
その場合、生地にもよりますが手が届きやすい値段のはずです。
一方王子はブルーと白の細いストライプのシャツに黒いジーンズ、
こげ茶のバックスキンのスリッポン。
「国民目線の王室」を提唱するウイリアム王子夫妻だけに
いかにもイマドキのヤングカップルというカジュアルスマートなスタイルです。
ではここで、31年前にウィリアム王子が誕生した時、
王子を抱いて出て来たチャールズ皇太子とダイアナ妃の
スタイルを振り返って見ましょう。
場所は今回と同じセント・メリー病院。
ダイアナ妃はグリーン地に細かい白の水玉のワンピース。
30年前の流行を反映して、オーバーサイズかつ膝下丈、
いわゆるミモレ丈のワンピースで、
今見るとやたらユル〜い感じに見えてしまうのは仕方ないかも知れません。
そののちファッションリーダーとしてメキメキ頭角を現したダイアナ妃の、
ちょっと野暮ったいお嬢さんという結婚当初の初々しさを見ることができます。
が、よりそうチャールズ皇太子のスタイルたるや。
ブルーのドレスシャツにレジメンタルタイ、
ネイビーのペンシルストライプのWのスーツにはネイビーのシルクのポケットチーフ。
フル装備ともいうべき、隙のない着こなしです。
いつなんどきもクールビズと無縁のタイドアップ紳士、
それがチャールズ皇太子であります。
そして31年後、初孫であるロイヤルベビーに会うため、
病院を訪れた皇太子のいでたちは?
もちろん淡いブルーのドレスシャツに黒と金のレジメンタルタイ、
細かいグレンチェックのWのスーツにブルー系ストライプのポケットチーフ、
茶色いウイングチップの靴。
これまたダンディーな着こなしで、チャールズコレクションに揺るぎなし。
寄り添うカミラ夫人はフリル状の衿がついたドレッシーな長袖ワンピース。
色が白なので結婚式にはNGとしてもデザインでいえばセミフォーマル。
夫婦揃って親戚の結婚式に参列できるくらいのフォーマル度です。
かたや、お二人に先立って病院に現れたキャサリン妃の両親のスタイルは、
うって変わってカジュアルスマート。
パパはロンドンストライプのシャツに紺のWのブレザー、
白いコットンパンツに茶色いローファー。
これがかなり履きこんであるヤツで、
新品で来ないあたり、逆にかなりのオシャレさんです。
ママはブルーがかったグレー地のシルクワンピース。
ショールカラーで肩にシャーリング、ウエストや腰の辺りはタック止めでタイトに、
胸と腰から下はフレアでゆったりと。
スリムからグラマー体型までカバーできる賢いシルエットのドレスです。
ちょっとクラシカルでフェミニンなフォルムに、
花模様のようなモチーフが散っているのもチャーミング。
中央で結ぶウエストのリボンをキャサリンママは、
ちょっとサイドにずらして結んでいました。
ブランドはオーラ・カイリー(英国のデザイナー)で、日本円にして約5万円。
庶民でも手が届きそうなアイテムです。
両親ともいかにもオシャレな中年夫婦といった印象。
キャサリン妃の両親はパーティーグッズの通販サイトを起こし、
それが大繁盛してひと財産築いた人たちだけに、
人の購買欲を掴むのが上手そうです。
カジュアルな服をスタイリッシュに着こなしてこそ、
一般人消費者の信頼を得られるというもの。
そしてウイリアム王子とキャサリン妃夫妻の両親としては、
Wのスーツとフォーマルテイストなドレスで決めたロイヤル両親より、
こちらの夫婦のほうが、
ファッションコーディネート的には相性バッチリという感じです。
日本でも今や団塊世代がシニア世代に突入し、
VANやJUNのアイビースタイルを経験した人々が、
国内のシニアファッション感覚を底上げしています。
この手のヨーロッパの中年たちとのファッションの差が、
ほとんどなくなってきたと思います。
むしろファッションの差は国や人種ではなく、趣味思考の違いで出るのが、
グローバル時代の特徴かも知れません。
2人のグランマのヘアスタイルの違いには、それが如実に表れているような気がします。
まず、キャサリン妃のママはストレートのミドルレングスで、
前髪は目が隠れる程度の長さを斜めに流しているスタイル。
限りなくナチュラルで、日本でも30〜40代くらいの女性向けファッション雑誌で、
よく見られる髪型です(ちなみにキャサリンママは58歳)。
一方、カミラ夫人は、肩に着かない程度の短い髪を、
顔の輪郭に沿って外巻きに巻いています。
どこかで見たような髪型だと思ったら、ずばり聖子ちゃんカット。
イマドキ、ここまで毛先をクルクル外巻きにカールしている人も珍しい。
近頃ハヤリの巻髪とも違います。
80年代で髪型のセンスが止まっている、日本でいえばさしずめ
片山さつき先生のようなテイストでありましょうか。
かように異なるファッションテイストを持つ
キャサリンママとカミラ夫人に共通するのは、
2人ともバッグと靴がベージュだったことだけ。
まあ、これは洋装における夏場のスタイリングのお約束かと。

