桜の季節のAI育て

春です!
桜前線北上中で、日増しに景色が華やかになります。
新入社員の皆さまは慣れないスーツで、
まだ緊張の日々をお過ごしでしょうか?
もしレギュラーカラーのシャツを着ているのだとしたら、
セミワイドカラーのシャツに着替えてみては?
首回りが少しスッキリ見えて、
気持ちまでリラックスしてくるかも知れません。

さて、近頃、チマタを騒がせているAIの存在。
人工知能 “Artificial Intelligence”です。
「AI、世界第一位の棋士に勝利」とか、
「AI、創作の小説が星新一賞の一次審査合格」とか、
「AI、ヒットラーは正しいと発言して緊急停止」とか、
連日、そんなニュースが報じられています。
AIといえば思い浮かぶのが 2001年公開の米SF映画「A.I.」。
これは家族の一員としてレンタルされている少年型ロボットが主人公で、
人類に役立つよう開発された道具であるにもかかわらず、
というか、だからこそヒトを愛する心を持つように
プログラミングされてしまったロボットの、
切なくやるせない物語でハンカチ必携の映画でした。
で、こんな風に優しい心を持てれば人類にとって問題はないのですが、
一方、1968年公開のSF映画「2001年宇宙の旅」には
全知全能意識を持ってしまって人類を支配しようとするAIが登場します。
HALと名付けられたそのコンピューターは宇宙船に搭載されています。
形は機械ですが、ヒトと会話することができ、
ヒトは会話しながらコンピューターを操作するシステム。
宇宙の旅が進むうち、プログラムのミスか何かでHALは野心を抱きはじめ、
自分の敵とみなす乗り組員を抹殺したりする。
主人公がHALの故障や悪事に気づいて電源を切りシャットダウンするとき、
HALはその人物から以前教えてもらった歌を歌い出す。
つまり情にすがろうというわけで実に人間的です。
「ヒットラーは……」と発言して停止されてしまったAIのTayや、
あのペッパーくんも、
ヒトと交流することによって言葉を覚えて開発されて行くシステムとのこと。
だから、教えるヒトが悪意を持って悪い言葉や邪悪な思想をふきこめば、
どんどん悪に染まって行くのです。
これまた極めて人間ぽいです。
今、人類はヨチヨチ歩きのAIを育児している時期なのかも。
子育てならぬAI育て。
ここで間違うととんでもない結果になってしまうんですね。

チェスや碁の世界一の人に勝ったというのは、
文学でいうとノーベル文学賞をとったレベルです。
一方小説の賞の一次審査に通ったというのは、
ちょっと文章作りがうまい人で運が良ければ比較的簡単なので、
こちらはまだまだ発展途上。コラムニストはまだ安泰かも知れません。

とはいえ、今から30年後には2045年問題が控えています。
これは、優秀なAIがさらに優秀なAIを作り、
さらにそいつが優秀なAIを作り、ネズミ算式に優秀なAI作りを続けて行くと、
やがて人類にはコントロールできないレベルのAIが生まれてしまう。
するとどうなるか?
地球の支配者はもはや人類でなくAIになってしまうということです。
計算上、2045年にこのときを迎えるらしい。
あまりにも未来過ぎて、はあ、という感じですが、
その頃までには人類もなんとか対応策を発見できているのでは?
でも、その対応策もAIに考えてもらうしかないんだろうから、
あいつら(AI)抜け道作るよなあ、と疑心暗鬼な今日この頃。

とりあえず今のところは、スマホの検索エンジンに声をかけるくらいの
平和なAIとのつき合いかたです。

プレジデントの行方

アメリカ大統領選挙が大詰を迎えています。
ヒラリー・クリントンvsドナルド・トランプの最終決戦は、
どういう結果をアメリカにもたらすのか?
大国アメリカのトップは、地球のなりゆきにも大きな影響をもたらす存在ですから、
世界中が見守っているこの一戦。
60年代のアメリカの左翼活動家、ジェリー・ルービンはかつて、
「米大統領選挙は日本や同盟国の国民も投票できるようにするべきだ。
だって、誰がなるかで周りの国も左右されるんだから」と言っていました。
今のところ日本バッシングで息巻くトランプさん。
昔から何かと話題を振りまいていた人です。
マンハッタンの5番街で金色に輝くビル、トランプタワーが有名な不動産王です。
ビル同様、本人もギラギラした感じでエネルギッシュ。
トークやスピーチは切れ味最高、毒舌・舌禍のオンパレードでシャープそのものなのに、
体型や服装は、どうもシャープとはいえないシルエットです。
だぼっとした印象のスーツにホワイトシャツ、
そこに赤か青、たまにピンクなどの無地のタイ。
柄物は99%レジメンタルタイです。
すっきりした細身のスーツやシャツに、渋い色や柄のタイをきりりとしめた、
オバマさんのようなスマートさはありません。
とはいえ今回は、ドナルドさんのみでなく、ほかの候補者も、
あまりおしゃれ感を漂わせている人がいないのが現状です。
1人、ヒラリーさんが、すっきりしたシンプルデザインのジャケットを着こなして、
現代的な都会感を漂わせています。
ちょっとゆるっとしたボディラインをうまくカバーしつつ、
知的で凛々しいたたずまいに見せる。
さすが女性候補はこのあたりを心得ています。

