自分流のプチ贅沢で気分UP!

石けん_0531

五月だというのに、真夏のような暑さが続いています。
かと思えば、各地で火山が噴火したり警戒レベルがあがったり。
震度5や4の地震が頻発しています。
暑さに反比例していろいろな意味で震える列島です。
みなさま、いかがお過ごしでしょうか?

街を歩いていて最近思うのは、いわゆる「サラリーマンスタイル」な男性が減ったこと。
かつて「どぶねずみルック」などと呼ばれた、ヨレヨレの灰色スーツ。
サザエさんのマンガに出て来る酔っ払いが持っているような、
くたびれた革のビジネスバッグ。
そんな格好の人を、最近まず見ません。
思えば、そういう人たちはもや定年で姿を消し、
今いるのはその方々の下の世代ですから、
当然の成り行きかも知れません。
ビジネスシーンでもどんどんオシャレになっているのですから、
休日の彼らがどれだけオシャレか。
暑くなるに従って、シャツやTシャツの下は、
ハーフパンツというスタイルが増えてきました。
近頃目立つのは、ベスト人口の増加です。
白い麻のシャツの上に黒いシルクのベストや、
ロンドンストライプのシャツの上に藍色の麻のベスト、などと言ったシックな人から、
リバティのような花柄シャツの上にストライプのベスト、
レモンイエローやスカイブルーのような麻のシャツの上に、
クラシカルなペイズリー柄のベスト、などなど、
チャレンジ精神を発揮している人も。
シャツやTシャツにパンツといったシンプルな初夏から夏のコーディネートに、
1点、スタイルを加えたい。
そんな思いが見て取れて、風景的にも楽しい眺めです。
上記に加え、さらにコットンや麻のスカーフを加えている人も多く、
これは汗取りの効果もあっておすすめです。

世の中、自分流のオシャレを楽しむ人がすごく増えていると感じる昨今。
それは服装だけにとどまりません。
先日、立ち寄ったショッピングセンターで、
あるショップの石けん売り場がものすごいことになっていました。
特定のブランドではなく、さまざまなブランドの石けんが集められた、
いわゆる石けんのセレクトショップ状態です。
並んでいるアイテム数もさることながら、
種類の豊富さに驚き、世の中はいつの間に、
これほどの石けんを必要としていたのかとまた驚き。

私は昔からクラブツリー&イヴリンという英国製の高級石けんが好きだったのですが、
(ちなみにこちらはクラシカルなパッケージデザインがすごく美しい。
オシャレ石けんといえばシンプルなデザインのものが主流だった1980年代から、
花や果実、妖精とか魚介類とかが古典的な絵で描かれた箱に、私はイチコロでした)
でも当時クラブツリーはとくに注目もされず、
百貨店などで細々と扱われていたという感じでした。
日本での高級石けんブームに火が付いたのは、
2000年代はじめ、フランスのロクシタンからではないでしょうか?
シアバターという植物性脂肪を使ったハンドクリームが話題となり、
シアバター配合の石けんも大人気になりました。
続いてLushという英国製の手作り石けんが登場。
それまでの石けんの概念を破る、
カラフルなビジュアルがとくに若い女子のハートを直撃。
さらに、ハーブ入りでグレード感のあるフランス製のマルセイユ石けんや、
数千年続く伝統製法で作られるシリア製のアレッポの石けんなど、
ここ10年くらいで次々と、海外石けんが日本市場にデビューしました。
そんな下地があっての、近頃の石けんブーム。
手作り自然派石けんからスイーツのように色とりどりで鮮やかな石けん、
香りがいいものから泡立ち抜群のもの。
清潔好きな日本人には、石けんというのは特別なアイテムなのかも知れません。
必要不可欠であるからこそ、少し贅沢するにはちょうどいいアイテムなのかも。
近所のドラッグストアなら3個200円前後で買える石けんですが、
1個2000円のものを購入するプチ贅沢。
家に持ち帰って『石けん入れ』ではなく、
かわいい、あるいはステキな『ソープディッシュ』に入れて、
洗面所に置くときのワクワク感、オシャレなタオルを添えて、
ぐんとスタイルアップした水回りを眺める喜び。
これで明日から、また仕事や勉強、家事をがんばろうと思う、
そんな女子がグンと増えているのだと思います。
1000円の石けんは贅沢かも知れませんが、
1000円でシアワセが買えるなら、それは法外な値段ではないような。
小さいことでも、生活を楽しむ、
自分流の贅沢で気分をあげる、そんな世の中なのでしょう。