未来の英国王「ジョージ・アレクサンダー・ルイ」王子さまは、
さっそくキャサリン妃の実家に両親とともに里帰り。
パパは育児休暇を取っているらしいです。

ところで、誰を見てもスッキリしたシャツを着こなしている英国人男性たちを、
ワイドショーで見ていたらカメラが一転して、
現地で中継する日本人レポーターがアップに。
すると、いきなり「ボタンホールが色違い」とか「前たてが異素材」とか、
小ネタを効かせたシャツをお召しになっている方々が。
とたんに猛暑を感じた夏の午後でした。

ワクワクのファッションエネジー

HAL東京
先日、久しぶりに新宿伊勢丹に行って来ました。
リニューアル以来、注目のショッピングスポットなので、
館内や近辺にはオシャレさんが集まっています。
が、渋谷や原宿、表参道あたりを歩いているオシャレさんたちと、
何かちょっとちがう雰囲気なのです。
原宿や表参道あたりのオシャレさんは、
服の仕事に従事している感じの人たちが多く、
スタイリングが自然です。
が、新宿の、バーニーズ・ニューヨークや
伊勢丹あたりで見かけるオシャレさんたちは、
「ファッション命!」と腕に彫ってありそうな、
渾身のアイテムに渾身のスタイリングの人が目立ちます。
それはそれで楽しい眺め。

デパートやファッションビルを見る楽しみは、
服や靴、バッグ、アクセサリーや小物雑貨類など、
ファッションにまつわるすべてのものを見たり接したりすること。
わけもなくワクワクしてきます。
それは何か新しい物、ほかにはないものを作ってやろう、提示してやろうという、
作り手の思いや勢いがダイレクトに伝わってくるからかも知れません。
もちろん、電化製品とか生活用品をはじめ、
ICT関連の製品や医療用製品も、
そういう意識で作られているのは確かですが、
それらの目的は「使いやすさ」や「時間短縮」や「効き目」であって、
その結果、形も新しくなるのが普通です。
ところがファッションは「新しさ」の打ち出しかたが、
もろ形に見えていて、そこが一番大きなセールスポイントだったりします。
もちろん、着心地、持ちやすさ、耐久性なども重要なのですが、
まず、人が一番先に気にするのはデザイン。
それこそがファッションのおもしろさです。
だからこそ、そういうモノを作ろうとする人たちの熱意や切磋琢磨が、
一直線にこちらに伝わって来て、それが私たちを楽しませてくれる、
すなわち消費者の「物欲」や「購買欲」をそそるわけです。