ところで、今回の大統領選のもうひとつの特徴は、
目玉候補がみんな高齢なこと。
民主党の大統領候補ヒラリー・クリントン 68歳、
ライバルのバーニー・サンダース 74歳
共和党の大統領候補ドナルド・トランプ 69歳。
(共和党内でのトランプさんのライバル、テッド・クルーズ氏は45歳、
もう1人のライバル マルコ・ルビオ氏は44歳ですが、
ほぼトランプさんが共和党の代表になると見られています)
日本で言えば前期高齢者(64〜74歳)にあたる人たちが、
全米を移動しての選挙活動を展開して演説を繰り広げているのですから、
そのタフさに驚かされます。
これまで選挙ごとに若返っていたという印象のある米大統領目玉候補が
今回は一気に年齢を上げてきた点が、とても興味深く感じます。

高齢者というキーワードつながりでいえば、
近頃話題の映画『アイリス・アプフェル!94歳のニューヨーカー』は、
タイトル通り、94歳のファッションアイコンに迫ったドキュメンタリーです。
60年代からインテリアデザイナーとしてホワイトハウスの内装にも関わっていた
アイリスは、80代でファッションプランナーとしても活動を開始。
トレンドやブランドにこだわらない自由な発想でコーディネートするスタイルは、
ドリス・ヴァン・ノッテンやアレキサンダー・ウォンなどの
若手デザイナーたちにもファンが多いのだとか。
実際、彼女のスタイリングは金髪のショートヘアに大きなフレームの眼鏡、
真っ赤なルージュ、カラフルな色の大胆なプリントのトップスに、
エスニックな大ぶりのアクセサリー、といった、目にも楽しいコーディネート。
94歳という高齢の女性がこういうキャラクターで注目を集めて、
ファッションアイコンとしてリスペクトされているという点に、
アメリカのファッションの歴史の深さを感じます。
ひるがえって、日本でファッションアイコンとして話題になるのは、
国内外のブランド物をいち早くゲットして身にまとっている、
若くてかわいい着せ替え人形さんたちばかり。
それもまあ、ブランド品ビジネスの動く看板なのだから仕方ないのですが、
この高齢社会、アイリスのような存在が早く登場して
注目を集めてほしいもの。
最近、おしゃれな高齢のお嬢様方(みの・もんた的表現)の写真集なども、
出始めていますし、街行くシニアのファッションも日々おしゃれにはなっています。
が、目を見張るほどおしゃれな人が多いのは、
やはり銀座や青山、恵比寿や目黒、田園調布あたりを闊歩する、
富裕層高齢マダムというのが現状です。
ただ、10年後くらいには、そこいらの街を歩く年金生活マダムでも、
目を見張るおしゃれさんになっている時代がくると思います。
たとえばそこいらのファミレスでも内装が、
一昔前のおしゃれカフェくらいのインテリアになっている今日このごろ。
10年後には庶民派おばあちゃま・おじいちゃま御用達の、
洋品屋さんのファッションアイテムが、
H&M、くらいにはなっているはず。
だいたい、年を重ねるほどいろいろなしがらみから解放されて、
肉体的や経済的には不自由な面もあるかもですが、精神的には
本人さえ望めば、もう一度青少年のごとく自由になれるはず。
老いてこそ、服に惚けていたいものです。
と、米大統領選の高齢化に、日本もうかうかしていられないぞと思う春のはじめです。