*写真は、我が家の洗面所にある石けんたち。
上の左はイタリア、フィレンツェの”Derbe”の石けん。
これは”White Flower and Green Leaves Herb soap”という名の石けんで、
「古代ギリシャで不老の象徴だったセイヨウサンザシの花エキスと、
セイヨウキズタの葉エキスのブレンド」なのだそうです。
くせのないさわやかな香り。
上の右はオーストラリアの”Wavertree&London”というブランドの
「Lavender d’Provence」という石けん。
この会社は自然素材のみを、環境に優しい製法で作る、というのが売り。
やや控えめなラベンダーの香り。
下の大きな箱入りは、やはりオーストラリアの”Apsley and Company”の
Cucinaブランドの石けん。
ローズマリー配合で、我が家の洗面所のハーブの香り、
(苦手な人にとっては青臭い)は、この石けんが発散するもの。
ちなみにこれらの石けんはすべて、
女友達からおみやげなどでいただいたものです。
さすが女子は石けん好きという事実が証明されています。

テーマパーク的書店の楽しみ

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空は青く新緑は艶々と輝いています。
芽吹いたばかりの新芽や、
生まれで間もない葉はみずみずしくて、
見ているだけで心が洗われる気分。
美しい季節がやってきました。
そして、世はゴールデン・ウィーク。
遠出派の方も近場でのんびり派の方も、
さぞやお楽しみのことと思います。

連休直前のある日、東京郊外にできた「コーチャンフォー」という
複合商業施設に行って来ました。
広〜いワンフロアに、書籍、文具雑貨、音楽映像、カフェの4種が入った、
北海道発の巨大商業施設です。
コーチャンフォーの原名は「Corch&Four=四頭立ての馬車」の意味だそうで、
4つの要素で成り立っている施設であることを示しています。

首都圏初進出の店舗は、京王多摩線の若葉台駅と小田急多摩線のはるひ野駅から徒歩圏。
マンションと戸建住宅の街区のあるニュータウンを歩き、
ほかに高い建物のないエリアに忽然と表れる、
限りなくテーマパーク的なビジュアルのその建物を目の当たりにすると、
もはや心がときめきます。
抜群の吸引力に引き込まれるように中へ。
広い!!
あまりの広さにうっとり。
書籍と文具がこれほどの在庫数で揃っている施設は、
東京ではほかにないかも。
たとえば専門的な医学書とか民俗学、思想関連だけでも、
それぞれ横10メートルくらい続いてそうな勢い。
医学書の通路が10メートルって、ある意味、壮大な無駄の10メートルです。
その無駄さ加減こそがテーマパークなのだわと思ってしまいました。
だって、ミッキーやプーさんに興味のない人にとってディズニーランドって何?
でも、興味のある人にとって、とことん尽くしてくれるのがテーマパークの存在意義です。
「最後の本屋が去年つぶれた、もうこの街に本屋は一軒もない!」
「最後の文房具屋は10年前につぶれた、
ボールペンやノートはスーパーやコンビニの文具コーナーしかない!」
という悲劇の街の住人は、
すぐさまここに駆けつけるべきだと思います。

書店の閉店が相次いで、活字離れが指摘されて久しい状況ですが、
でも、最大手通販のアマゾンなどでは、おもしろい現象が生まれています。
リアル書店全盛の頃は、売れる本が限られていたのに、
アマゾンなどでは突出して売れる本の後ろに、細い売上がしっぽのように延々と長く続くそうです。
その恐竜のしっぽ的に長く続く本たちは、数年に1〜2冊しか売れないものもあるかもしれない。
それでも、アマゾンには在庫があるので、それを検索した誰かが注文する。
一般の書店では注文してから1週間から10日かかっていたものが、
翌日には届く。
そのおかげで、それまで陽の目を見なかった本も誰かの手に渡る。
その便利さと在庫の豊富さという黒船に国内の書店は見事やられてしまったんですね。
アマゾンの功罪といえるかもしれませんが、コーチャンフォーのようなお店に来ると、
アマゾンの倉庫がリアルショップになったような興奮を覚えます。
文具や雑貨も同様。
クレール・フォンテーヌというフランスの文具は、
スタイリッシュなノート類で知られていますが、
これまで日本の有名な文房具屋さん、たとえば伊東屋などでも、
入っている種類は限られていました。
それが、これまで国内では見たこともないようなラインアップがズラリ。
何から何まで刺激的なショップ展開です。
モノが溢れて、今や、お仕着せではあきたらない消費者たち。
ていねいな造りのものや、ハンドメイド的なもの、
ほかにはあまりないものを欲しがるご時世です。
”書店テーマパーク”(的希少価値)というコンセプト自体、
やたらとあるわけでなく、なんとも魅力的です。
ところで、ショッピングセンターや百貨店に入っている大きな本屋さんは、
いつでもお客さんでいっぱい。
そのうち実際に買う人は半数以下だとしても、
レジだっていつもたいがい行列で、夜のコンビ二のレジくらい混んでいます。
それで本や雑誌が売れないって。不思議ですね。
基本、本屋さんはなんとなく行ってみたくなる、
テーマパークでありお祭り広場なのかもしれません。