そんなファッションでメンズのトレンドといえば、
以前も書きましたが「男の花柄」と、
ここ何年かでいえば「スカート」。
「スカート男子」という言葉も生まれているので、
もはやトレンドというより定番の仲間入りでしょうか?
コレクションなんかでは、必ずどこかのメゾンが、
スカートを提案しています。
これまではスカートを取り入れたブランドは、
ほとんどユニセックスなデザインを特徴とする所が多かったので、
コレクションでは中性的な少年ぽいモデルがスカートを履いて登場していました。
ところが、2013 Autumn/Winterのロンドンコレクションでは、
マッチョといえるようなタフガイが続々ミニワンピースを着て
ランウエイに登場したブランドもあって、
これなんかもはや、罰ゲームかと思うようなスタイル。
ジェンダー(性別)に対する重大な問題提起なんだろうかと思いました。
女子が普通にパンツスタイルでいるのだから、
男子がスカートを履き始めるのも時間の問題だったのかも知れません。
考えて見れば、私たちはキモノという、
究極にユニセックスな衣裳をルーツに持っています。
まあ、柄が女物、男物の違いがあったり、武士はハカマを履いたりしましたが
町人は男女ともキモノだけです。
かぶきものと言われるような遊び人は、
女物の派手な柄の着物を羽織って出歩いたといいます。
ある意味、日本は昔から欧米諸国よりずっと自由で、
ジェンダーフリーなファッションのお国柄だったのですから、
今、そっち系ファッションやサブカルが諸外国をリードしているのもわかりますね。
ショッピングモールやデパートでそんなモノたちを見ると、
あちこちでエネルギーがポンポン爆発している感じで、
いくつになってもワクワクしてしまうのです。
*写真は、同じ新宿でも西口。HAL東京の近未来的ビルです。

プロの仕事

Happy Senior Couple Walking by Sea on Tropical Beach
蒸し暑い日が続くかと思えば、半袖では少し肌寒い夕暮れもあり。
この時期は着るモノに迷います。
電車や地下鉄はエアコンが効き過ぎている場合もあるし。
薄い1枚仕立てのコットンや麻のジャケットが活躍する季節ですね。
そして、薄着になってくると、誰もが多少はボディラインが気になるもの。
男女の差を問わず、服に興味がある人なら避けて通れないポイントです。

先日、近所で、ある女性グループを見かけました。
その一群に視線を奪われたのは、ひとえにその中の一人の女性の存在。
有名人だったわけでも、目を奪う美人だったわけでも、
目立つコスプレをしていたわけでもありません。
たしかに美人ではあったのですが、最初に視界に飛び込んできたのは、その姿勢でした。
顔が小さくてほっそりして手足が長いという、確かにスタイルそのものもいいのですが、
何よりも、すっと伸びた首筋と背筋の醸し出す立ち姿の美しさ。
その姿勢を作り上げている意志やカラダ哲学とでもいえそうなものに圧倒され、
同時に、およそ重力を感じさせない軽やかさに感動。
しかも、軽やかだけれど、1本ビシッとしたものが中心に張っているような、
そう、投げ鎗とか吹き矢とか飛んで来たら即座に飛び立ちそうな
野鳥のような緊張感漂うカラダと申しますか、
常に持ち主のコントロール化にある体つきなんですね。
白いシャツに黒いパンツ、モノトーンのプリントスカーフといういでたちの彼女は、
ものすごく背が高いわけではないのに、その場にいた10人あまりの誰よりも高く見え、
誰よりも優美で、とにかく視線を一瞬にして奪ってしまう存在でした。
見とれていたら、グループの中の一人に友人がいて、声をかけられました。
聞いてみると、抜群の姿勢の彼女は元バレリーナで、
現在はヨガやピラティスのインストラクターをしている方と判明。
やはり、あの姿勢や引き締まったボディラインはプロの仕事だったのです。
しかも、想像していた年齢より10歳ほど上でビックリ。
童顔系の美人だったので、それだけでも若く見えるだろうとは思いますが、
やはりあの姿勢のよさ、伸びた背筋、立ち姿や歩く姿の美しさが若々しく見える要因。

昔パリで、シャネルタイプのスーツを着て、
バーキン風の大きなバッグを片手に持ち、
10センチヒールのパンプスを履き、
大股でさっさと私を追い越して行く女性がいました。
シルバーグレイの髪からのぞく耳には、大きな大きな赤い宝石のイヤリング。
印象的には40代前半くらいの働き盛りの女性です。
その時、ふと、ふりかえった顔は、なんと驚きの推定年齢80歳超え。
真っ赤な口紅の顔はしわだらけです。
が、大股で歩く姿の背筋は伸び、全身が生命力で弾けそうな感じです。
当時、20代後半だった私より、確実に元気な歩きぶりでした。