ジギーは★になった。

今年は、はじまって早々、日本国内を騒がせる芸能ニュースが二連発で出た。
そして世界を揺るがす大きなニュースは、デヴィッド・ボウイの死だろう。
70年代初期、ボウイと並ぶ、いや、一時期はボウイ以上の人気ポップスターだった、
T-REXのマーク・ボーランは、1977年に30歳の若さで、
早々に世を去ってしまった。
そのせいか、対比するボウイは90になっても100歳を過ぎても、
粋なご長寿ぶりを見せてくれるのだとばかり思っていたフシがある。
遺作になったアルバム「★(Black Star)」は、すでに死期を悟っていた彼が、
闘病しながら制作し、彼の死が発表される数日前にリリースされた。
(同名のシングルは昨年に先行発売されている)
プロデューサーのトニー・ヴィスコンティによれば、
このアルバムは彼からの最後の、ファンへの贈り物だったのだという。
見事。
世に出たときから、セルフプロデュースの天才だったボウイだけれど、
死に際してなお、スマートな幕の降ろし方をきちんと考えていたのだ。
決して華美でも大げさでもなく、クールに静かに彼は逝き、
それでもきちんとメッセージを残してくれている。
やはりすごいアーティストだ。
1972年、ボウイの出世作である、
“The Rise and fall of Ziggy Stardust with the The Spiders from Mars”は、
宇宙から地球にやって来た男、Ziggyがロックスターになって、
やがて破滅するというストーリーのコンセプトアルバムだった。
宇宙人Ziggyはロックスターになるのだけれど、紆余曲折あって最後には自殺を遂げる。
こんな風に登場したZiggy Stardust=David Bowieは、
彼が創造したキャラクターに乗って瞬く間にスターダムを駆け上がった。
それから幾星霜。
40年以上も、彼は第一線にいて、決して古さを感じさせずにきた。

ボウイをモチーフとして描いたフィクションで、
「Velvet Goldmine」というイギリス映画(1989年作)がある。
監督のトッド・ハインズにインタビューしたとき、
彼自身はZiggy Stardustの頃はまだ子供で、
ボウイやT=REXをリアルタイムでみることはできなくて、
成長してから後追いでレコードや映像に触れたのだと言っていた。
ボウイをはじめとするグラムロックをテーマにした映画を作るに当たって、
彼はなぜ主人公のモデルにマーク・ボーランでなくボウイを選んだのか?
「ボウイは髪をばっさり切ったからね」と、トッドは即答した。
「マーク・ボーランは長いままだった。まだ、過去に未練があったんだよ。
ボウイがショートヘアを立てて登場したとき、
新しい時代が来たとみんな思ったはずだ」
確かに、一作前のアルバムまで美しい金髪の巻き毛ロングヘアだったボウイは、
Ziggyになったとたん、むしりとったような不揃いの短髪になっていた。
その髪型は実に斬新で不穏な空気さえ醸し出していた。
あのヘアスタイルに比べたら、かつては不良だのアウトローだのと言われたロングヘアが、
なんと牧歌的でのんびりして見えたことだろう。
映画”Easy Rider”ではヒッピーたちが、髪が長いというだけで保守的な南部のおっさんに
銃殺されてしまったりしたのだが、そんな反体制のシンボルであったロングヘアの価値を、
ボウイはもののみごとに駆逐したのだ。
その後も彼はさまざまに変化して時代を乗り越えて来たわけだけれど、
David Bowieという人物自身、彼が創造したキャラクターのひとつなのだろう。
彼の人生という見応えあるドラマを私たちは見ていたのだ。
ガンで数年間も闘病していたことは、その死まで公にされていなかった。
そんなストーリーの終わり方が、みごとにボウイ。
宇宙からやって来た男は、また宇宙に戻って行った。

もう20年くらい前になるか、ロンドンで服のブランドを主宰していた友人のところに、
ある日電話がかかった。出てみると、「こんにちは!デビッド・ボウイです」。
なんと本人が直接電話をかけてきて、服を注文したのだという。
この話は続編があって、ある日また友人のアトリエの電話が鳴り、出てみると
「こんにちは!ミック・ジャガーです」。なんとまた直接本人から電話。
イギリスのロックスターは身軽だね。
2人のロックスターから注文を受けた友人はハッピーだったかというと、
「勘弁してって感じだったよ。2人とも選んだのが同じスーツ!
しばらくは2人が同じ服で鉢合わせしないかと心配でたまらなかったよ!」
とのことでした。