サクラメモリー2015

多摩川サクラ_20150331
今年も桜前線が北上する季節になりました。
東京はすでに、ところによっては満開です。
さっそく近所のお花見名所に散歩に行ってみました。
すると、平日の午後にもかかわらず川岸には大勢の人たち。
夜桜のお花見とはちがって、みんな静かに花を味わっています。
スマホやデジカメで花を撮っている人も多いのですが、
今年はなんと、自撮り機を駆使して桜とのツーショットを楽しんでいる女性もいました。
ともあれ、桜は毎年、同じように咲いてくれる。
だからこそ、これまでの桜の頃のことを思い出してしまいます。
あの夜桜、あのお花見、あの川岸、あの並木道、あの広場の桜。
目の前の桜に重なって、記憶の桜が蘇ります。
過ぎた日々の心情もふっと蘇ります。

さまざまのこと思い出す桜かな。

芭蕉の句です。

桜を見ている人たちは、たとえ友達や家族連れでも、
会話しながらも目は桜に釘付け。
満開の桜の持つ不思議なチカラで、心は時空を行ったり来たり。

それぞれのこと思いける桜かな。

と、いう気がします。
数年後、今年のサクラは、どんな記憶に変わっているのでしょうか?

そんな春らんまん。
重いコートや上着を脱いで、薄手のジャケットやシャツに移行する時季です。
身も心もウキウキしてくるこの季節。
薄手のデニムのシャツに、ちょっと派手目なタイをしてみませんか。
太い横ストライプ柄やカラフルなペーズリーなどのやや幅広のタイ。
カジュアル感と素朴感のあるデニムシャツですが、
ファンキーかつスタイリッシュなネクタイを合わせると
ぐーっと洒落っ気が浮上してきます。
ボトムは淡い色調のチノやコットンで、
2015春夏スタイルをスタートさせましょう!

王子のイノベーション

街を歩いていると、すっかり梅の花が咲き始めています。
真冬とは少し違う、キラキラした春の日差しに心も浮き立ちます。
そんな折、イギリスのウィリアム王子が初来日しました。
キャサリン妃は現在第2子を妊娠中なので、今回は王子のソロ活動です。
イギリスは現在、国をあげて「Innovation is GREAT」を絶賛キャンペーン中で、
来日の目的は王子によるトップセールスです。
このキャンペーンは、マイコンで操作できる車椅子
(このデザインが近未来的フォルムで素晴らしい)はじめ、
ロボットからビッグデータの活用まで、幅広い分野に渡るイギリスのテクノロジーを、
世界中に紹介するというキャンペーンなのです。
で、日本(を含め訪れる国)には、
『これからイギリスといっしょに、いろいろ明るい未来を
築いていこうではありませんか!』
と働きかけているところで、
その象徴となるのが王子の役割のようです。