もちろん、若さはカラダだけでなく、
アンチエイジングを施した顔だけのことでもなく、
頭の中身の柔軟性も大きなポイントです。
が、若々しい体つきをしているということは、
多分、頭の中も柔軟なんだろうと思わせてくれます。
一方、猫背で腰が曲がっていても、
話の中身は別人かと思うほど若い、という人もいます。
逆に、アンチエイジングで奇跡のような外観を手に入れていても、
話の中身は美容とカラダ作りだけで、若いとか老けてるとか以前に、
オツムが筋肉化してるんじゃないかという人もいます。

我らボディメイキングに関するアマチュアは、
プロにはとてもかなわないのだから
素人は素人なりに、すっきりした姿勢でいられるようになりたい。
とりあえずこの夏は、シンプルな白いシャツをスマートに着こなすために、
無理のない程度にすっと伸びた背筋と首筋をマスターしたいものだと思いました。

そう、シャツを着た背筋がピシッと伸びたあなたの後ろ姿に、
今頃、誰かが熱い視線を投げかけているかも知れませんよ。

ショッピングハイ

渋谷ヒカリエ
ヒカリエ

先月リニューアルオープンした渋谷の東急百貨店東横店。
1階の『スクランブル Ⅰ」が評判です。
ここは「もうひとつのスクランブル交差点」がテーマ。
そう、渋谷のスクランブル交差点といえば、もう日本人にはおなじみの光景ですが、
海外からの観光客にはとても珍しい眺めのようです。
あれだけ大勢の人たちが、ぶつかりあうことなくスムーズに流れ、
よく整然と交差して通れると、異国の方々は感心することしきり。
という、今や名物というか観光名所のひとつとも言えるスクランブル交差点の賑わいを、
店内に再現したのが「スクランブル Ⅰ」ということのようです。
ここは日本初出店やデパート初出店を含む32のブランドが展開されている、
レディース向けファッション&雑貨のフロアで、
駅直結という利便性もあり、
週末のアフタータイムはまさにスクランブル交差点状態になります。
バッグや靴、アクセサリー小物などのラインアップも、
ほかではあまり見られないセレクションが大きな魅力。
しかも働く女性を意識して、普段の通勤時に持って、
ちょっと気分がリフレッシュできそうな、
そんなものに出会えるのも嬉しい。
結局、ショッピングの楽しさというのは、
それを手に入れて身につけることで、当社比オシャレ度が増すのはもちろん、
「わ、こんなの買っちゃった、ウキウキ」という気分的満足度が大きいと思います。
最近、婦人用のトレンドカラーは蛍光ピンクやオレンジ、
イエローなどのネオンカラーで、
グレーやベージュにショッキングピンクなどを効き色に加えたアイテムも流行中。
ということもあって、東横のそのフロアも鮮やかな色合いで、
まるで近未来のショップのような躍動感と高揚感があります。
それがその場所独特の賑わいとお祭り感覚をもたらしています。
お祭りに並ぶ夜店では、ついつい高い水ヨーヨーや蛍光のビニールの腕輪でも買ってしまうように、
ショッピングハイのような高揚感が演出されている「スクランブル Ⅰ」。
’00年代はハイエンドな高級ブランドを集めた、
ちょっと気取った演出が多かったし、
’10年代初期までナチュラル&オーガニックな、
エコロジカル演出が目立ったデパートのファションフロアに、
ミラーボール輝くバブル時のような、イケイケ感が戻って来たような気がしました。
一方、南館6階の婦人服売り場の奥には、
NYで人気のパンケーキカフェがオープン。
売り場内に、買い物ついでにひと息つけるカフェがあるというのは
とてもポイントが高いと思います。
店の奥にあるので、そこにたどり着くまでに色々な服や雑貨を見ているわけで、
お茶を飲みながら「やっぱりあのバッグ、欲しい」と欲望がふくれあがってしまったり。
カフェの奥の席からはヒカリエが見えます。
眼下には東急東横線のコンコースの屋根。
そこからヒカリエに伸びる連絡通路。
昭和から平成へ、そして未来へと繋がる時間が、ひとつの絵になっているようで、
とてもおもしろい眺めです。