ハッピー&ヘルシー・ニュー・イヤー

taru
迎春

新しい年が明けました。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。

元日は毎年、明治神宮に初詣に出かけます。
まだ元号が昭和だった頃からの習慣です。
毎年、初詣の人数が増えている気がするのですが、
今年は特に多かったように思います。
そして、海外の方たちの参拝もすごく多くなりました。
絵馬を見ても英語をはじめ、多言語で書かれたものが増えています。
その中の英語で書かれた一枚の、
「家族がハッピーで健康に暮らせますように」
というフレーズが目に入って来てしまったのですが、
人が願うことは万国共通であるのに、なぜ争いが起きてしまうんだろうと、
正月早々青臭いことを思ってしまいました。
20〜30年前から見れば、世界はどんどん狭くなっています。
面積ということでなく、友人との間に共通の友達がいたと発覚したときに、
「世間は狭いね」という、あの感覚です。
国と国の行き来も昔から比べれば経済面も含めてずっと自由になったし、
インターネットの発達で地球の裏側の人と知り合ったり
親交を深めたりすることができるようになりました。
今、日本を訪れる観光客は昨年で過去最高の1,796万人で、10年前の約3.4倍。
今日、原宿や新宿のショッピングエリアを回ったら、
聞こえてくるのはほとんど外国語でした。
海外からの人たちは、すでに日本で人気だったり評判になっているもの以外に、
ほとんどの日本人が興味を持っていなかったようなものまで
そこにおもしろさを発見・発掘します。
自国民にとってはあたりまえ過ぎて見逃していたモノの魅力に
今さらながら気づいて、足元を見直す。
そういうことが、国の活性化につながっていくのだと思います。
そして、今朝はうちの近所の駅に降り立った2人の青年が(日本人)
各々首からヴィンテージなフィルムカメラを下げていました。
1人がもう1人に、これから訪れる神社の説明をしています。
確かに私の住む所は、町なかに貝塚などがいくつも残り、
新築工事の際に地面を掘ると遺跡が出てしまって、
工事が中断して困るようなところです。
古い歴史はあるのですが、歴史以外にはほぼ何もない街です。
にもかかわらず、最近は近場の町探検隊のような人がよそから来て、
よくスマホの地図とでかいカメラを手に歩いていたりします。
中にはおばさんトリオもいて「多摩川の河原にはどう行けばいいの?」
と聞かれたこともありました。
(うちの街は小さいので、住人ならまず、河原への道を知らない人はいません)
そしてこんな小さな何もない町でも、
路行く人の外国人率が前年比5割アップ(当社比)という気がします。
これもまた、日本の縮図といいますか、
国は海外からの観光客が増え、市町村は近隣からの観光客が増え、
大なり小なり、それぞれの文化が行き交う。
今年はそういうことがもっと増えて行くはずで、
その中で自分がどういう役目を担っていけるか、
一人ひとりが軽〜く考えてみたら、
それも活性化に弾みがつくのでは?と思いました。
2016年が、より「ハッピーで健康的」でありますように。

冬空の下のオレンジ

ちょっと前に紅葉がはじまったと思っていたら、
気づけばもうほとんどの葉が落ちています。
今年は何十年に一度くらいの暖冬になるという予報です。

ともあれ、寒い・暑いといった季節に合わせて
それなりのオシャレを考えるのがまた楽しい。

今年はレディスに関して言えば、バイカラー(2色使い)のコートがトレンドです。
ウエストあたりで色や素材が切り替わっていたり、
表地と裏地が色違いになっていたり、
フードの内側の色だけ違っていたり。
色でアクセントを効かせたものを多く見かけます。
何年か前から、ワンピースやトップス、バッグなどは、
バイカラー使いのものが人気がありましたが、
今年は一気にコートまで出揃った感じがあります。

では、メンズでのバイカラーアイテムは?
カーディガンなどがおすすめ。
ダークグレーと生成り、グレーと赤茶など、
発色の異なる2色で、胸のあたりから切り替えたものや、
ブラウンやグレーなどのダークな色目の身頃に、
襟ぐりや前たての縁のみオレンジや黄緑と言った、
明るい色目のラインが走っているものなど、
今年のニット類はダーク×ヴィヴィッドの色使いが、
アクセントになったものが目立ちます。
カーディやセーターは無地にしておきたい場合、
マフラーや手袋、靴下といった小物類でバイカラーを楽しんでみては?
ニット帽の折り返しの色が違っていたり、
靴下のくるぶしあたりから違う色になっていたりして、
それもグレーとピンクや黒とオレンジなど、ポップな色使いが今年の特徴です。
今年は革手袋も、グリーンやオレンジ、赤といった、
明るい色目のものを多く見かけますが、
中には手の平側と甲の色を違えたバイカラー手袋もあり、
小物で遊べるのが今年の冬スタイルの傾向です。