ご存知のようにイギリスは、伝統を重んじる国であると同時に、
ビートルズやストーンズ、ミニスカートやパンクを生んだ国。
innovationはお家芸ともいえます。
ちなみにinnovationを直訳すると、
新考案、改変、新機軸、革新、といったところ。
イギリスの主張としては、「新しい考案」こそが、
どんな不景気や経済危機にあっても、結局は利益を生み出すことだと。
不景気になると企業は保守的になりがちで、
新しい革新的なものが生まれにくくなりますが、
新機軸への設備投資やオープンマインドを失えば、
結局は首を絞めることになる、ということのようです。
そんな王子さま、来日時はラペル細めのスーツにサックスブルーのシャツ、
地模様のある赤系のタイ、というコーディネート。
コートは衿が大きめで、Wのチェスターフィールドです。
伝統のスタイルにして王道のアイテム。
やっぱりチェスターコートは男っぷりがあがると思います。
ロンドンストライプやリバティプリントのシャツに、
仕立てのいいチェスターコート。
これだけで普段の3倍スマートに仕上がりそうです。
休日はネック周りにコットンか麻の大判ストールを合わせ、
(冬物のウールやカシミアのストールでないところがポイント。
さすがに春よこい、な季節感も少し加えたいところ。
そして、花柄やエスニック柄などにトライしてみるのも)
足元をサイドゴアブーツや、
あえて白系スニーカーにするのも新鮮です。
伝統と革新のミックスマッチで、
スタイリングしてみてはいかがでしょうか?

ハッピー・ショッピング・イヤー!

jingu20140102

harajuku_20140102

あけましておめでとうございます。
2015年の幕開け、うちの近所ではなんと初雪でした。
雪の多い土地に暮らしている方々には慣れっこの風景でしょうが、
東京の片隅では元旦の雪景色が珍しいのです。
粉雪が吹雪く中を近所のお寺にお年始に向かいながら、
「御降(おさがり)」という単語が脳裏に浮かんでいました。
元旦から三が日にかけて降る雨や雪のことをさす季語です。
おめでたい日に天から降りてくるので、こう呼ぶのだとか。
あ〜あ、元旦そうそう雪なんて、今年はツイてないのかな、と思うのではなく、
雨や雪は神のおぼしめしと、とらえる。
日本人て基本アッパーな民族なのかも。
いいですねえ。

そんなおめでたい幕開けのお正月。
今年はいつにも増して初売りや福袋のニュースが報じられました。
主要百貨店の初売りの売り上げは前年比3〜10%増だったそうです。
とくに福袋は海外からの観光客にも大人気で、
それを目当てに来日したり、
国内のほかの観光地から初売り目当てに移動してくる人も多いとか。
何が入っているのかわからない福袋は、
とくに海外の人にとって買いづらいもののはずなのに、
「Made in Japan」ブランドへの信頼性はそれほど強いのですね。
たとえ海外ブランド商品や海外コスメの詰め合わせの福袋だとしても、
日本国内でセレクトされたものなら、
確かなものやそれなりの高級品が入っているはずと信頼されている。
このことは、やはりこれまで私たちの先人や同輩が、
丁寧なものづくりや商売をしてきたたまものなのだと、
改めて思いました。
もう何十年も前のこと、ロンドンで知り合ったイギリス人の女の子が
「日本人の女の子が持っているものって、なんでそんなにかわいいの?」
と言っていたことを思い出します。
こちらとしてはロンドンのファッションや雑貨に惹かれて渡英しているのに、
あちらはMade In Japanに惹かれてやまない。
確かに、日本製のものは洋服であれば縫製もしっかりしていて、
小物や雑貨も丁寧に作られていました。
その技術に加えて、今やその個性的なデザイン性も世界の購買欲をそそっています。
観光立国をめざす日本としては、
もちろん観光地の整備や環境づくりも必須だけれど、
ショッピング王国ぶりを充実させていったほうがよいのでは?と思います。
昨年、従来は課税されていた消耗品(食品類、飲料類、薬品類、化粧品類その他)
を含めたすべての品目が新しく免税対象となりました。
海外からの観光客の方々にとっては、買い物がしやすい状態。
これに弾みをつけて、あらゆる日本製アイテムが
これまで以上に海外からのお客さまに注目されていくと思います。

世界で、観光アイテムおよびショッピングが充実した観光立国といえば、
欧米ならアメリカやフランス、イタリア、英国があって、
最近は北欧も若い人に人気です。
でも、やっぱり日本のファッションや小物類は、
これらの国々の産物と比べても独特。
もちろん、気候風土や住環境、食生活、風俗習慣が欧米とは異なるのだから、
違うものが生まれるのは当たり前なのです。
ポイントは、これだけ地球規模にバリアフリーな世の中になって、
誰もが気軽に欧米製品を使える昨今、
やっと人々が欧米崇拝の呪縛から「日本流で(も)いいんじゃない?」と気づいたこと。
かくして、今、海外ブランドとライセンス契約をしている日本の会社の中には、
日本で企画した限定商品しか売れないという冗談のような状況もあるとか。
あるいは、日本限定商品が売れすぎて、
本国から生産中止を申し渡されたケースもあるとか。
ものづくりに長けたこの小さな島国から、
今年も愛すべき商品が続々と生まれますように。
ショッピング観光国ジャパンに期待は膨らみます。