写真は、カフェの窓から望む渋谷の街。ところで、ヒカリエって、色々な形態のビルを何個も積み重ねたような、
変わった建物だということにも改めて気づきました。

ロックンロール・グランパ

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GWも終わり、また仕事再開です。
仕事の合間や移動中は、もっぱら音楽を聴く派です。
昔ほどつねに「新譜や新人のいいのないかなあ」と
しょっちゅうレコード屋(死語でした。CDショップね)で
探しまくるということはなくなり、
今は昔からのお気に入りを聞くことが多いです。
だって、ロックすれっからしの一人だもん。
もうほとんどの新しさはすでに聴いてるもん、という状況。
とはいえ、昔なじみの人が新しいアルバムを出したといえば、やはり気になります。
でも、昔より色褪せた感がある場合や、
昔より張り切りすぎてる割りに空回り感がある場合など、
がっくりすることも多々あり。
そんな中。
うーん、やっぱりすごい!
というのがデヴィッド・ボウイの新譜でした。
いわずと知れたロックン・ロールヒーローの一人、
その10年ぶりのアルバムが注目を集めています。

彼がブレイクしたのは1970年代初期のこと。
それまでややヒットを何曲か放っていたものの、
「スターマン」というシングルの大ヒットで一躍スーパースターに。
同曲が入った”The Rise And Fall Of ZIGGY STARDUST AND The Spiders From Mars”
というアルバムもヒットしました。
これは宇宙から来た男が”ジギー・スターダスト”と名乗り、
ロックバンドを結成し、若者のヒーローになるけれど、
最後は破滅して自死を遂げるというコンセプトアルバムで、
どこか切ない音と、独特のストーリーを持つ歌詞に魅了される人が続出したのです。
同名のバンドとともに繰り広げるコンサートは、
アルバムの中の世界を再現したような劇的なものでした。
私は72年にロンドンのレインボーシアターで行われたコンサートを見ることができたのですが、
これまでの生涯で見たライブのベスト3のひとつであることは確実です。
リンゼイ・ケンプという、これまた世界的なパンマイムのアーティストやその劇団メンバーが、
神秘的にして扇情的に躍る中で、メイクしたボウイたちがパフォーマンスを展開します。
それは生まれて初めて見る、まさに別世界で、私は劇場の椅子に打ちつけられたようになりました。
なんだか、生の心臓を取りだして見せられているような生々しさを覚えたものです。
その頃私はまだ10代で、少女と言ってもいい年頃。
そんな頃にそうしたものを見ることができたのはとてもラッキーなことでした。
以来、ボウイは私のヒーローになりました。
のちに、ボウイをモデルにしたアメリカ映画「ベルベット・ゴールドマイン」の監督、
トッド・ヘインズが来日した際にインタビューしたのですが、
彼がボウイを特別視している理由は「短髪で登場したこと」でした。
「70年代のロック・ミュージシャンはみんなロングヘアだった。
T-REXのマーク・ボーランも音は革新的だったけど髪は長いままだった」
事実、ボウイも「スパイダース〜」を出すまでは長髪でした。
ところが、スパイダースを出すにあたって、彼は長髪をバッサリ。
短髪をオレンジ色に染め、のちのパンクヘアのように逆立てて登場したのです。
ロックといえば長髪という時代に、短い髪がおったっていて、
しかも化粧してラメの服を着た男は、逆に狂気じみてヤバイ雰囲気でした。
トッド・ヘインズは「そのいさぎよさが時代を切り拓いた」と言いました。
ボウイは、希有なソングライターであると共に、
優秀なプロデューサーでもありました。
自分をどう売り出すかにかけて、天才的な演出力があったのです。
当時、彼は「飛行機は怖いから乗らない。海外でもどこでも船でいく」
ということで知られていました。
初来日した時も横浜港に船で着いたのです。
私も友達と出迎えに行って(若者はヒマです)、
岸壁から船上のボウイを見つけて大感激。
手を振ると振りかえしてくれました。
その話をトッド・ヘインズにしたら、彼はすごくうらやましがってくれたものです。
のちに、ボウイのこの飛行機嫌いは大嘘で、実はエピソード作りの一環と判明。
飛行機、全然平気で、じゃんじゃん乗ってるらしいです。
そういえば、10年ほど前に来日した時も飛行機で来てたしね、多分。