ドレスシャツにタイ、ジャケット、コートはきっちりと決めて、
マフラーをはじめとした小物でイタリア男のような洒落っ気を見せる。
そんなこんなで、はじまったばかりの冬のスタイルプランを立ててみてください。
どんより曇り空の朝の出勤でも、ダークな手袋にチラッと効いた、
オレンジやグリーンがゲンキをくれるかも。

ハロウィーンの夜に

さて、ハロウイーンの当日です。
渋谷なんて、この週末は怖くてとても近づけません。
渋谷・新宿あたりの盛り場から私鉄で20分ほどのこの町でも、
昨日今日はとんがり帽子やゾンビ衣裳に身を包んだお調子者を見かけました。
コンビニの店員さんでさえ、魔女ルックなんですから、
いやはや、ハロウイーンがここまで日本を席巻するなんて、
10年前は誰が予想したでしょう。
一説によると、市場的に今やハロウイーンはバレンタインを抜いたとか。
特定や不特定多数の人に愛をお届けするより、
ゾンビや魔女やその他もろもろの仮装に見をやつしたほうが、
楽しいというわけなのでしょう。
ラブよりコスプレ。
贈り物をするより、よりアクティブなイベントに心惹かれる。
現代日本の文化のココロを物語っているように思います。

では贈り物の気持ちが衰退しているかといえば、決してそうではなく。
贈り物がスペシャルなものではなく、
より日常的化しているということなのでしょう。
プチプラという言葉がありますが、プチプライスつまり少額のプレゼントを
とくに誕生日や記念日でもないのに、
きれいにラッピングして親しい友だちに贈ったり、
あるいはちょっと高価なものを購入するときは、
「今まで頑張った自分へのご褒美!」として納得する。
ギフトが、特別感をまといつつ、贈り合う機会は日常化している。
お中元やお歳暮のように贈り合うことにときめきはないけれど、
ランチで会った友人に「アナタが好きそうなもの見つけたから」と
小さなものを贈る。なんでもない日に贈ること、そこにはときめきがある。
バレンタインが形骸化しているのも、そのあたりにワケがありそう。

最近、よく行くショッピングセンターに、
とあるボディイケア専門店がオープンしました。
固形やリキッドのソープ類から、バス用品、パフュームなどの、
ボディケア用品を扱う海外ブランドの直営店です。
とくにギフトを意識した商品展開で、
店内のディスプレイもひとつの商品を手にとってもらうというより、
美しくラッピングされたセット販売のアイテムをメインに打ち出しています。
プライス設定もたとえばハンドクリームなら1000円くらいからと、
決して高価過ぎないところがポイント。
今、20代の女の子への贈り物なら、ここの小物を選んでおけばまちがいない、
といわれる2〜3のショップのうちのひとつだそうです。

そして驚くことに、このブランドの「ジェントルマンシリーズ」は
若いメンズにも大人気で、ギフトに喜ばれているそう。
かつて女の子から男の子への贈り物で、
メンズ用香水くらいはあったかも知れませんが、
ハンドソープやボディシャンプー、ハンドクリームのセットを贈るとか、
あまりポピュラーなことではなかったような。
オシャレを意識するという行為が、これだけ普遍化している昨今、
ソープやハンドクリームも特別感漂うもので、生活環境をオシャレしたい、
そう思う男子が増えても当然のことかもしれません。
ともあれ、レモンの香りのグリセリン石けんをもらって喜ぶ男子。
やはり奥面なくゾンビで電車に乗る人たちの価値観は、
違うと感心したものです。

秋のスタイリングは気合を入れて

風の中に金木犀の香りが漂いはじめると、
陽は急速に短くなり、
木々の葉は急速に色づきはじめます。
空の色はより青く、雲は綿毛やうろこのようにふわふわとしています。
開放的で未来に向いているような夏とちがって、
秋はどうも昔が懐かしくなる。
そんなセンチメンタルな季節は、
読書や美術がキーワードでもあることだし、
ちょっと知的でその奥から色気が滲むような
スタイリングを目指したいもの。