*写真・上は明治神宮。お札やお守り、おみくじなどの神頼み系ショッピング。
下は原宿駅前。新年恒例の初売セール目当てのショッピングで混雑。

励ますファッション

今年ももはやカウントダウンが近づいて来ました。
今、みなさんはどこで、どんな風に大晦日のひとときをお過ごしでしょうか?
この一年も、いろいろなことがありました。
個人的には、自分史年表に書けるようなことが立て続けに起こった年でした。
今、振り返って見ても、よく乗り越えられたと思えるほど。
それを越えている最中は必死過ぎて、
ハードさが実感できていないわけで、だからこそ日々、淡々と、
なすべきことをしていたという気がします。
一段落した今、その日々を思い出してみると、
「いやいや、もう二度とごめんでしょ、あんな毎日」とか思える。
多分、ほとんどの人がそんな経験があるでしょうし、
そして、これが最後ではなく、そんなしんどい日々は人生に何度も巡ってくるはず。
そんなこの春から秋にかけての半年あまり、
私が日々、楽しみにしていたことがあります。
朝起きて、「今日は何を着ようか」という瞬間。
その日の気分でシャツの色や柄、ボトム類、靴下の色や柄を決める。
それが一日のちょっとした原動力になっていたのでした。
ファッションはその人の生き方や生活や考え方を表しています。
と、同時に、まるで分身のように、
自分を励ましてくれたり、奮い立たせてくれたりします。
その逆に、落ち込んだりして空気のようになりたいときは、
服が存在をカバーしてくれたりします。
元気に生きていくには、ご飯も大事だけれど、
ファッションもすこぶる大切。
今年も、このコラムにおつきあいいただいて、
どうもありがとうございました。
来年も、ファッションの楽しさと魅力を、
みなさんとシェアしていきたいと思います。
では、新しい年が、みなさんにとって
素晴らしい一年だったと年表に書けるようになりますよう。
来年もどうぞよろしくお願いいたします。

とりあえず平和な国の赤セーター

気づけば今年もあとひと月ですね。
毎年のように、時が経つのが加速して行っているような気がします。
本当に今年はあっという間に経ってしまったというのが正直なところ。
年が明ければまたひとつ年齢を重ねるわけですが、
体の老いは自覚できても
心の老いはなかなか自覚できなかったりします。
とくに、最近の日本人は外見も中身も、
昔の日本人の七掛けに相当するという説があります。
それで行けば、今の50歳は昔の35歳程度?
上が詰まっている現代。
なかなかじーさんばーさんになれないのが実情ですね。
そういえば、先日、高倉健さんの追悼で
テレビで「幸せの黄色いハンカチ」を放映していました。
用事をしながらキッチンの小さいテレビで見るともなく見ていたら、
無軌道でチャラい若者役の武田鉄矢が、
旅先の北海道でナンパしていました。
それが中年のおばさん二人に「車で送るから乗ってかない?」
と声をかけているのです。
しかもことわられている。
なんで若いおにーちゃんがおばさんを?熟女ずきな設定?
とよくよく画面を見てみたら、若い女の子二人なのでした。
でも、そのヘアスタイルもファッションも、
今なら50〜60代以上の女の人しか、してなさそうな雰囲気。
これだけ、今昔には差があるのかと今さらながら驚きました。
これだけ人が長生きして、
今現在、市街戦が起こっているわけではないという意味で、
とりあえず平和なこの国では、
生きるか死ぬかということも自分で選ぶことができるし、
老いるか若いままでいるかということも選択できる。
どっからどう見ても20代後半にしか見えない50歳の美魔女もいれば、
文章だけ読んだら20代の青年としか思えない瑞々しい感性を保った、
85歳の老人もいる。
とりあえず、自分で居心地のいいスタイルをすることが一番だから、
それが実年齢なのだと思えばいいのかと思います。
と、紺色のシャツに真っ赤なアランセーターを着て、
赤系のタータンのズボンを履いて、
コンビニでメロンアイスを買っていたおじさんを見て、
しみじみ思いました。
老人よ、アイスを抱け!