ボウイ・短髪でスターダムへ!以来、40年強。
10年ぶり、御年66歳のボウイが作ったアルバムは、
ベテランミュージシャンの手垢や溜まった脂肪を感じさせません。
新鮮でサラリとしていて、それでいて、まごうことなきボウイ。
継続は力なりといいますが、20代半ばから第一線でスターを張っていて、
60代半ばの今も、こんな音を作れるって、その感覚の鋭さを改めて実感します。
ネットなどに公開されているPVも、いやあ、すごいです。
声高でない新しさがじんわりと、目を覚まさせてくれます。
何から目覚めるかは、人それぞれですが、
トシなんて、取ってる場合じゃないぞとか、
続けること、続けられることこそが才能だ、とか、
まあ、色々、ほどよく目覚める、そんなパワーがあります。
「Where Are We Now? ボウイ」
などで検索してみてください。

現在、ロンドンのヴィクトリア&アルバート・ミュージアムでは
「David Bowie is」と題された一大ボウイ展が開催中です。
(〜8/11まで)
彼はイギリスの有名なミュージシャンの中ではじめて、
日本人デザイナーの服を着た人ですが、
70年代初期に山本寛斎がデザインしたコスチュームも、もちろん展示されています。
3月の開幕時にはテレビ、ラジオ、新聞などがボウイ一色に染まり、
その時ロンドンに行った友人いわく
「猿でもわかるデビッド・ボウイ状態」だったと言います。

http://www.vam.ac.uk/content/exhibitions/david-bowie-is/

一方ローリング・ストーンズはこの夏、50周年記念コンサートを開催するとのこと。
平均年齢68.5歳。
じーちゃんたち、孫の世話してるヒマはありません。
高齢化社会のお手本のような。
老いてなお斬新。
というか、老いも若きもがんばりましょう。

*写真は、
上が10年ぶりの新譜。”The Next Day” 。ジャケットデザインは1977年の自身のアルバム”Heroes”を下敷きにして、四角いスペースでカバーしてあります。さらにアルバム名に二重線を入れて消し、DAVID BOWIEと加筆。過去の”英雄”はもういないよ、次の世界に行くよ、というメッセージなんでしょうか?

下の3枚はすべて、70年代初期のボウイのアルバム。左から”Pin Ups”。1964-67のヒット曲のカバー集。
初期ピンク・フロイドのヒット曲”See Emily Play”など聴き所満載。かなり忠実なカバーです。
ちなみに隣の女性はミニの女王、ツイッギーです。
中央が”ZIGGY STARDUST”。ビートルズのサージェント・ペッパーと並び、ロックの歴史的名盤と言われます。
左は”Aladdin Sane”。ジギー・スターダストの大ヒットのあとにリリースされたもので、
Ziggyのあらゆる濃さと爆発寸前の高まりや切なさというようなものから、肩の力が抜けて洗練された感じ。
(5/8 写真とキャプションを追記しました)
(5/10 曲名が間違っていたので修正しました「Where We Are Now? 」→「Where Are we Now? 」)