朝夕は肌寒いくらいの陽気になる今日このごろ。
そろそろコートが恋しくなる季節でもあります。
スーツに合うコートといえば、ステンカラーかチェスターコートなどだと思いますが、
普通になりがちなので、ちょっとオシャレっぽいスタイリングをしたいところです。
グレーのスーツが多い場合は、あえてグレーのコートをチョイス。
スーツとコートのグレーのトーンも合わせます。
中に着るVネックカーディガンやベストも同じトーンに。
もう、豪華グレー祭です。
ここで中にくる、白いシャツやブルーのシャツが映えること。
スカーフやマフラーはシルク素材やカシミアを選び、
ワイン系やブルー系の柄物を持ってくる。
知的でゴージャスな雰囲気ができあがりそうです。

この秋のスタイリング、二つ目のおすすめは、
これまでより、少しパンツ丈を短くしてみること。
近頃のジャケットは細身で丈も短めがトレンド。
パンツ丈も、当社比でこれまでより4センチほど上げてみると、
それだけで全体の雰囲気が変わるので、新しい世界に踏み出せそうです。
華奢なスリッポンなどを合わせてみましょう。

三つ目のおすすめは、首元のオシャレに挑戦です。
ポップな柄のスカーフをアスコットタイ風に結んでみる。
少し大き目な水玉や、大胆な花柄ぽいペーズリー、
70年代風のポップなテキスタイルのもの、
あるいは、リバティプリントのもの、などなど。
スカーフはシルクで、小さめのもの、
バンダナより少し大きいサイズのものが扱いやすいはずです。
キマジメなスーツにシャツ、そこに一点、個性を強調するスパイスを加えて。
秋冬のファッションに知性と色気の気合を入れていきましょう。

秋に向けてビタミンを取り入れよう。

インド人もびっくりな猛暑がひと段落したと思ったら、
いきなり秋の陽気にさまがわりした列島です。
みなさまいかがお過ごしでしょうか?
ひんやりする外気に、薄手ジャケットやカーディガンの一枚も羽織りたくなろうというもの。
一気に秋冬のファッションが気になっているのではないでしょうか?
シャツに合わせるジャケットももちろんですが、
カーディガンもまた、秋モードのファーストアイテムです。
デニムシャツには細かい横ストライプのハイゲージカーディガンで若々しく、
白いシャツにはあえて、黒無地カーディガンでモノトーンの個性を強調、
そしてロンドンストライプのシャツには、
チャコールグレイの手編みテイストのV襟カーディガンなどを合わせると、
大人のオトコの上品な色気が漂うような気がします。
ちょっと遊んでみたい週末には、ストライプシャツの上に、
赤やワイン、グリーンなどのカーディガンを合わせてみると、
気分も変わって運気もアップしそう。
赤やオレンジ、グリーンなどのカラフルな色は、
ビタミンカラーとも呼ばれますが、
その名の通り、明るい色を身につけるとなんだか華やいで
元気になれるような気がします。

近頃ロンドンやパリで発表された2016spring/summerのメンズスタイルを見ると、
どこかに1点以上、フェミニンなアイテムを持って来ているメゾンが目立ちます。
グッチやバーバリーはレースのシャツさえ出しています。
スケスケのレースのシャツにネクタイ、結構普通なビジネスラインぽいパンツに、
ビジネスバッグというバーバリーのコレクションは
来るべき近未来のビジネスシーンを予言しているのか、それとも余興?
ほかにも、コレクションごとに、「これ着るって、罰ゲームだよね」としか思えない
独創的で斬新なスタイルが世間に紹介されます。
でもコレクションとそのメゾンのショップ店員、ある種のパーティーやクラブ以外に、
それらの服を着ている人に出会ったことはありません。
でも、そういう独創的で斬新な服のフォルムや概念が、
少しずつ少しずつ蓄積して、ちりも積もれば山となって、
大衆のファッションをちょっとずつちょっとずつ
変化させて行っていると感じます。
ふと見たら、隣の新卒くんがレースのシャツを着ている日がくるかも知れません。
そんな衝撃をさりげなく受け止められるように、
たまにはビタミンカラーのシャツなんかを着て、
栄養を摂って体力をつけておきましょう。

夏の冒険王を目指す!

tachigarapan
連日猛暑が続いています。
7月からこの暑さでは、夏本番の8月や9月はどうなってしまうのか?
いささか体力に不安を感じる今日このごろです。
強い日差しに負けない、ピンクやイエロー、グリーンやオレンジなどの
鮮やかで発色のいい、タフそうな色を身につけて気力をアップさせています。
夏の花はひまわりを代表に、派手で大胆なものが多いし、
日頃はモノトーンで落ち着いたスタイルが好きな人でも、
少し冒険するには最適な季節です。
夏は心の鍵を甘くするわ、ご用心、と往年のアイドルは歌っていましたが、
コーディネートに関してはオープンマインドでトライしてみましょう。
いつものスタイルに冒険的スパイスを効かせて。