カフェのようなおうち、おうちのようなカフェ

金木犀の香りも終わり、めっきり肌寒くなってきました。
そろそろ、厚手のコートが恋しい季節です。
今年は細身のダブルのチェスターフィールドのような、
比較的フォーマルっぽいコートが新鮮な気がします。
細身で丈を心持ち短めに仕立てたパンツ、華奢なつま先の靴を合わせて。
ここに欲しいのが、ウールやカシミアであればフルーツカラーのマフラー。
レモンイエローやボルドー色、ブルーグリーンなどの、
甘酸っぱい香りがしそうな色合いのマフラーがいいですね。
シルクやそれらしい素材であれば、凝ったペイズリーや花柄など、
綿であればエキゾチックなタペストリー調の柄のもの。
それらの大判スカーフを、カッチリしたチェスタートンの
首元にラフに巻いてみてください。
伊達なイタリア男のような色気が醸しだされる……かも知れません。
カバンは思い切ってトートバッグはいかがでしょう?
この際、キャンバスなどの綿というより、革のシンプルなトートバッグがおすすめ。
この冬は洒落っ気たっぷりのマフラーとトートバッグという小物で
ちょっと変化を取り入れても楽しいかも。

ところで、うちの近所に小さなカフェがあります。
なんとハワイアンカフェで、今人気のパンケーキやエッグベネディクト、
パイナップルジュースやマンゴージュースなんかが飲めて、
しかもやたらおいしいのです。
で、ハワイというと想像しがちなお店、
つまりヤシの木やココナッツやハイビスカスのレイなんかの装飾満載で、
派手で陽気で誰にでも「アロ〜ハ!」みたいな、イケイケなスタッフがいて、
という感じではなく、気弱そうで胃腸も弱そうな、
控えめなおじさん店長が黙ってパンケーキを焼いてくれるという、
この人はなぜハワイアン・カフェを営むに至ったのか、
かすかに前職が気になるという、そんなお店なのです。
で、インテリアときたら、今流行りのシャビーシック&レトロなスタイル。
シャビーの本来の意味は、着古した、とか、使い古した、とか、古ぼけている、
などの意味ですが、それにシックがついてシャビーシックになると、
時の経過にさらされたレトロ感漂う雰囲気、というような感じになります。
特徴としては白塗りのペンキが剥げかかっている木の壁(のように見える壁紙)や、
そんなふうに見えるフローリング、レトロな小物使い。
食器やカトラリーもそれ風です。
そして忘れてならないポイントが「手作り風」。
これが今、「流行りのカフェ空間作り」に共通するキーワードです。
ホームセンターで材料買って日曜大工で作りました、
という手作りな感覚が親近感と、リラックス感をもたらし、
オシャレなんだけど落ち着ける、癒される、という心情を抱かせます。
今どきのカフェに求められるのは、「おうちみたいなカフェ」であり、
そのくせ、自分の家では到達できていないおシャレ空間なのです。
一方、本屋さんに並ぶ女性誌で、インテリア系のものを見ると、
盛んに躍っているキャッチコピーがあります。
「カフェみたいなキッチンにリフォーム!」
「お部屋をカフェみたいに大変身!」
しまいには「カフェみたいなおウチに住みたい!」
これはどうしたことでしょう?
カフェとは昔でいえばナポリタンもある喫茶店やスナックですが、
10年や20年前まで「お部屋を喫茶店みたいに大変身!」
というキャッチコピーが盛んに躍るなんてことはありませんでした。
これはやっぱり、おうちみたいなカフェを愛するがゆえの感情でしょう。
「じゃ、うちをカフェにしちゃえばいいいんじゃない?!」みたいな。
かくして、キッチンのシンクやガステーブルの上の棚、
その扉が黒板になっていて英字でメニューが書いてある、なんていう
インテリアが最近は旬のようです。
(黒板専用の塗料があり、それを塗れば木の戸棚でも壁でも黒板にできます)

カフェは個人宅に仮装し、個人宅はカフェに仮装する。
とにかく日本人は仮装が好きな人種なのね。
ハロウィーンの盛り上がりもここに要因があると思う。
この冬は、個性的なマフラーやスカーフで、
伊達男に仮装してみてください。

クールな江戸情緒再発見

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いつの間にか、金木犀が香る季節になりました。
今年はいつにも増して、時間がたつのが早いような気がします。