初夏のスタイルは栄養たっぷりに。

 すでにゴールデンウィークがはじまっていますが、
みなさま、いかがお過ごしですか?
 今年は、間に平日が入るので、カレンダー通りで行けばまとまった休みは最長4日間。
 一週間から10日も休みが続くこともある年から見れば、
めでたさも中くらいというところでしょうか?
 とはいえ、社会人にとっては4日間でもありがたいお休み。
 この間にゆっくり英気を養ってください。
 そして、5月1日からはクールビズがスタートします。
 今年は特に節電目標ナシと言われますが、やはり電気は大切に。
 4月に入社したばかりの新入社員にとっては、
クールビズで初のノーネクタイ姿ですね。
 やっとスーツにネクタイというスタイルに馴れてきたと思ったのに、
いきなりタイを外せと言われても、ちょっとキメにくい、というかキマらない。
と戸惑う方も多いのでは?
 タイのないシャツ姿、どうにも支えを失ったようでバランスが取りにくいという場合、
ジャケットの胸にチーフをプラスしてみてください。
 チーフって、いきなりハードル高い!と思いました?
 いやいや、ハンカチを胸にさりげなく入れる感覚でOKです。
 きれいにナプキンのように畳むのもアリですが、
 ハンカチの中央をつまんで持ち上げ、それを二つ折りにして、
さりげなくポケットに入れる、それだけで粋な雰囲気になります。
 ストライプのシャツには、思い切って水玉のものや柄物、
 無地にはペイズリーや花柄、
そしてリバティ柄のようなテキスタイルのシャツには、柄の中の1色を選ぶと
すっきり合わせられるし、シャツもチーフも両方が引き立ちます。
 白無地には?
 今年はピンクやオレンジなどが注目のカラーなので、
 思い切って赤系のチーフを合わせて、
陽気なイタリアンぽいコーディネートはいかがでしょう?
 メンズのインポート物セレクトショップなどでは、
花柄やレモンなどフルーツ柄のジャケットやパンツも目立ちます。
もちろんレディスでは数年前から花柄、フルーツ柄はトレンドのメイン。
また、黄色やオレンジ、グリーンなどはビタミンカラーと呼ばれ、
見ているだけでゲンキになってきそうな色です。
 自然志向に加えて、華やかさや気分をアップさせてくれる要素が、
花柄や果物、カラフル人気の要因でしょうか?
 初夏からのビジネスウエアに、チーフなどで明るい柄や色をアクセント的に加えて、
ハッピーかつ前向きな気分を演出してみてください。
 初夏からのコーディネートと毎日に、栄養を与えてあげましょう。

リバティの花

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桜前線という言葉があります。
南北に長い日本列島では、南の沖縄からはじまる桜の開花が
次第に北上していきます。
まるで桜の集団が列島をゆっくり静かに移動していくようなイメージがあり、
この時期はなんだかそわそわします。
北国が故郷の友人が、ある年、GWに帰省したらもう1度お花見ができたと聞いて、
すごくうらやましかったことがあります。

花といえば、日本では「桜」を意味することも多く、
それほど、日本人にとって桜は特別な存在です。
大昔は、田の神が桜の木に降臨すると考えられていて、
村人みんなで山に登り、満開の桜にお酒や穀物を供えて、
あとでそれを飲んだり食べたりして豊作を祈ったのだそうです。
桜の開花を合図に、田植えシーズンがはじまったと言われます。
当時のお花見は、より儀式に近いものだったんですね。
江戸時代になって、お花見はイベント色が濃くなったようです。
そして現代に至るまで、桜の時期といえば、花の下には宴あり。

近所の川岸には見事な桜並木が続いています。
平日に行ってみると、宴の人よりは散歩ついでの人が目立ちます。
1人で花の下に座って眺めている人、
気持ちよさそうに寝ている人、
女同士や男同士の2人連れで座り込んで語らっている人。
花を背景に車椅子に座った90歳近いおばあさんを、
息子さんらしき人が写真に撮っていました。
薄桃にけぶる花とおばあさんのくしゃくしゃの笑顔。
すごくきれいな絵でした。
満開の花の前に立って眺めていると、
幸福感でいっぱいになります。
もう、生きているのか、すでに黄泉の国にいるのかさえ、
どうでもよくなってくるほど美しい眺めです。
「願わくば、花の下にて春死なん」と詠ったのは西行。
「さまざまなこと思い出す桜かな」と詠ったのは芭蕉です。
どちらも、桜を眺めていると浮かんでくるもので、
どちらも、その通り!としみじみ思います。

何はともあれ、見慣れた街の景色の中に、
桜が咲いているだけで別世界に見える。
木が丸ごと1本、花で覆われてしまうというのは、
やはり珍しくも神秘的な眺めです。
年に1度の、この季節は、やっぱり特別な数日間です。

そして、花といえば。
土井縫工所についに、リバティプリントのシャツが登場しました!
花を中心に自然の造形をグラフィカルに描いたリバティプリントが、
確かな造りで上質なドレスシャツになりました。
物語の世界に引き込まれるようなテキスタイルの魅力を楽しみながら、
ワンランク上のスタイリングを演出してみてください。