ピッティ・ウォモといえば、イタリア・フィレンツェで開催される
世界的に名高いメンズファッションの展示会です。
会期中は世界中からバイヤーやプレスなどのファッション関係者が訪れます。
パリコレ開催中のパリのごとく、
世界の洒落者たちが海を越えてやってくるので、
会場近辺はさながら場外乱闘ならぬ場外ランウェイ。
ちょいワル風オヤジから、年季の入った伊達男、
街のファッションリーダー的お兄さんから、
ハイエンドで高級志向なお兄さん。
それはもう世界中の街角からファッション命の洒落者が集まるのですから、
もうまばゆい、まばゆい。
頭からつま先までは完璧なシャツ&スーツなのに、
足元が裸足でエスパドリーユ(布製のカジュアルシューズ)だったり、
「そこ、そうくる?」の連続でもう油断もすきもありません。
コーディネートのヒントやアイデアの宝庫であることはもちろん、
ファッションならではのスリルと躍動感がみなぎっているのです。
ファッション系のニュースなどでそのシーンを目にするたび、
外観こそが雄(おす)本来のパワーの見せ所だったと改めて納得。
自然界ではおしなべて雄が派手で美しくて立派です。
外観の美しさ、すなわち生命力の強さを表すもの。
着飾った男たちは、そんなたくましさと、
そこから醸しだされる雄の色気を振りまいている気がします。
というわけで、この夏は、ちょっと冒険して、派手目な色のボトムや
靴なんかに挑戦してみては?
白無地や細かいストライプなどの控えめなシャツに合わせてこそ、
ガツンとくるボトムや小物が映えます。

写真は、今年6月に開催されたピッティ・ウォモでのスナップ。
土井縫工所を運営するD0-1 SEWING INC.のレディースブランド、
『e.lab』のスタッフが会場で撮影したものです。
上/おじさま2人の細パンがたまりません。
ホリゾンタル的なワイドカラーのシャツに、
暑い6月のフィレンツェでしっかりタイを結んでいるのがダンディーの心意気。
左の舘ひろし風おじさま、チェーンがやんちゃです。
右の、サッカーチームのオーナー風おじさま、輝く白パンの裾から生足へ、
さらにキルトタッセル付きコンビの靴へ、という流れがお見事!
下/シャツ、ジャケット、チーフ、ときて、このボトム。
上半身しか見えなかったら、下にこの破壊的柄パンがくると誰が想像できましょう。
これぞ「夏休みは冒険だ!」ルックの決定打。ぜひ取り入れてみて。
左のちょっとおつかれ気味なおねーさまも、
パンツの柄の素晴らしさではカレシ(なのか?)に負けていませんね。
赤いジャケットを合わせて、ボトムの派手さとバランスをとっています。

このような興味深い写真がまだまだほかにも。
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まさに衣食住な人々。

sapeurs_cover梅雨の時季独特の蒸し暑い日々が続いています。
空気もジメっ、モアっとしていて、ちょっと動くと汗がじわあ。
こんな季節はおしゃれも大変。
とはいえ、どんな季節であろうと、大変なら大変なほど、
楽しさもひとしお、というのがおしゃれというクセモノの魔力。
一度これに搦め捕られたら、抜け出すのは容易なことではありません。
なんか、ある日突然、憑き物が落ちたように、
デコレーションケーキが食パンになることもあるやも知れません。
でも、そこは一筋縄では行かない食パンなのだと思う。
やれバターはこれで、小麦はこれで、天然酵母で長時間熟成で、とか。
一度デコレーションケーキになった者は、
そう簡単にただの食パンにはなれない、そんな気がします。
なぜなら、服をあれこれ考えることは、
料理をあれこれ考えるのと同じくらい、
日々の暮らしに喜びや弾みをもたらしてくれるものだから。