デザイナーのヨーガン・レールさんが亡くなったと新聞記事に出ていました。
本社がまだ竹芝の海に面した倉庫街にあった頃、
インタビューしたことがあります。
口調も物腰も穏やかなんだけれど、
うちに秘めた熱くて断固とした意志の存在が、
気迫で伝わって来る、という感じの人でした。
「あとでスタッフもいっしょにお昼ごはんに行きましょう」と誘ってくださったり、
(実際は取材の都合で行けなかったのですが)
インタビューに来た人をランチに誘ってくれる有名人はそうそういません。
そんな心配りの人でもありました。
なぜ、ここでヨーガンさんのことを書いているかというと、
今回書こうとしていることに、少し関係があるからです。

先ごろ、羽田空港の国際線拡大にともなって、
ターミナルビルがリニューアルしました。
これまでも羽田の国際線では海外からの観光客に向けて、
江戸の町をモダンに再現したフロアを設けていました。
古き佳き時代の町並みは「江戸小路」と名付けられていて、
空港ビルの現代的な建物の中に瓦屋根や格子戸や芝居小屋が建っているという、
いわばプチお江戸テーマパークのようになっていました。
今回、国際線のフライトが増えた関係で建物も拡大、
さらに「はねだ日本橋」と名づけた太鼓橋ができたり、
盆踊り会場のようなお祭り広場ができたり、
よりいっそう江戸の風情を感じられるようになっています。
なぜ、今になってこうなのか?
なぜ、成田空港のターミナルビルはこうではないのか?
なぜ、迎賓館はフランス風なのか?
日本の玄関口である空港ビルや海外の賓客を迎える施設で、
なぜ、日本古来の特色や伝統のスタイルをテーマに据えて、
前面に押し出さなかったのか?
それは、まだ日本が発展途上だったからなのでしょうね。
海外からくる「ジャパンイズフジヤマゲイシャ」と思っている人々に
「オー、ジャパンイズモダン!」と認識してもらう必要があったのですね。
翻って現在、日本はもう、クール・ジャパンとすら呼ばれる、
アジアのおもしろランドです。
迎賓館も、和風に作り直そうかね、といわれる時代。
谷中や根津、千駄木など下町を散歩するのがブームだったり、
今、私達は日本の再発見を楽しんでいる気がします。
海外に旅行することがこれだけ普通になってくると、
帰国したときまた違った視線で母国を眺められるようになって、
ある意味、外国の人のような視線で日本をおもしろがる人が
昔より増えているせいもあるのではないかと思います。
そして、なぜここでヨーガンレールと結びつくかというと、
ヨーガンさんは70年代のはじめから、
ファッションや生地作りという点で、
日本のよさに目をつけてデザインやものづくりを展開した人だからです。
80年代、ショップに並ぶマネキンが、
アジア人の容貌と体つきをしているのはごくわずかで、
ヨーガンレールの店はその先駆けだった気がします。
日本のファッションのベースは欧米にあったのですから、
マネキンも当然、欧米人の顔と体つきをしていたのですが、
ヨーガンレールはそこに新しい提案を試みたわけです。
今、海外からの観光客は年間1000万人を超えたといわれます。
ひとむかし前まで東京や京都を訪れる観光客は、
欧米人にしてもアジア人にしても、
いわゆる「生活に余裕がありそうな」中年夫婦や、その家族か、
逆にバックパックひとつで地球を歩く派、
といったタイプが多かったのですが、
最近はそれに加えて、とくに余裕もないけれど、
でもトレンドアイテムやファッション大好き!なワカモノが目立ちます。
日本の女子高校生みたいなカッコをしている白人の女の子たちや、
ゴスロリぽいカッコをしているカップル、
あるいは日本製のボールペンやメガネ、時計、
仕立てのいいシャツなどをオトナ買いしている夫婦。
日本の文房具は「使いやすいし壊れない」、
日本の服は「仕立てがよくてオシャレな割に価格がリーズナブル」、
と海外で大人気のようです。
そんな人たちがショップの袋を抱えて渋谷や原宿などの繁華街を
歩く姿をよく見かけます。
彼らにとって現代トーキョーやオーサカはすこぶる刺激的な街なのでしょう。
資源の少ない小国であるわが祖国。
映画祭とF1と観光で世界中から人がやってくるモナコのように、
日本の誇るものづくり技術や下町の江戸情緒で、
世界中を惹きつけて行って欲しいと思います。