そんな「着る喜び」がマックスになっているのが、
アフリカ、コンゴ共和国の洒落者集団、サプールの人たち。
サプールとはサップ(SAPE)を楽しむ人たちの意味で、
そのSAPEとはフランス語の”Société des ambianceurs et des personnes élégantes”
(日本語で「おしゃれで優雅な紳士協会」)の頭文字をとったもの。
かつてコンゴがフランス領だった頃、1920年代にパリ帰りの若者たちが
フレンチ仕立てのスーツに身を包んで帰国し、
人々の憧れの的になったのだそうです。
そこから、サップというファッションスタイルが生まれたとか。
’60年代以降、一度すたれていたものの、
70年代中期にリバイバルし、またしても今、
コンゴでは週末になると高級ブランドや、
仕立てのいいビスポークスーツに身を包んだ、
洒落男たちが街の通りを練り歩くのだとか。
何をするでもなく、ただオシャレをしてステップを踏みながら踊り歩く。
それを見て人々は「カッコいい!」と憧れて賛美して、
サプールたちはおのずと有名人と化していきます。
つまりちょっとしたスターやアイドルのような存在なのですね。
彼らが身を包むスーツは、月給の3倍も4倍もするのだそうです。
決してお金持ちではない彼らは、ウィークデイに汗水たらして働き、
三ヶ月分の給料を注ぎ込んでスーツを買い、
週末には着飾って街を踊り歩く。
それを眺めて賞賛する街の人々も、
多くの場合決して裕福ではないので、
(一説には一日200円未満で暮らしている人がほとんどという話も)
サプールを見て励まされているのだとか。
つまり、ピカピカのブランドスーツという衣裳に
身を包んで歌って踊るアイドルのショーか、
あるいはきらびやかな人間お神輿か。
どちらにしても、サプール自身にとっても、
それがエネルギーチャージになるのだろうし、
周りも元気をもらう。
平和でいいなあと思います、いや、嫌味でなく、マジです。
しかも、このサプールは、戦わないというのが信条のひとつ。
戦うのは野蛮なこと。エレガントな男は、戦わず優雅なおしゃれを楽しむ。
優雅な外見を整えることで、優雅な中身が形成されていく。
ファッションは生き方そのものと思うのですが、
まさにそれを実践しているのがサプールの人たちだと思います。
私も社会人になりたてで原宿のアパレルメーカーにいた若い頃、
月給2ヶ月分のブーツを買ったことがあります。
新卒社員の月給が今、手取りで16〜17万として、
そんな小娘が30万くらいのブーツを買ったと思ってください。
なんという大馬鹿者と、今の私なら思うかも知れません。笑
しかも2〜3足揃えましたね、あの頃。
イタリーのタニノ・クリスチーと
オットリーノ・ボッシというブランドのものでした。
服は、自社や別ブランドのものが社割で買えるので、
もっぱら靴に注ぎ込んでいました。靴マニアなので。
先日、実家の物置を片付けていたら、
出てきたのです、その月給2ヶ月分のブーツが2本。
数十年を経て、革は硬くなっていましたが、
美しいラインは昔のまま。
懐かしさで胸がいっぱいになりました。
こういう馬鹿の果てに、何をつかんだのかいまだ不明ですが、
後悔はしていないのです。
そんなドタバタも含めてファッションは生き方なのでしょうから。
遠いコンゴのサプールの人々に思いを馳せ、
ものすごく共感しています。
日本でも四畳半のボロアパートの一室でカップ麺すすりつつ、
ブランド服のコレクションが満杯になっているワカモノとかいますよね。
ものすごくエールを送りたいです。
ファッションも命懸けのほうがおもしろい。

*画像は、サプールの写真集「サプール  ザ ジェントルメン オブ バコンゴ」。
イタリア人カメラマンが現地で撮ったもの。
高温多湿の地で三つ揃いのスーツを着込む洒落者たちの粋な姿が堪能できます。
(彼らのいる地域は年間を通じて、最高気温31℃、最低気温18℃くらい)
舗装されていない砂利道や干した洗濯物背景の裏庭など、
ダンディーなサプールと環境のギャップも見もの。
彼らを憧憬と驚き、とまどいの眼差しで見つめる子どもたちも、
画面後方や周囲にひんぱんに登場して、それも楽しい。
それにしても、濃淡のオレンジを使い分けたコーディネートや、
ブラウンのスーツにレモンイエローのネクタイ、
サックスのシャツにサーモンピンクのタイと同色のポケットチーフを、
花のように挿していたりなど、
太陽の強い日差しにも負けないその色彩感覚にうっとり。
ぜひ、この夏のコーディネートの参考に。
ちなみにポール・スミスが推薦の文章を書いています。

“SAPEURS  THE GENTLEMEN OF BACONGO”  著者 ダニエーレ・タマーニ
青幻舎 ¥2,300(+税)