*ちなみに現在のヘッダー画像は空港ビルではなく、川崎のショッピングセンター「ラゾーナ川崎」。
施設一階フロアは円形広場になっていてステージがあり、芸能人の新曲発表なども行われます。

おなかとココロのおいしい時間

rarapoto2
weebee
butter万福食堂
808cafe

                     

今日で夏休みも終わり。
こどもたちにとってはなんとも切ない日です。
毎年、この日に宿題をやっつける派だった我が身、
大人になっても見事にその悪癖を引きずっていることに思い当たります。

そんな夏の終わり、ここ数日間、仕事で豊洲界隈を歩き回っていました。
豊洲というのは東京都江東区にある湾岸エリアです。
元々は埋立地で、その後は工業地帯だったところですが、
2000年代に入って、駅周辺は大規模な再開発が行われ、
オフィスビルや商業施設、高層マンションなどが建ち並んでいます。
今後、築地市場の移転やオリンピックの開催に向けて、
ますます賑わって行くと言われている街です。
とにかく駅周辺の建物はみな巨大で、すぐそこに見えるから近いのかと思えば、
いざ歩くと予想外に遠い。
普段、自分の住んでいる街の距離感覚でとらえると、
まるで違うので戸惑います。
この手のニュータウンに行くといつも思うけれど、
街全体が都市計画に沿って作られていて道路も広い。
歩道を歩いていても空間に余裕があるから、
チャリを飛ばした男子中学生とおばあさんの衝突とかもなくて、
安全なんだろうなと思います。
遊びに来るにはおもしろい所ですが、
高層マンションの建ち並ぶ街は、どこに視線を定めたらよいやら。
どこに心を持っていけばよいやら。
私の住む小さな町では道路も狭く、すべて手をのばせば届く距離で展開しています。
近所の古アパートの前庭で顔見知りを待つ猫や、
誰かが垣根の上に置いた、落とし物の犬のぬいぐるみ、
近所にできた歯医者の評価を語り合うおばあさんの一群の横を、
スーツ姿でママチャリに子どもを乗せて走り去る若いパパ。
住民が袖すり合いながら暮らしている環境で育った者にとっては、
高層ビルや巨大なショッピングセンターが建ち並ぶ豊洲駅周辺から、
少し離れたエリアにある、昔ながらの住宅街に移動したらホッとしました。

とはいえ、豊洲駅周辺にはおしゃれなカフェが勢揃い。
天井高が5mもある、ニューヨークあたりのカフェのようなレストランや、
インテリアショップのような内装のパンケーキ屋さんや。
かと思えば駅から少し離れた昔からのエリアには、
これぞ正しい定食屋といえる定食屋さんもありました。
豊洲の隣の東雲には、古い団地の一室を改造したカフェもあり。
そこはイケメンの店長さんがふわとろのフレンチトーストを焼いてくれます。
女子小学生のグループもくるので小学生メニューを用意しているのだそう。
「女子会とか言っちゃって、やんちゃなんですよ」とイケメン店長。
優しい店長を手玉にとるスマホ片手の女子小学生が目に浮かんで、
微笑ましくなりました。
それにしても、平日の朝からカップルやママ友たちがパンケーキを楽しむ
インテリアショップのようなおしゃれなカフェから
昼下がりに肉体労働らしき中年男性が一人で中華定食を食べる、
コスパ最高のうまいうまい定食屋まで。
食をめぐる環境は千差万別です。
共通するのは、味かスペースの何かが秀でておいしくて、
おなかかココロの何かが満たされるということ。
豊洲の街探検、食探訪はとてもとても味わい深いものでした。

*写真は左上から時計回りに。

・「ららぽーと豊洲」の外に広がる風景。湾岸エリアの躍動感ある眺め。
・ニューヨーク風レストラン「WeeBee」。欧米か!ってくらい天井高がハンパない。
・大阪発のパンケーキ屋さん「Butter」。社内にデザイナーさんがいて、
内装をデザインしているとか。テラス席にはブランコチェアがあったり等身大の牛や馬の置物も。
・団地カフェ。「808cafe」。店名は、オープン当初は野菜と惣菜を売る店だったから。看板メニューの『ふわとろフレンチトースト』は絶品。
・中華+和+洋の定食屋さん「万福食堂」。長崎皿うどんと餃子を試食したけれど、「旨い!!!」。近所に欲しい定食屋さん。